第26話 シスターズ

 ダンジョンに潜らせたシスターズへ帰還命令を出してから待つこと数日。


 迎えに行かせたヨルからそろそろ地上に着くと連絡を受けたのでゴブリンの森まで来た。


 最近シスターズから送られてくる経験値やSPが減ったのでヨルに調べに行かせたのだ。


 ヨルの報告によればシスターズはダンジョン攻略に手間取っているとのことだった。


 というのも、地下百層を越えた途端にゴブリンの強さが跳ね上がったらしい。


 ゴブリンしかいないこの何の旨みもないダンジョンを攻略しようという冒険者はおらず、これまで放置されてきたため百層を越える大迷宮だとは知らなかったのだ。


 これがシスターズを帰還させる理由である。


 以前造ったキャンプ場で皆の帰りを待つ。


 その間にスキル【造形】から進化した【具現】を使っていろいろ作ることにした。


 試しにハンドガンを作ってみる。


 これを【造形】で再現するためには、その構造を完全に理解していなければ作ることはできない。


 しかし【具現】では俺のイメージした物や記憶から、その製造過程を端折って完全再現できるのである。


 「おお格好好いな!バン!バン!」


 ちなみにこのハンドガンは弾数無限かつオートリロード機能付きなので、魔力を流して引き金を引くだけで撃つことができる。


 といっても弾はただの無属性魔法の塊を撃つだけなので威力は【魔球】と比べて天と地ほどの差がある。


 とりあえず自分用の他に、クリスとティアの分を作った。


 再生を付与したので破損しても勝手に直ってしまう優れものである。


 直径1mほどの大木に試し撃ちしてみたところ、貫通はしなかったがかなり深くめり込んでいた。


 「これだけの威力があれば護身用としては十分だな」


 次に作るのは五つのリングである。


 これはシスターズを精霊化させた際の依り代に使うつもりだ。


 いわゆるヨルにとっての俺の影のようなものである。


 作ったものはガーネット、アクアマリン、ペリドット、アンバー、ゴシュナイトの宝石を使ったリングだ。


 これをそれぞれ火水風土光属性の魔球と賢者の石を合わせて魂を錬成する。


 リングの作成が終わり、しばらくしてからヨルとシスターズが戻ってきた。


 「ただいま戻ったのです!」


 ヨルの後ろにはシスターズが控えている。


 「ごくろうさん。百層以降にいるゴブリンはどうだった?」


 「あれはヤバいのです!ヨルでも勝てないのです!」


 「まじか……、ヨルでも無理なら誰も敵わないな」


 まさか王都の近くにそんな危険なダンジョンがあったとは。


 「ただ誰か通った形跡があったのです!」


 『高レベルの者たちがレベル上げに使っているのでは?』


 (もしくは最下層に何かお宝があるとかね。例えば古龍がいるとかさ)


 『古龍はこの国にはいませんよ』


 (やっぱり何か知ってるんじゃないか)


 「んー、とりあえずシスターズに魂を錬成してしまおう」


 俺はガーネットリングを指に嵌め、火球と賢者の石でファイアゴーレムに魂を錬成した。







 全員の錬成が終わり名前を付けステータスを確認いていく。


ヒカリ・ムーサLv91//光の精霊//魔術師

固有スキル

 神聖魔法Lv10/10 NEW 光属性魔法から進化

 光属性無効Lv- NEW 光属性耐性から進化

 暗視Lv-

職業スキル

 魔力上昇Lv10/10

 魔術印Lv10/10 NEW 魔力を消費して次に唱える魔法の威力を増加させる

 並列思考Lv10/10 NEW 

スキル

 魔力感知Lv10/10 NEW 通常よりも正確に魔力を認識することができる

 ストレス耐性Lv10/10 NEW

 飛行Lv- NEW

 人化Lv- NEW 精霊になった際習得



 なんと魔法属性以外はすべて同じLvとスキル構成だった。


 ここへ【自動照準】と【自動追尾】を譲渡した。


 ヒカリ以外は略す。


ヒナタ・ムーサ//火の精霊//火炎魔法


ミナミ・ムーサ//水の精霊//水禍魔法


フウカ・ムーサ//風の精霊//暴風魔法


リク・ムーサ//土の精霊//大地魔法


 「よし!みんな精霊になったからさらに強くなったはずだ!

  また経験値とSP稼ぎを頑張ってね!」


 「「「「「……」」」」」


 シスターズの反応が鈍い。それに俺をジト目で見るのは止めてほしいのだが。


 「あのさ」


 ヒナタが代表して発言するようだ。


 「ピリオッドは馬鹿なの?魔術師の5人PTとか聞いたことない!

  あとさ、妹のティアだけ特別扱いはズルい!少しは休ませろ!」


 ヒナタが言い終わると、シスターズは俺の嵌めている依り代のリングに帰ってしまった。


 「……」


 俺をピリオッドと呼ぶのはディアナの影響だろうか。


 それに少し口が悪いのはなぜなのか。


 ともあれ彼女たちが一人も欠けることなく戻ってきただけでも良しとしよう。


 


 





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