第36話 空間魔法の魔球
ゴブリンの森にあるダンジョンでのレベル上げも無事に終わった。
他の皆は地上へ戻したが、俺はただ一人残って百層まで下りてきた。
全員Lv100を超えた今の彼らなら道中の危険もないだろう。
「ナデシコ、青騎士たちの回収は終わった?」
「はい。先ほどここまで呼びつけたPTで最後です」
クエスト/国防強化月間-を達成し終え、手元には10000SPがある。
このポイントを使って空間魔法を習得する。
消費SPは3000だが、スキルの成長限界が3しかないので事足りるのだ。
重力制御/質量を変化させて対象にかかる重力を増減させる
スウィッチ/視界内にある対象との座標を入れ替える
空間魔法Lv3で使える魔法は上記の二つと空間拡張だ。
「転移魔法は覚えなかったか……。
空間拡張は……、今更いらないな。
でもこれがあればアイテムバッグとか作れるか」
『作ることは可能ですが高値で売ることは難しいでしょう。
容量の大きい鞄を作れるだけで重さはそのままですから。
そもそも、そのような使い方をする魔法ではありません。
狭い居住スペースを広くしたり、小さい倉庫を拡張するなど様々な用途に使用できる非常にレアな魔法です』
「なるほど」
「そう言われると凄い性能に聞こえますねドット様」
問題は空間魔法を使ってどんな魔球を創り出すかである。
俺の覚えた空間魔法で出来ることは、質量を変化させる、座標を入れ替える、仕組みはわからないが空間を拡張させる、この三つだ。
「さっきQちゃんはさ、アイテムバッグを作ることはできるって言ったよね。
その場合、バッグよりも大きな物を収納することはできるの?」
『可能です。内部が広くなれば、その入り口の縮尺も大きくなりますから』
「……うん!良いことを思いついたぞ!新しい魔球の名は……」
『名は?』
「魔吸だ!」
俺は魔吸を作り出し高々と掲げる。
「『……』」
『空の魔球の内部を空間拡張したのですか?』
「正解!」
俺はウォールハックして見つけたハイゴブリンと魔吸内部の座標をスウィッチする。
ハイゴブリンは俺の手にしていた魔吸に呑み込まれるように閉じ込められた。
「重っ!」
重さが変わらないことを忘れてつい落としてしまったが魔吸は割れていない。
魔力出力を上げて手のひらサイズまで圧縮した魔球は、地面に落ちたぐらいではビクともしないのだ。
「これが魔吸だ。見ろ、ゴブリンが小さくなって魔吸内部に閉じ込められている」
「……、ドット様はハイゴブリンを引き寄せたかったのですか?それとも閉じ込めたかったのですか?」
「ん?……両方かな?なんで?」
『引き寄せるだけならマスターの目の前の座標とハイゴブリンの座標をスウィッチするだけでいいのでは?
それと魔吸に閉じ込める意図は何ですか?
この魔吸を内側から破壊できるような力を持った存在には意味がないと思うのですが?』
「……」
何も言い返すことができない。
閉じ込めたまではいいが、よくよく考えれば殺すためには魔吸を解くか破壊しなければならず、結局外に出さなければならないのだ。
それにこれまでの魔球シリーズのコンセプトと微妙にズレている気もする。
「んー、これは失敗だな。何かいい案を思いつくまで保留にしよう」
小さくなって(いるように見えるだけ)しまったハイゴブリンを突きながら呟く。
「……、あれ?これをストレージに仕舞ったらどうなるんだろう?」
『生物を収納することはできないので……死ぬのでは?』
「もしそうなら魔吸に閉じ込める意味もありますね」
「とりあえずやってみようか」
魔吸をストレージに収納してすぐさま取り出す。
「……、こいつ生きてるぞ……」
「何事もなかったようにピンピンしてますね……」
『こ、これは一体……。
魔球に空間拡張を施した結果、別次元にあるストレージとの間に境界線が引かれて、それが結界のような役割を果たしている?
しかし、そんな情報は私の中にはないが……』
この後、何度かストレージに出し入れしてみたがハイゴブリンが死ぬことはなかった。
ストレージの時間停止機能が魔吸内のハイゴブリンに及ぼす影響を見るために、しばらくの間彼にはストレージ内で過ごしてもらうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます