第18話 ヨル
イザナクエストで新しい生命を生み出さなければならないわけだが今一ピンとこない。
ゴーレムはただ与えられた命令を実行するだけの人形だ。
魂の器のようなものがあるだけでそこに心は無い。
かりに命の正体が魂や心であったとして、俺にはうまく連想することができなかった。
だから、賢者の石とヨルを錬成したときに込めたイメージは人である。
結果誕生したのがベッドの上で自分の身体を矯めつ眇めつ確かめている全裸の少女だ。
見た感じ日本人の高校生といったところだろうか。
「ヨル、具合はどうだい?」
声をかけると俺を視認したヨルは急に抱き着いてきた。
「ドット、ヨルは……、ヨルはずっと独りで寂しかったのです。うぅ……」
俺はヨルが泣き止むまでよしよししてあげるのだった。
『どさくさに紛れてお触りしているようですが』
(ナンノコトカナ?)
▽
落ち着いたヨルをシーツで包む。
どうも異性に裸を見られることに抵抗がないらしい。
「それにしても日本人にしか見えないな」
ヨルは肩までかかるセミロングの黒髪に黒目をしている。
「よし!日本人っぽい名前を付けよう!」
固有スキル
暗黒魔法Lv10/10 NEW 闇属性魔法から進化
影魔法Lv10/10
飛行Lv10/10
職業スキル
毒生成Lv10/10
魔女裁判Lv- NEW
ワルプルギスの夜Lv- NEW
スキル
短剣術Lv10/10 NEW
隠密Lv10/10 NEW 隠蔽から進化
気配遮断Lv10/10
気配察知Lv10/10
敏捷強化Lv10/10
孤独耐性Lv1/1 NEW
暗視Lv-
自動照準Lv-
自動追尾Lv-
共有ストレージLv-
球拾いLv-
マッサージLv-
俺が生み出したからだろうか、ヨルのステータスを見ることができた。
ヨルは人間にしか見えないが精霊になってしまったようだ。
ちなみに神崎とは前世での俺の苗字である。
「強くね?レベルなんて俺の倍以上あるんだけど」
「えへへ、ヨルはドットのために頑張ったのです!」
ヨルにはこのままレベル上げを続けてもらうつもりだったのだが、そんな事を笑顔で言われてしまい考えを改めた。
『ヨルは寂しがり屋のようですね。
自我のないゴーレムが孤独体制を習得するなんて聞いたことがありません』
(せっかく覚えたのに成長限界が1か……)
ヨルは俺と一緒にいられることが嬉しいのか始終にこにこしている。
「それじゃあ食事してから寮に戻ろうか!」
「ごはん!ヨルは初めて食べるのです!」
シーツを放り投げ素っ裸で部屋を出ていこうとするヨルを押しとどめ、錬成した服を着せて鈴蘭亭を後にした。
▽
「うー、お腹一杯なのです」
黒い三角の帽子に金糸で刺繍が施されているハーフローブ、膝上丈のスカート、つま先の尖がった革靴という全身黒尽くめの魔女っ子スタイルのヨルはお腹を押さえて苦しそうにしている。
レベルが上がると食べる量も増えるのだろうか。
「食べ過ぎだろ!これからはいつでも食べられるんだから自重しろ!」
「え!?もう独りでレベル上げしなくていいのです!?うぅ……」
「ヨルのおかげでだいぶレベルも上がったからね」
レベル上げを再開するときはまた別の者を生み出せばいい。
『マスター』
「!?頭の中で声が聞こえるのです!?」
「ヨルにも聞こえるの?」
『ヨルはマスターの眷属ですから念話が可能です。
ところで新しいイザナクエストはいかがしますか』
イザナクエスト⑤/神の寝床
報酬/4000SP
概要/
「どうせQちゃんは教えてくれないだろうからしばらく放置かな」
『そうとは限らないでしょう?』
「じゃあ古龍がどこにいるのか教えてよ」
『その問いに答える権限がありません。ふふふ』
「はあ……」
Qちゃんとの付き合いも長くなってようやく打ち解けることができたようだ。
「どこにいるのです!姿を現すのです!」
新しい仲間も増え騒がしい日常がやってくる予感をひしひしと感じながら寮へと足を運ぶのだった。
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