第01話 幽寂閑雅

 目覚めた俺の視界は満月ではなく、女の顔で占められていた。

 後頭部には柔らかな感触。

 背中から下は固い木の感触。

 どうやら俺は膝枕され――


「っ!」


 ――驚くのと同時、体を起こそうとした。

 だが、先んじて女の指先が俺の胸元を押さえつけた。力が一切入っていないような触れ方なのに全く動けなかった。女は一瞥いちべつすらせず俺の動きを把握していた。 


「もう少し寝てなさいな」


 月を見上げ、銀髪の「魔女」はそう呟いた。

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