第2話ハピポの基本
放課後の教室。
「たかし、俺、早速、裏技考えたんだけど?」
勇樹は昼からの授業中、ずっとハッピーポイントの事を考えていたようだ。
「どんなの?」
たかしが興味を引かれて聞き返してきた。
「へへへ、たかしが消しゴムを落とすだろ、それを俺が拾って渡す。それを繰り返すんだよ。どうよ?これで無限にポイントゲットできるだろ!」
「…本気で言ってる?」
「なんだよ!?」
単純なたかしに言われてムキになった。
「そういうのは、『善行を積む』って事にはならないんだぜ?あと、良い事をして上げたとか、恩着せがましい事も駄目なんだぜ?」
「…そうなのか?」
「ハピポ攻略サイトに書いてたから間違いない!」
自信満々でたかしは言い切った。
「ネットの受け売りかよ!」
「全国のハピポマニアが集う攻略サイトだぜ?俺も参考にしてる。」
ダブルピースでドヤるたかしだった。
下校途中、いざ、良い事をしようと思うと、何をしていいのかわからない事に思い当たった。
そこで、たかしのマネをして路上に落ちていたゴミを拾ってみた。
ピロン
スマホに着信がきた。
『あなたのハッピーポイントがチャージされました。』
「お!増えたじゃん!このペースで増やしてみるか。」
と、路上のゴミを拾おうと目を凝らしてみるが案外ゴミが無い事に気づいた。
「なんだよ、ポイント貯めるの難しいじゃん。そもそも、どうやってカウントしてんだよ、このアプリ。」
スマホを見ながらぼやいていると前を歩いていた女性がバックからスマホを取り出す弾みにハンカチを落とした。
咄嗟にそれをかわして歩く勇樹。
落した女性は気づかずに歩いて行く。
数歩進んでから、「あ。」と、気づいた。
「今の拾えばいいのか!」
慌てて後戻りするとハンカチを拾って女性を呼び止めようと振り返ると女性はいなくなっていた。
「あー、ポイント貯めそこなった!」
そう言うと拾ったハンカチを道路の茂みに投げ捨てた。
ピロン
着信音が鳴り、スマホにお知らせが来た。
「何々?『ハッピーポイントが減点されました』?」
咄嗟に振り向き、投げ捨てたハンカチを凝視した。
「あれか!」
勇樹は慌てて戻って拾い直した。
「チャージしたポイント、使わなくても減点されるのかよ!」
拾い直したハンカチをまた投げ捨てたい気持ちになった勇樹だった。
夜、勇樹は下校時の事をたかしに電話でぼやいていた。
「それは駄目に決まってるじゃん。コツは良い事をして、悪い事はしない。基本だぜ?」
たかしにそれを言われると何気にムカつく。
たかしとは長い付き合いだが、どちらかというと関係性は悪友なのだ。
お前が言うな、と言いたくなる事もやってきた仲だ。
「何度も言うけど恩着せがましいのはポイントにならないからな。自然に出来るようにしろよ。コツさえ掴めば楽勝だから頑張れよ。」
そういうとたかしから電話を切られた。
「…自然ってなんだよ!というかたかしの先輩面がムカつく!ギャー!」
叫ぶ勇樹であった。
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