第3話 魔球

クエスト/チュートリアル③

報酬/スキル【Q&A】

概要/SPを消費してスキルレベルを上げてみよう。


 【魔球】を覚えるとまた新しいクエストが発生した。


 このスキルを選んだのは中二心をくすぐられたというのもあるが、何といってもSP消費の少なさが魅力的だったからだ。


 今のところSPの入手手段がわからない以上無駄遣いはできない。


 「はい、あーん」


 そして俺は今ミーナにおかゆを食べさせてもらっている。


 ミーナはこの国でよく見られる茶色い髪と瞳の美少女(15)だ。


 食べさせてくれるというのだからお言葉に甘えよう。うん。


 万能細胞によってまったくの健康体に戻っていたのだが、父からしばらくは安静にしているようにと言われているのだから仕方ない。


 「もぐもぐ、ところでミーナ、これが何かわかる?」


 「これ?とはどれですか?」


 どうやらこのポップアップは俺にしか見えていないらしい。


 「ならいいんだ」


 「はい?、あーん」


 こうして至福の時間を過ごし、仮眠をとるからと一人にしてもらった。







 【魔球】のスキルレベルを上げてクエストを達成する。


 『以上でチュートリアルは終了となります』


 「あれ?この声は天の声さんだよね?」


 『……いえ、私はスキル【Q&A】に搭載されている自動音声システムです』


 本人が否定しているのだからそういうことにしておこう。


 「ところでQちゃん、SPについて詳しく教えて」


 『キュ、Qちゃん……、まずは所持品にタブを切り替えてください』


 所持金0G(ゴールド)/80SP(スキルポイント)


 この他には5×5のマスがあるだけだ。


 『スキルレベルを上げるには取得時と同じだけのSPを消費します。

  SPの入手手段はクエストの達成報酬のみとなりますが、

  ゴブリン討伐などの常設依頼があるため事実上無限にSPの入手は可能です』


 「俺自身のレベルや職業スキルなどを上げるときのSPの計算式は?」


 『それはこの世界のシステムに準拠しているためSPの消費はありません』


 つまり魔物を倒したりスキルの修練を積んで上げるわけか。


 「じゃー次の質問は……、

  そうだ!スキルを覚えるときに消費するSPはその性能によって決まるの?」


 『間違いではありませんが、正しくはレア度によって決定されます。

  その枠外にあるものが10SPで習得できるスキルです。

  これらはマスターに依存する地球産のスキルであるため、

  この世界のシステムでは正しい評価ができないので一律10SPとなります』


 「なるほどね。

  それなら同じようなスキルの場合地球産のスキルを覚えたほうがお得だな。

  地球産というよりも俺がやっていたゲームにあったスキルや機能だけど」


 とくに【視点切替】【自動照準】【自動追尾】この三つのスキルは面白そうだ。


 これらはゲームジャンルにもよるがチート行為と呼ばれているものである。


 俺は迷うことなくこれらを習得し、残りの50SPは温存することにした。


 そして5×5のマス目であるがこれはストレージだろう。


 「【収納】を覚えられなかった身としてはありがたい。

  アイテム所持数は少ないが何もないよりはましか」


 『月額10万Gで所持品タブを追加できます。

  一マス100万Gで購入も可能です』


 俺が現在貰っている小遣いは月に一万G(金貨一枚)である。


 「所持品タブをまるまる購入するのに2千5百万円必要なのか」


 ※白金貨100万G、金貨1万G、銀貨千G、銅貨百Gで、1G=1円である。


 今のところは課金を考える必要はないだろう。


 そんな金はないしそもそもストレージ内は空っぽだ。







 父が外出したのを見計らい普段着に着替え部屋を抜け出す。


 途中ミーナに見つかり小言を言われたが無視して屋敷の外へと出た。


 「ここまでくれば誰にも見られないな」


 だだっ広い庭園の屋敷から死角となる場所まで来た。


 覚えたスキルを実際に使ってみるためである。


 「魔球!」


 そう唱えると、手のひらの上に野球ボール大の透明な玉が現れた。


 握ってみるとかなり硬そうだ。


 『Lv1で作れる魔球では、

  小石を投げて与えられるダメージ程度の威力しかありません』


 小石でもぶつけられたら相当痛いと思うのだが。


 「ふむ。とりあえずあの木に投げてみよう」


 おあつらえ向きに丁度良さげな木が立っている。


 木の幹に魔球を投擲すると、狙い通りの場所に命中し砕け散った。


 今度は明後日の方向に投げてみる。


 魔球は急激にその軌道を変え木に当たった。


 「これが【自動照準】と【自動追尾】の効果か……。

  必中攻撃とかまさにチートだな……」


 『投球術を習得すればより速く強い球も投げられるようになります。

  スキルとは組み合わせて使うものです。

  万能細胞で魔球の属性を変えることもできます』


 「何それ?詳しく」


 『魔球とは無属性の魔力の塊です。

  マスターは生活魔法を習得していることから、

  火水風土光闇の属性を扱えることになります。

  万能細胞を使い無属性の魔球を各属性に変質させれば、

  火の魔球や水の魔球を作ることも可能です』


 「おお!それは面白いね!

  でも生活魔法に闇属性なんてあったかな?」


 『生活魔法は着火、放水、送風、接着、ライト、クリーンで構成されています。

  クリーンは埃や汚れを吸収廃棄する魔法で、これが闇属性魔法にあたります』


 「触れたものを消し去る闇属性の魔球とか最強だな!」


 『クリーンは収納同様に生物は対象外ですので、

  闇属性の魔球で直接攻撃はできません』


 「スキルは組み合わせて使うものなんでしょ?

  だったら何か思いもよらない用途があるかもしれないよ?」


 この日から俺の魔球研究が始まった。


 


 


 


 


  




 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る