第28話 不滅隊

 朝から授業をサボって鈴蘭亭に来ている。


 午後からは予定があるため、午前中に創作活動を済ませるつもりだ。


 その前に新しく覚えたスキルを紹介しようと思う。


氷属性魔法Lv1/1

雷属性魔法Lv1/1

回復魔法Lv6/6


 氷と雷の魔法を習得したので属性魔法はコンプリートだ。


 適正は低かったが【魔球】と組み合わせるために覚えただけなので全く問題ない。


 これで魔球シリーズに氷球、雷球、癒球が加わった。


 その他に習得したものは以前から気になっていたチートスキルである。

 

ウォールハックLv- 障害物越しに相手を視認できる

ステルスLv- 自身から発する音や姿を完全に消す(気配は除く)

アラートLv- 自身に向けられる敵視を感知して知らせる

高速移動Lv- 


 これらはFPSやTPSのゲームでは絶対悪のチート行為のため習得に抵抗があった。


 しかし既に一部のチートスキルを使用していたので、今更かと思い直し一気に覚えることにした。


 残りのSPは空間魔法を習得するときのために温存する。


 最近シスターズは俺が寝ている間だけしかレベル上げをしてくれなくなったので無駄遣いはできないのだ。


 「ピリオッドは私たちだけに働かせて自分は何もしない外道」


 「「「「異議無し!」」」」


 俺も反省したので今から創る子たちには、一日中経験値とSP稼ぎをさせるつもりはない。


 「いい心掛けなのです!独りは寂しいのです!」


 外野が五月蠅いのでさっそく氷と雷の精霊を創る準備に取り掛かる。


 「僕も姉になるのか。楽しみだなー」







 まずは先日作ったハンドガンと元から使っていた片刃の剣をミスリル製に変えた。


 オリハルコンやヒヒイロカネなどの金属も作れるのだが、魔力伝導率はミスリルが最も高い、というか増幅させる特徴があるためミスリル製にした。


 これに氷球と雷球を組み合わせる。


 なお今回はゴーレムを経由せずに直接魂を錬成することにした。


 これまで創ってきた眷属たちとの違いを見るためだ。


 「錬成!」


 生まれたのは対照的な二人だった。


 少し癖のあるボーイッシュな金髪ショートと腰まであるストレートの青髪の子だ。


 二人とも背が高い(当社比)。


 そしてこれまでの子たちと比べて胸が大きい。


 「姉になると思っていた時期が僕にもありました……」


 さっそく胸を鷲掴みにしてステータスを確認する。


 「お!主は助平さんだな!」


 「あら、まだおっぱいが恋しいお年頃なのかしら。ふふふ」


名無しLv1//魔剣//剣士

固有スキル

 雷電魔法Lv1/10

 再生Lv-

 人化Lv-

 浮遊Lv-

職業スキル

 剣術Lv1/10

スキル


名無しLv1//魔銃//銃士

固有スキル

 氷雪魔法Lv1/10

 再生Lv-

 人化Lv-

 浮遊Lv-

職業スキル

 射撃術Lv1/10

スキル


 二人とも精霊にならず魔剣と魔銃になってしまった。


 『武器そのものに魂が宿ったようですね』


 「ちょっと武器化してみて」


 次の瞬間には剣と銃が目の前でぷかぷかと浮いていた。


 「主これでいいか?」


 「おお、その姿でも喋れるのか」


 たしかこういう武器をインテリジェンスウェポンと呼ぶのだっただろうか。


 二人にはそれぞれ稲姫いなひめ雪姫ゆきひめと名付けた。


 ヨルこと神崎夜子かんざきよるこに続く神崎シリーズである。


 思いのほか作業が早く終わってしまったので、朝食と昼食を兼ねていつものスイーツ専門店へと向かった。







 食事が済み、ティアに護衛させて稲姫と雪姫をレベル上げに行かせる。


 鈴蘭亭に戻ると午後から待ち合わせをしていた二人が既に部屋で待っていた。


 クリスとである。


 「はどうだった?クリス」


 とは万能細胞で複製した分身体である。


 といっても魂が入っていないのでゴーレムのようなものだ。


 「普通に会話もできるしまったく問題なかったよ。

  ただ、模擬戦をしてみたんだけど本物のドットと比べると若干弱いな」


 「弱い?まったくの複製体なんだけどな?」


 「んー、何というか動きが機械的なんだよ。

  俺のフェイントに何度か引っ掛かってたからな。

  いつもの鉄壁の剣捌きとは程遠かった」


 『複製体といえども意思がなければこんなものでしょう。

  所詮はマスターの指示を実行するだけのロボットに過ぎません』


 「なるほどなー。まあでも授業をサボるぶんには使えそうだね」


 俺は複製体の肩に手をのせる。


 「お疲れさん。また頼むよ」


 「ああ、いつでも呼び出してくれ」


 複製体はそう言い残し俺の手の中に吸い込まれた。


 「さて、では本題に入ろう。ヨル説明を頼む」


 「はいなのです!」


 影から飛び出してきたヨルは敬礼したのち語りだした。







 ギルマスが依然言っていた極秘任務が無くなったため、ヨルに帝国の調査をしてきてもらったのである。


 賢者の石の失敗作である赤い月の方角はわかっていたのでそこへヨルを向かわせたのだ。


 その場所には崩壊した巨大施設の残骸と百人以上の死体があったという。


 「そこに強制収容所があったのか……。

  -でイザナ因子キャリアたちが反乱を起こしたと」


 「そういうこと。

  おそらく赤い月を手に入れたのは収監者の誰かだろう。

  そして彼らは領都まで攻め上り一日かからずに制圧した」


 「それが奴隷王と不滅隊か」


 「奴隷王が誰か知らんが、そいつ含めてみんな子供だったそうだ。

  近隣の街では不死の軍勢と既に噂になっているらしい」


 「赤い月は賢者の石の失敗作なんだろ?不老不死薬なんて作れるのか?」


 「作れるよ。

  不老不死薬、つまりアムリタは賢者の石を薄めたものだからね。

  魂の錬成やオリハルコンなどの触媒としては使えないけどな」


 「帝国と奴隷王の戦争か。

  心情的には奴隷王に勝ってほしいが……」


 今のところ奴隷王の矛先は帝国へ向いている。


 しかし彼が帝国を落とした後が問題だ。


 なにしろ不死の軍勢を抱える国が隣国となるのだから。


 


 


 



 


 


 

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