第42話 護衛任務①
冒険者ギルドの護衛依頼を受けて、僕は今馬車に揺られながら辺りを警戒中だ。
護衛対象はユラン聖教ザラマート王国支部のトップであるガブリエル枢機卿で、目的地はユラン聖教国である。
枢機卿を乗せた豪華な貴族用の馬車を前後で挟むようにして、計三台の馬車で街道を移動している。
いつの間にかAランク冒険者になっていた僕は、冒険者ギルドから要人警護を任されるほどの強さと信頼を得るまでになっていた。
ティア・ムーサLv81//ホムンクルス//無職
固有スキル
身体強化Lv10/10
鬼化Lv-
暗視Lv-
職業スキル
精神統一Lv10/10 NEW 集中から進化
ストレス無効Lv- NEW ストレス耐性から進化
逃走Lv10/10 NEW 逃げている間限定で全能力上昇
スキル
剣聖Lv10/10 NEW 大剣術から進化 大剣装備時限定
剣豪Lv10/10 NEW 刀術から進化
その他武器スキルLv1/1 NEW
各種魔法スキルLv1/1 NEW
各種耐性Lv1/1 NEW
隠密Lv10/10
鑑定眼Lv10/10 NEW 鑑定から進化
敏捷強化Lv10/10
魔力強化Lv10/10 NEW
剛腕Lv10/10 NEW
剛脚Lv10/10 NEW
瞬歩Lv10/10 NEW 歩行術から進化
韋駄天Lv10/10 NEW 走行術から進化
その他スキルLv1/1 NEW
浮遊Lv- NEW
生活魔法Lv-
自動照準Lv-
自動追尾Lv-
草むしりLv-
枢機卿一行はザラマート王国を既に後にして、エリク公国を横断し、この国の最西端にある宿場町に差し掛かろうとしている。
そこで一泊して翌日には次の国へ入国する予定だ。
ザラマート王国からユラン聖教国へ向かうには二つのルートがある。
本当は僕らが進んでいる道程よりも別ルートを通った方が早く着くのだが、安全を考慮した結果、エリク公国とアデーラ王国を経由して教国へと向かうことになった。
もう一方のルートでは一国を経由しただけで着くのだが、どうしても野営を避けられないため遠回りをしている。
ガブリエル枢機卿は教国から出向してきている他国の要人であるため、野営などさせるわけにはいかないのだ。
とはいえ護衛をしている側からすれば楽な任務である。
「今夜泊まる宿には期待できそうもないね」
遠方に見え始めた小さな宿場町の宿を想像して愚痴る。
「野宿するよりはましだろ」
僕の隣で先頭の馬車の御者を務めるフランクも冒険者である。
今日も日が暮れるまでには宿にチェックインできそうだ。
▽
「ねえ、夜番はいつも通り裸族からでいいよね?」
「裸族言うな!」
今回の護衛任務にはいつぞやの裸族ことカミラと共に索敵役として参加している。
僕たちの他は四人の男性冒険者で皆Aランクだ。
要人警護に就く冒険者が六人だけというのは少ないが、それは枢機卿の護衛として教国から派遣された聖騎士が四人帯同しているからである。
「それよりもティア、
アデーラ王国へ入ったら一気に治安が悪くなるから気を付けるのよ
って、もう寝てるし┅┅」
エリク公国はザラマート王国前王家の分家が独立して建国した国家で、トーレス王家とは親戚筋にあたる。
そのため両国は同じ文化圏であり、王国と同様に治安も安定している。
一方アデーラ王国はというと、選民意識の強い貴族によって重税を課せられた領民たちは貧困に喘いでいた。
さらに汚職まみれのこの国では、高所得者層である大商人たちは金にものを言わせて大きな権力を有しており、平民間でも貧富の格差が生まれている。
貧困層が増えれば当然治安は悪化するが、本当に厄介なのは盗賊などのごろつきなどではなく、腐敗した支配階級に鎮座する地方領主たちであるということを後々思い知らされることとなる。
そんなアデーラ王国の実情を知らないティアは、今はまだ深い眠りの中にいる。
▽
空間把握で飛来した矢を捉えた僕は叫ぶ。
「敵襲!」
アデーラ王国へ入国してから一体何度目の襲撃だろうか。
矢は左右から挟撃するように放たれている。
僕は【舜歩】で矢面へ移動し、飛来した矢を腰に佩いた青い刀で一閃した。
―と同時に背負っていたミスリル製の大剣を【浮遊】で浮かべ、【並列思考Lv1】で操作して逆側へ飛ばす。
そして【自動照準】と【自動追尾】で矢を叩き落とした。
刀で攻撃して大剣で防御する。これが僕の戦闘スタイルである。
既に他の冒険者たちも其々の持ち場で臨戦態勢だ。
蒼丸と名付けたアダマンタイト製の刀を中段に構え、賊が姿を現すのを待つ。
しかし森の中から現れたのは、同じ鎧姿に身を包んだ騎士たちだった。
「アデーラ王国の正規兵がなぜ┅┅」
ガブリエル枢機卿を護衛している聖騎士がそう呟いた。
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