ハッピーポイント貯めませんか?
西の果てのぺろ。
第1話『ハピポ』をダウンロード!
ある日の平凡な高校のお昼休み。
1人の男子生徒が飲み終えた缶を離れた所からゴミ箱に投げ捨てた。
カン!
缶は角を捕らえたが、音を立てて跳ねるとゴミ箱に入らず床に落ちた。
すると自分と話していた友人のたかしが自分から進んで缶を拾うとゴミ箱に捨てた。
「え?」
俺は驚いた。
「何?」
友人のたかしは聞き返してきた。
「いや、たかしは、自分から進んで拾ったりするやつじゃないじゃん。」
冷やかすように俺が言うと、
「は?ポイントが貯まるじゃん。」
と、当り前の様に答えた。
「ポイント?何それ。」
「え?知らないのか勇樹。ハピポ、ハッピーポイントの事じゃん。」
「何だよそのダサいネーミング。」
勇樹は笑って小馬鹿にした。
「マジで知らないの?ハピポ知らなかったらそれこそダサいぞ。」
たかしが言うにはスマホのアプリの1つらしく、善行、つまり、良い事をするとポイントが貯まるらしい。
そして、そのポイントに応じて願いが叶うというものだった。
「絶対嘘じゃん!俺を騙さそうとしてるだろ!」
大ウケしてる俺をよそに、近くにいたクラスメイトが
「え?マジで勇樹知らないの!?俺もそのアプリ入れてるけど、マジで凄いぞ?」
たかしもその言葉に頷く。
「だよな?俺も最初はどうやってカウントしてんだよって思ったけど、スマホの機能ってすげぇよな。」
いやいや、スマホにそんな機能無いって。
と、ツッコミを入れたいところだったが、二人とも嘘をついてるようにも見えない。
そもそも、たかしがそんな手の込んだ嘘をつける頭はしていない。
「ともかく、ハピポのアプリは入れておかないと普通に損だぞ。入れずに良い事する意味ないから。」
勇樹はたかし達に言われるがまま、アプリをダウンロードする事になった…。
「そもそも、ポイント貯まったら、どうやってその願いを叶えて貰うんだよ?」
勇樹が言う事は当然の疑問だった。
「簡単だよ、アプリを開いてお願いを入力してポイントがお願いに達してたら、叶うんだよ。」
たかしの説明はいまいちずれていたが、アプリを見ると入力欄がある。
「じゃあ、コーラが飲みたいって入力してみな?」
たかしが勇樹に入力を促した。
「…ポイントが足りないって表示されるぞ?」
「普通はポイントが足りないと、そう表示される。あとわずかなら、『もう少し』とか、『もうひと頑張り』とか『全然足りません』とかもあるぞ。」
たかしが偉そうに胸を張る。
「それじゃ、どう叶うのかわからないじゃん。」
勇樹が文句を言うと
「じゃあ、使いたくないけど、俺のポイントでやってやるよ。」
仕方が無いなぁと先輩面をするたかし、正直、鼻につきだした。
「『コーラが飲みたい』と、入力するぞ。」
5分経過。
「何も起きないじゃん。」
勇樹がここぞとばかりにたかしに文句を言った。
すると丁度教室に入ってきたたかしの隣の席のクラスメートが
「たかし、コーラ好きだよな?ジュース買ったら1本当たったからやるよ。」
「さんきゅー♪」
コーラを貰ったたかしが、ドヤッて勇樹を見る。
「…マジか。」
「これがハッピーポイントの力だよ!ハハハ!」
勝ち誇ったたかしの笑い声が、昼休み終了のベルと共に教室に響いた。
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