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 最近、星野さんをストーキングしている男がいるらしい。


 もっとも彼女もそういうのは初めてじゃないらしく、その対策として、普段はできる限り地味な格好で野暮ったい伊達眼鏡をかけているんだそうだ。しかし、その男はどうもフォーラムで彼女を見初め、尾行して彼女の家を突き止めたようだ。郵便受けに手紙や指輪が入っていた事もあったという。


 警察に相談しても、大した実害がないので動けないとの事。駅から彼女のマンションまでは徒歩5分。その間も尾けられている気がしてならない。とは言えタクシーを使う距離じゃないし、自転車ではこの時期寒すぎる。


 そこで、俺にマンションまでボディガードをしてほしい、というのだ。警備員なら打ってつけですよね、と言われてしまった。確かにそれはそうだが……


 俺は少々落胆した。もっとロマンティックな話かと思ったのに……


 まあでも報酬として俺の大好物を週一でおごってくれるという。俺が某ファミレスのビッグパフェを挙げたら、吹き出しながらも彼女は快諾した。


 こうして俺は彼女のボディガードを務めることになった。もちろんパフェ以上に、彼女と一緒にいられることが俺には何よりの報酬だった。


 だが、その初日。


 二人きりで緊張してしまった俺は、自分から何も会話を切り出せなかった。


 そう。この性格のせいで面接でもまともに話せなくて、俺は就活にことごとく失敗したのだ。家族とか友人なら普通に話せるのだが……


 しかし、星野さんはそんな俺の様子に何かを察したのか、自ら色々話題をふってくれた。うう……いい人過ぎる……


 てっきり俺より年上かと思ってたが、彼女は俺の一つ下だった。趣味は夏は自転車ロードバイク、冬はスキー。意外にアウトドア派だった。

 そして彼女のマンションに到着し、別れ際……とうとう俺は、思い切って聞いてみた。


「あの……俺なんかと一緒にいるところ、彼氏さんに見られたら……ヤバくないですか?」


「あのね、矢島さん」星野さんが呆れ顔になる。「私に彼氏がいたら、そもそも矢島さんにこんなこと頼むと思います?」


「……!」


 マジですか!


「それじゃ矢島さん、今日はありがとうございました。お休みなさい」


「あ、ああ、お休みなさい」


 ぺこりと頭を下げ、星野さんが玄関に消えていく。それを見送りながら、俺は天にも昇る心地だった。


 星野さん、フリーなのか……


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