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「まあ、ここまでは悪くない結果よね」
王都にあるヴォルティオ公爵家の一室で、ソフィアとオリオンは作戦会議中だった。
ソフィアがランドールに嫁ぐ際、オリオンも護衛として一緒についてきた――というか、ソフィアが国王にねだった。
ランドールと結婚式を挙げて一週間。
結婚してもランドールの冷ややかな態度は変わらず、ソフィアは彼と初夜もすごしていない。なぜなら結婚当日、彼は家に帰ってこなかったからだ。
体裁上、ソフィアにはランドールの妻としてとても広く豪華な部屋が与えられたが、ランドールの私室からは離れており、寝室も別だ。
ソフィアも、ランドールと結婚したからと言って、ラブラブな新婚生活がはじまるとは思っていなかったから、がっかりしているわけではない。当初の目的通り、城から離れることに成功した。悪役令嬢から一歩遠のいたのである、
だがしかし、結婚したからと言って油断はできない。このままランドールと冷えた結婚生活を送っていては安心できないのだ。悪役令嬢としての断罪イベントを回避するために、なんとしてでもランドールに愛してもらう必要がある。というか、ソフィアは彼に愛されたい。
「ランドールは今日も城に寝泊まりしてるの?」
「うん」
ランドールはソフィアが嫁いできてから一週間、毎日城で寝泊まりしていてちっとも邸に帰ってこない。ここまで拒絶されるとむしろあっぱれとも思えるほどだが、そもそもランドールはソフィアの「監視」のためにこの結婚を受け入れたのだから、ソフィアと距離を取っていては意味がない気がするのだが。
「うーん、少なくとも家に帰ってきてもらうようにしなくちゃはじまんないわね」
「よねー?」
オリオンの言葉に、ソフィアはうんうんと頷く。
ソフィアは悪役令嬢として断罪される運命を変えたいと同時に、ランドールを攻略したい! ヒロインでないソフィアがランドールを攻略するにはどうすればいいのかわからないが、少なくとも今のようにすれ違い生活を送っていてははじまらない。
オリオンは考えて、それからポンと手を打った。
「あれやってみたら?」
「あれ?」
オリオンはにやりと笑った。
「ランドールルートであったでしょ! お見舞いイベントよ!」
ソフィアは「グラストーナの雪」のランドールルートで一番はじめに手に入るスチルを思い出した。
お見舞いイベント。それは、ランドールが高熱を出したキーラのお見舞いにやってくるイベントで、寝込むキーラの額に水で濡らしたタオルをおいてくれるときのスチルが手に入るものだ。愛情表現が苦手な彼が仏頂面でタオルをかえるそのスチルに、前世のソフィアは萌えまくった。
(……お見舞いスチル、ほしい)
もちろん、ここでは「スチル」は手に入らない。だが、そのときのランドールの顔が見たい。写真機があればいいのに。なんて残念な世界だ。
ソフィアは名案だとばかりに頷いたが、ここで一つ疑問を持った。
「ねえ、高熱ってどうやって出すの?」
「………」
自慢じゃないが、これまで風邪もほとんど引いたことがないほどの健康体である。
ソフィアとオリオンは二人そろって「ううむ」と唸った。
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