魔女と守護者のカーディガン

江田・K

プロローグ 閉月羞花

 道路に仰向けにぶっ倒れ、俺は夜空を眺めていた。

 満月。

 その真白まっしろい円を時折人の形をした影が横切っていく。



 文字通り、人が宙を舞っていた。



 それを成している投げ飛ばしているのは、白いカーディガンを羽織った、長身の、だが恐ろしく華奢な女。10人からいた北高キタコーの連中をちぎっては投げちぎっては投げ。


 残っているのはひとりだけだ。


「もう終わり? 大したことないのね、北高も」

「ひっ、ひいぃっ!」


 女の揶揄にそいつは後退あとずさる。


 ふたり殴り倒した俺が残りの連中にボコられているところへ、この女が割って入って来た。そしてひとりで7人を投げ飛ばしたわけだ。


「一体何者だ?」


 女がこちらを振り返ると、ふわりと揺れた長いが、月を覆い隠すように視界を埋め尽くした。



 ――



 友達ツレのいない俺すら耳にするその噂を思い出すと同時、意識は途絶えた。

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