第54話 制約の錬金術師③

「話は終わりだ。

今回は見逃すが次は無いと思え」


 管理者は俺たちに向けて手をかざす。


 私は瞬時に転生前のクリスと思われる運転手の魂を魔球で回収する。


 彼は亡くなった時のことをほとんど覚えていなかったが、前世では随分とブラックな会社でバスの運転手をしていたと語っていた。


 そして無表情で立ち尽くしている女生徒の中に入り込み【万能細胞】で侵食する。


 彼女の魂は既に壊れていた。


 快復する見込みはないだろう。


 彼女にもその親御さんにも申し訳が立たない。


 ならば私はその女生徒として生きてゆこう。


「勝手なことを……。

しかしあいつは何者だったのだろうか……」


 管理者のつぶやきは誰もいなくなった白い亜空間にかき消された。







「リン!」


 振り返ると安堵の表情を浮かべた四季が背後でたたずんでいた。


 猶本凛なおもとりん。これが今の私の名前だ。


 壊れた心に残っていたのは猶本凛の記憶と神崎四季に対する友愛の情だけだった。


 そのたった十数年の記憶を辿り、彼女の言葉使いや立ち居振る舞い、そして人間関係などを自身に刻み付ける。


「四季、私たちはなぜ森の中に……」


 植生する草木から判断すると王都近郊の森だろうか。


「あなたがいないから心配したのよリン!

あと姿が見当たらないのは運転手さんだけなのだけど無事かしら……」


 運転手もといクリスの魂なら【ストレージ】内に保管してある。


「たしかに気掛かりではあるけど今は自分たちの安全を確保しないと」


「そ、そうね……」


 私が王都まで誘導すれば簡単だけどそれでは悪目立ちし過ぎてしまう。


 それにスキルの説明などもしておきたいところだが……。


「よし!ステータスを見れたぞ!」


 先ほどから「ステータスオープン」などなど恥ずかしいセリフを連発していた男子生徒が自身のステータスの確認に成功したようだ。


 彼は周りの生徒たちにステータスの確認方法を説明している。


 よく見るとその男子生徒はガブリエル枢機卿こと田辺だった。


 グッジョブだ田辺よ。


「わたしの職業は剣姫だって!かっこかわいいー!

ねえ!リンはどうだった!」


 無邪気な四季を見れてほっこりと自然に笑みが零れる。


 ちなみに私はドット・ピリオッドのステータスをほぼ踏襲している。


猶本凛なおもとりんLv1998//人族//錬金術師

固有スキル

 制約Lv-

 譲渡Lv-

 万能細胞Lv-

職業スキル

 錬成陣Lv10/10

 ゴーレム作成Lv10/10

 具現Lv10/10

 付与Lv10/10 

 崩壊Lv10/10

スキル

 火属性魔法Lv2/2

 水属性魔法Lv6/6

 風属性魔法Lv3/3

 土属性魔法Lv5/5

 氷属性魔法Lv1/1

 雷属性魔法Lv1/1

 回復魔法Lv6/6

 空間魔法Lv3/3

 魔球Lv10/10

 投球術Lv3/3

 打撃術Lv3/3

 投擲術Lv10/10

 棒術Lv10/10

 剣術Lv2/2

 身体強化Lv5/5

 敏捷強化Lv5/5

 隠蔽Lv10/10

 気配遮断Lv4/4

 気配察知Lv4/4

 苦痛耐性Lv10/10

 毒耐性Lv10/10

 睡眠耐性Lv10/10

 暗視Lv-

 全集中Lv-

 生活魔法Lv-

 スキルクリエイションLv-

 ストレージLv-

 視点切替Lv-

 自動照準Lv-

 自動追尾Lv-

 高速移動Lv-

 ウォールハックLv-

 ステルスLv-

 アラートLv-

 浮遊Lv-


【キャンセル】は過去へ戻るための贄にしたので【制約】の効果により消失していた。


「私の職業は錬金術師……いや、制約の錬金術師」


「制約?」


「そう!二つ名よ!」

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