第49話 戦姫②
「あいつもすっかりお婆ちゃんだな。長生きし過ぎだろ」
戦姫を見下ろす田辺と呼ばれた少年からは何の感情も読み取れない。
「この世界の人間はある一定以上のレベルになると寿命が延びるからね。
三百年間ここで戦い続けて、もうLv1000くらい超えてるんじゃないかな。
それに神崎はスキル【健康】を持っていたはずだよ」
(神崎……、【健康】……)
元妻と似ている初老の女性。
神崎と呼ばれた彼女はスキル【健康】を所持している。
果たしてこれは偶然だろうか。
「んなわけあるかー!!!」
こいつらから話を聞くのは後回しでいい。
とにかく奴隷に落とされた俺の娘、
「あ?」「お、お前がなぜここに!?」
二人を二の句を言わせずに空間拡張を施した魔球に封じ収納する。
戦姫こと四季がいきなり消えてしまった二人に驚きつつ俺を視認して不振がっていると、対戦相手が登場したようで視線を正面にもどした。
「なんだあの化け物は!?」
『人間と魔物を合成したキメラのようですね』
「酷いことをする……」
キメラはおそらくミノタウロスと思われる赤銅色の肌をした獣の下半身に大蛇の腕を生やしている。
そして筋骨隆々とした身体とは不釣り合いな人の頭が首の上に鎮座していた。
理性を失って目の前の獲物に襲い掛かろうとしているキメラの人頭を魔球で吹き飛ばすも、何事もなかったかのように頭部を再生し蛇の腕を鞭のようにしならせ四季に振り下ろす。
俺は【高速移動】でキメラまで接近して赤銅色の肌に触れる。
「
崩壊Lv- 【腐蝕】から進化。あらゆるものを灰燼に帰す。
俺が触れた個所を中心に霧散していくキメラの身体。
あとに残されたのは俺と四季だけだった。
「君はいったい……」
戸惑う四季を差し置きヨルに指示をだす。
「ヨルは闘技場内にいるキメラの始末を頼む」
おそらく他にもキメラは作られている。
あの姿のまま生かされるよりは死んだほうがまだましだろう。
「了解したのです!」
俺はヨルを見送って四季に向き直る。
「さあ、すぐにここから離れよう」
「それは不可能よ。
この隷属の首輪がある限りわたしはこの街から出ることができない」
四季は忌々しそうに首輪に触れた。
(隷属化の魔導具か?)
『いえ、おそらくスキルによるものかと』
俺は隷属の首輪を掴み【崩壊】を発動しようとしたが思いとどまる。
(……Qちゃん、これを他のものに置換することはできる?)
『賢者の石を内包した【万能細胞】を持つマスターにできないことはありません』
「少し動かないでね……。錬成!」
隷属の首輪をミスリル製のネックレスに変える。
「うん。これでここから脱出できるね。
【状態異常無効】を付与したからもう奴隷に落とされることもないよ」
「まあ素敵。でもこんなお婆ちゃんにはもったいない代物ね」
「そんなことはない。よく似合っているよ」
「ありがとう、小さな錬金術師さん」
そう言って四季が初めて笑みをこぼす。
「ち、小さいって言うな!」
俺は四季の手を取り地上へ向かって駆け出した。
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