第5話初めてのデート
勇樹の生活は一転した。
沢村はるな中心の生活だ。
一緒に学校に行く為には寝坊はできない。
だから夜更かしは無くなり、規則正しい生活になった。
下校も一緒に帰宅するから寄り道もしない。
一緒に道草する事も可能だが、それではるなに何かあったらいけないから誘う事だけはしなかった。
そんなはるな中心の生活で、運動会、文化祭等、無事行事も一緒に迎え、思い出を作る事ができた。
「…勇樹君、明後日、暇かな?」
秋も深まった下校時、いつものように一緒に帰る中、はるなが耳まで真っ赤にしながら聞いてきた。
「?…!?…!!!明後日!?日曜だよね!?大丈夫!めっちゃ暇!」
このはるなの状況を見て流石に悟らない奴は馬鹿だ!と、勇樹はデートのお誘いだと察した。
察したが、返事は焦り過ぎた勇樹だった。
「私、ずっとこんな感じだったから、あんまりお出かけする事なかったのね…。それで、ずっと前から行きたかったとこがあるの。」
「どこ?」
「それは行ってからのお楽しみで♪」
恥ずかしそうに言うはるなに勇樹はデートを確信した。
デート当日。
「…ここは?」
「お寺です。」(*-人-)
ゴーン
タイミング良く鐘の音が鳴る。
デートの要素ゼロじゃん…。
うなだれる勇樹だった。
はるなはお寺巡りがしたかったそうで、語り出すと止まらなかった。
建物の作りがどうとか、仏さまのフォルムが神とか、歴史が凄いとか、勇樹にはよくわからなかったが、お寺の部分を無視すればデートである事に違いはないと自分を励ました。
「今日は付き合ってくれてありがとう。」
はるなは興奮気味に勇樹に行った。
「喜んで貰えたなら良かったよ。それにしても、はるなが寺好きとは知らなかったよ、学校じゃ全然そういうところ見せないし。」
「我慢してたの。みんなに引かれるのも嫌だったし。」
「引かれはしないって。理解はできないけど。」
勇樹は笑いながら言った。
「酷ーい。勇樹君を誘うんじゃなかった!」
言いながらはるなも笑う。
2人にとって幸せな時間が流れていた。
「ハハハ!なんだか笑い過ぎて胸がドキドキする…。」
はるなの様子が?
「え?大丈夫かはるな!?」
「…うん、ちょっと休めば大丈夫だと思うから…」
急激にはるなの血の気が失せるのがわかった。
勇樹の肩に手を置きながら膝をついて崩れる様に地面に倒れた。
慌てて抱きとめる勇樹。
地面に寝かせるとすぐに119番に電話する。
だが、すぐには救急車は来ない。
スマホを握る手に力が入る。
「…あ、ハピポでお願いすれば!」
勇樹は、「はるなを助けて」と入力する。
すると『ポイントが全然足りません』の表示。
「なんだよ!全然、使えないじゃん!」
スマホを投げる勇樹、その投げた先に同じお寺巡りの観光客と思われる年配の夫婦が現れた。
「すみません!助けて下さい!!!」
勇樹はその夫婦に声をかけた。
静かなお寺の林に勇樹の声が響いた。
年配の夫婦の夫は、すぐに察したのだろう。
「通報はもうしたかね?」
と言い、
勇樹が頷くのを確認すると
「私は医者だ、安心したまえ。」
というと、はるなの呼吸、脈、心音を確認し、「心室細動か…」
とつぶやくと心臓マッサージを始めた。
それは、はるなの心臓が止まっている事を意味した。
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