第3話

私は流れる景色をみながら、今までの思い出が浮かんでくる。


*私は高校生の頃にいじめられた。陰口なんて常にあったし、強く突き飛ばされたことなんて両手があっても数えられないぐらいあった。他にもいろいろやられた。何でこの人たちはこんな酷いことができるのだろうと日々思っていた。友達に助けられて、すり減っていた心が、少しずつ元に戻っていった。それでも陰口は続いていた。二年生になって、ある後輩を見かけ、その後輩が王子様にみえた。素敵な笑顔をみて眩しかった。その後輩の笑顔で傷ついていた心が少しやわらぎ、好きになっていった。少しだけ学校にいきたいと思うようになり、アプローチを続けてやっと付き合えた。その後輩が瀬尾君だった。瀬尾君は暗く息ができない闇の中から引っ張りだしてくれた。彼の優しさに触れた私は彼のそばに一生いたいと思った。瀬尾君がかけてくれた一つ一つの言葉が私を包み込んでくれた。涙が溢れて瀬尾君の顔が滲んでみえた。私には、家族と友達、そして優しい私だけの王子様である瀬尾君、瀬尾奏太しかいなかった。

今は、私と瀬尾君だけの未来をつくっている真っ最中だ。

私は心に深く負った傷を彼にケアしてもらい助けられた。そのおかげで今の私がいられる。

だから彼に触れているとき触れられているとき、安心する。瀬尾君の優しさに包み込まれている感じだから。


*そんなことを思っているとスマホが鳴り出した。

未菜ちゃんからの電話だった。

未菜ちゃんは、瀬尾君の同級生で地元の大学に通っている。瀬尾君の親しい友達で、瀬尾君経由で友達になり、今も仲よくしていて今でもたまに会っている。彼女はいつもテンションが高く、楽しい気持ちになる。

「みなちゃん、おはよう。どうしたの?」

「はるちゃん、おっはー。メリークリスマス。せおっちと仲よくやってるぅ」

未菜ちゃんはテンションが高くて、いつも通りだ。

「うん。今からデート。横浜赤レンガ倉庫にいくの」

「うらやまっしぃなー。じゃあ楽しんでねー、はるちゃん」

未菜ちゃんは元気よく言って、切った。

「くっきーがどうしたの、春香」

「瀬尾君と仲よくやってるか、聞いてきたの。みなちゃんはいつも通りだったよ」

「そうか」

瀬尾君は微笑みながら短い返事をして、元の顔に戻る。

私と瀬尾君がとても気に入っている曲が流れた。

私達は、その曲を聴きながら、高校生の頃の思い出を話し出す。


思い出に浸りながら。

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