第33話 ゴブリンの森のダンジョン②

 ここはゴブリンしか湧かない特殊なダンジョンだ。


 そして整備のされた迷宮ではなく天然物なので光源がない。


 【暗視】持ちでもない限り生活魔法の【灯り】か光属性魔法の【ライト】が必須である。


 「道中の雑魚は無視して下層まで下りる。

  遅れた者は置いていくからそのつもりで」


 ナデシコは言い終わるや否や【灯り】を使用して駆け出して行った。 


 その後ろを慌てて追いかけていった高レベルPTもあっという間に見えなくなってしまった。


 「俺たちはとりあえず30層ほど下りて様子を見ようか」


 パワーレベリングを行えばLv100まですぐに到達可能だがそれはなるべくしたくはない。


 彼らは余りにも実戦経験が無さすぎるのだ。


 それではいくらレベルを上げようとも戦場では役に立たないだろう。







 道中でエンカウントしたゴブリンだけ始末して30層まで来た。


 階段下の小部屋の正面にはT字路が続いている。


 その先にいた三体のゴブリンPTを【ウォールハック】で発見した俺は、魔球を投げつけ一体の頭を吹き飛ばす。


 ゴブリンは臆病な魔物なので、地上であれば逃げ出しているところだが、ダンジョン産の魔物は格上の相手だろうと構わずに向かってくる。


 「カルロ!二体のゴブリンが来るから一体は任せる!二人は手を出さないでね」


 ここに来るまでは、ゴブリンを発見次第俺が秒で始末していたため三人にとっては初戦闘である。


 T字路から顔を出したゴブリンに向かって【腐蝕】を放つと、腰巻だけを残して奴らの装備品が崩れ落ちた。


 リズに汚いものは見せたくなかったので腰巻だけは対象から外したのだ。


 「そんなこともできるのか。さすがドットだねー」


 カルロは余裕そうに平然としている。


 武器や防具がなくなろうと怯むことなくゴブリンは突っ込んできた。


 俺は一体をカルロに向かって蹴り飛ばしもう一体の首を刎ねる。


 カルロが無手のゴブリンを一突きすると、魔石だけを残し塵となって霧散した。


 「カルロ経験値は入った?」


 「少ないけどもらえるみたいだね」


 「強さは?」


 「裸のゴブリンなら余裕かなー。

  ドットに作ってもらった武器が強すぎるだけかもしれないけど」


 これならキーラ一人でも一体なら対処できるかもしれない。


 「次は三体PTを誘き寄せる。

  カルロはゴブリンを一体だけ殺さずにキープして」


 「おk」


 「もう一体をリズがライトアローで俺から引きはがして。

  キーラはリズに向かっていくゴブリンに【挑発】してターゲットをとる。

  そいつを倒したら次はカルロがキープしているゴブリンを同じ流れで始末する」


 キーラの職業は戦士で【挑発】を習得しているのは確認済みだ。


挑発//対象のヘイトを自身へ向けさせる


 「わかったわ」


 「私はまだLv19なんだけど……」


 「俺の作った武器を信じろ!

  キーラは弱いがそのミスリルソードは強い!」


 失礼なことを言いつつもキーラに発破をかける。


 俺は事前に見つけていた三体PTのゴブリンに弱めの魔球を投げつける。


 しばらくすると、T字路から頭にこぶを作ったゴブリンを先頭に他の二体も現れたので、【腐蝕】を発動して装備を破壊する。


 この時点で三体のヘイトはすべて俺に向いているため、他の三人にゴブリンが向かっていくことはない。


 俺が三体をあしらっている間に、カルロは槍でちょっかいをかけて、キーラは【挑発】を使ってそれぞれ一体ずつ持っていった。


 キーラが相手をしているゴブリンにリズがライトアローを放つ。


 「リズはヘイトを稼ぎ過ぎないように注意。

  キーラはゴブリンがリズに向かって行った時は【挑発】で即ターゲットを奪い返して」


 「「わかったわ」」


 最初は動きの重かったキーラも、時間が経つにつれて慣れてきたのか、落ち着いてゴブリンの攻撃を丸盾で受け隙を見ては剣で切り付けている。


 そしてリズのライトアローがゴブリンに止めを刺した。


 「よし次!カルロは二人が参戦したのを確認してから攻撃して」


 「おk」


 俺は三人の戦況を見守りながら指示を出していく。


 ちなみに自分が相手をしているゴブリンは全く見ていない。


 【自動照準】と【自動追尾】があるので手に持った剣が勝手に動くのだ。


 ゴブリンの攻撃をいなし続けていたカルロは、二人が攻撃した後一撃で首を刎ね飛ばした。


 俺がゴブリンを三人のもとへ蹴り飛ばし、最後はキーラがゴブリンの胸を突き止めを刺した。


 「なんとか上手くいったね」


 「ふー、緊張したわ」


 「聞いてくれよドット!

  さっきの一戦だけで【受け流し】【身体強化】【敏捷強化】のスキルを覚えたぞ!」


 カルロ……、【受け流し】はともかくとして、【身体強化】【敏捷強化】を今更覚えるとかお前は今まで何をやっていたんだ?


 「わたしライトアローしか使っていないけど役に立っているのかしら」


 「リズはもともとヒーラーだからそれでいい。

  傷ついても回復してもらえるからこそ前衛は思い切って前に出られるんだから」


 そもそも聖女であるリズが戦争で前線に駆り出されるとは考え難い。


 レベルさえ上げてもらえばそれだけで御の字だ。


 「リズとキーラがLv30になったら一気に40層まで下りるからね」


 今の戦闘を見る限り、裸のゴブリンならもっと下層ででも狩れそうだが、しばらくは様子を見てもいいだろう。







 そして40層へ降りた俺たちは、三人がLv40を超えたので初日のレベル上げは終了することとなった。


 下の階へ降りた際にある部屋は魔物の湧かない安全地帯となっているため、そこで夜を明かすことにした。


 錬金術で立派な野営地を造ったのは言うまでもない。


 もっと下層へ降りて行った四人が心配だったが、ナデシコが付いているので死ぬことはないだろう。


 念のため魔球で周囲を覆い魔物が入ってこれないようにしてその日は就寝した。


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 

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