第5話 冒険者登録

 そろそろ日も暮れようかという時分になったので、次の獲物で最後にしようと【視点切替】を駆使しゴブリンを探し回る。


 リリアンとリズとのレベル上げも終わり今では一人で狩りをしている。


 レベルの上昇とともにゴブリンから得られる経験値が減少してきたので、本来であれば別の狩場へ移るべきだろう。


 しかし、父からはゴブリン限定ということでソロ活動を認めてもらっているため我慢しているのだ。


 「お、いたいた」


 索敵に引っ掛かったゴブリンの頭部目がけて魔球を投げつける。


 『レベルが10に上がりました』


 『クエスト/ゴブリン討伐を達成しました』


ドット・ピリオッドLv10//人族//錬金術師

固有スキル

 クエストLv-

 譲渡Lv-

 万能細胞Lv-

 イザナ因子Lv1/10

職業スキル

 錬成Lv3/10

 ゴーレム作成Lv1/10

スキル

 魔球Lv9/10

 投球術Lv3/3

 打撃術Lv1/3

 剣術Lv2/2

 Q&ALv-

 生活魔法Lv-

 視点切替Lv-

 自動照準Lv-

 自動追尾Lv-


 「ゴーレム作成……、外れたか……」


 職業スキルはレベルが十上がる度に増えてゆく。


 しかし覚えるスキルは個々人によってまちまちで、商人ほどの確立ではないが錬金術師も【鑑定】【収納】を習得する可能性はあったのだが残念だ。


クエスト/ゴブリン討伐

報酬/1SP 

概要/ゴブリンを10体討伐せよ。


 「まさかゴブリン討伐の報酬がこんなに低いとは思ってもみなかったなー」


 すでに何度も達成しているこのクエストで丁度10SP貯まったので魔球をカンストさせる。


 首無しゴブリンから魔石を回収し帰ろうとしたところ、新しいクエストが発生していることに気づいた。


錬金術師クエスト/ゴーレム作成

報酬/100SP 

概要/魔石と土を錬成してアースゴーレムを作成してみましょう。


 「報酬が100SP!これは美味い!」


 地面に魔石を置いて手をつく。


 【ゴーレム作成】を習得した瞬間にスキルの使い方はインプットされていた。


 まるで最初から知っていた事でもあるかのように感じる。


 「錬成!」


 赤い閃光が迸ると魔石は盛り上がってきた土に飲み込まれた。


 さらに魔力を流していくとその小山がせり上がってゆき人型へと姿を変えていく。


 最終的に出来上がったのはマネキンのようなゴーレムだった。


 顔はのっぺりとして表情は無いが人形の関節のような部位は見当たらない。


 その肌は艶があり何故か豊かな胸がついていた。


 「なんで女型なんだ……、しかもこの胸本物みたいに柔らかいんだが」


 『マスター……、いつまでお触りを続けるつもりですか?』


 まったく失礼な奴である。


 俺はアースゴーレムの全身を隈なく確認していただけで他意はないのだ。


 「よし!そこの木まで走ってみろ」


 女型は腰を落とすと一気に駆け出す。


 人のような滑らかな走りで木まで着くとそのまま立ち竦んでしまった。


 どうやら命令されたことしかできないらしい。


 「次は目の前の木を全力で殴れ」


 ボクサーのように構えたのは俺の前世の記憶が影響しているのだろうか。


 女型が木の幹に右ストレートを叩き込むとその腕ごと砕け散ってしまった。


 「……、これ役に立つのか……」


 『スキルレベルが上がれば強力な個体の作成も可能です』


 「ただなー、魔石を消費するのは痛いな」


 アースゴーレムを土に還すと魔石は残っていなかった。


 「とりあえず目標にしていたLv10まで上がったことだし良しとするか」


 レベルが10になれば冒険者になることができるのだ。


 冒険者ギルドに登録するためには成人(15歳)に達している、もしくは本体レベルが10以上であることが必要条件となっているのである。


 冒険者登録をするのは翌日にしてその日は帰宅することにした。







 エイデンにある冒険者ギルドは厳つい石造りの建物だ。


 木造建築が一般的な林業の盛んなこの地域ではひどく珍しい。


 両開きのドアを押して中に入ると、想像していたものよりも落ち着いた雰囲気をしていた。


 酒場や食事処が併設されているわけでもなく役場然とした印象を受ける。


 当然、荒くれ者の冒険者に絡まれるというイベントも発生しなかった。


 (なんだか拍子抜けだね)


 『絡まれたかったのですか?』


 (いや、前世の記憶では定番のイベントだったからさ)


 受付まで行き声をかける。


 「すいません。冒険者登録したいんですけど」


 冒険者ギルドの受付嬢は美人揃いという定説は確かなようだ。


 綺麗なお姉さんはにこやかに俺を一瞥した後に口を開いた。


 成人前と一目でわかる俺を見てそれを言及するのかと思ったら違ったようだ。


 「それではこのギルドカードに魔力を流してください」


 卓の上に置かれたカードに手を添え言われた通りにする。


 「ドット……、君ですね。Lv10である事を確認しました。

  これで冒険者登録は完了となります。

  ギルドに関する詳細等はこのパンフレットに記載されているので、

  後ほどお読みください。

  それでは手数料として1000G頂きます」


 銀貨一枚支払いギルドカードを受け取る。


 そのカードには名前、Lv、職業、スキルなど俺の個人情報が記載されていた。


 「え?魔力を流しただけでここまでわかるの?」


 「その仕組みまでは把握しておりませんが、

  このカードを作成する魔導具は、

  冒険者ギルド設立時には既に存在していたと聞いています」


 そういうことを聞いたわけではない。


 魔力で個人を特定するのは可能かもしれない。


 しかし、まだ登録前の者の個人情報を知る術はないはずだ。


 まさか魔力の中にそのすべてが刻まれているとでもいうのだろうか。


 おかしいことはまだある。


 「冒険者ランクはGが一番下ですよね?

  登録したてなのにFランクになっているんだけど」


 「冒険者のランクを判定するのはギルドではありません。

  ギルドカードが判断します。

  一般的にはゴブリンを討伐できればFランクに上がると言われています」


 「冒険者のランクをこのカードが決める……」


 俺は冒険者ギルドを後にした。


 あのお姉さんに聞いても知りたい答えは得られないだろう。


 こういう時は知っているものに聞けばいいのだ。


 (Qちゃん、このギルドカードについて詳しく教えて)


 『その問いに答える権限がありません』


 まさかの答えが返ってきた。


 (それは、Qちゃんには俺よりも上位の指揮命令権者がいるってこと?)


 『その問いに答える権限がありません』


 もしかすると知らない方がいい事もあるのかもしれない。


 この世界は謎だらけである。


 俺はこの件について考えるのを止めた。


 


 


 


 

 


 


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