第4話ハピポラッシュ
学校での沢村はるなの人気は凄かった。
「久しぶりはるな!退院出来て良かったね!」
「本当だよ、心配した!」
「もう、大丈夫なの?」
女子が特にはるなを囲むと次々に声をかけていた。
クラスの男子生徒も沢村はるなのかわいさにハートを射抜かれているものは多い。
守ってあげたい系女子だ。
一緒に登校した勇樹はもう、蚊帳の外だった。
「…俺の春も、一瞬だったな…。」
はるなを人の群れにぼそっと勇樹がつぶやく。
その肩を叩いてたかしが慰めた。
「幼馴染特権なんて漫画の中だけだぜ。どんまい。」
それ、慰めてないから!
ムキになった勇樹は囲みをかき分けると
「沢村さんは退院したばかりなんだからそれぐらいにしろ!」
と、みんなを威嚇した。
「今村君がでしゃばる事じゃないと思いまーす!」
女子の1人が言うと
周囲はそうだそうだ!と同調しだした。
「…これは、分が悪いぞ、勇樹。」
たかしが、また、肩を叩く。
「うるさい!はるなに負担掛けるなっていってんだよ!」
確かにはるなは騒ぎが大きくなって戸惑っていた。
このままエスカレートしたら、もみくちゃにされそうだ。
だが、この勇樹の怒号に場の雰囲気が一変し静かになった。
熱気が収まった事で、はるなは内心ホッとした。
そこにハピポの、チャージを知らせる音が鳴るのであった。
お昼休み。
「朝はありがとう勇樹君。」
はるながお礼を言ってきた。
「いや、いいよ。あの状況じゃ、はるなが言える雰囲気じゃなかったし…、言っても体に負担かかるかもだし…」
語尾がごにょごにょっとなったが、はるなにはちゃんと聞こえたようだった。
「本当にありがとう。」
笑顔で答えるとはるなは席に戻っていった。
「…やっぱり、かわいいよな。」
たかしが言う。
「お前が言うなよ。今のは俺のセリフだろ。」
「勇樹の片思いだけどな。」
たかしがニヤニヤしながら言う。
「いいんだよ別に…。見てるだけで幸せなんだよ俺は。」
それを聞いて、泣く演技をたかしがした。
「…勇樹、お前ってやつは!よし、今日はカラオケ行こうぜ!」
「いや、帰りもはるなを送って帰るから。」
「…やっぱり、片思いのまま爆ぜろ。」
たかしが冷めた目で勇樹を見ながら言うのであった。
「帰りまで付き合ってくれてありがとう勇樹君。」
はるなが、申し訳なさそうに言った。
「ああ、気にすんなって。どちらにせよ、帰り道一緒だし。」
「鞄まで持って貰って、ごめんなさい。」
「だから、気にすんなって。まだ、はるなも体力戻ってないだろ。今は俺に任せろよ。」
男らしいところをみせた勇樹。
そのポケットのスマホからは、ハピポのチャージのお知らせ音が何度も鳴るのであった。
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