爆発まで、あと5分。
Phantom Cat
1
俺がこの6階建ての複合商業施設「フォーラム」で警備員として働き始めて、もう2年になる。ここはメインがファッション関係で、いろんなブランドのアパレルショップがどのフロアにも
正直、オシャレに縁のない俺は居心地悪くてしょうがないのだが、それでもこうして警備員の制服を着ていれば、存在が許されるようで安心できる。
そして、俺をこの職場に引き付けている、最大の理由。
3階レディスフロアの某高級ブランドショップ店員、
俺がここに来て1年ほど経ったある日、3階を巡回していて、えらく綺麗なお姉さんが新しく入った事に気が付いた。
思わず見とれてしまったが……こんな、大学院で
と、思っていたのだが……
ちょうど一週間前、帰りがけの電車の中で、いきなり俺は声をかけられた。
「あの、
「え?」
声の方に振り向くと、シンプルなコートに身を包み、黒縁眼鏡をかけ化粧っ気もあまり感じられない、見知らぬ女性がいた。
「ええと、どなたでしたっけ……?」
「あ、ごめんなさい。私、フォーラム3階で働いてる星野です。矢島さん、警備員されてますよね? お名前は名札で知りました」
「……ええっ!」
驚いた。だって、目の前にいるのは俺の知る星野さんと似ても似つかない、地味な雰囲気の女性なのだ。が……
確かにその顔立ちと髪型は星野さんのそれっぽい。ナチュラルメイクの彼女も決して悪くないな……
それはともかく。
「すみません……全然気づきませんで……」
「い、いえ、こちらこそいきなり声をかけてしまって……すみません……」
なんなんだ、この謝り合戦は……
「矢島さん、いつもこの電車で帰ってますよね。で、三ツ屋の駅で降りてますよね」
「ええ。良く知ってますね」
「時々お見かけしてたので。私も同じ駅です」
そうだったのか。気づかなかった。まあ、目の前の彼女は仕事場の姿とは全く別人だから、無理もないか。
「お
「ちょ、ちょっと待ってください。なんでそんなこと聞くんです?」
「あ、そうですよね……個人情報ですよね。すみません」謝りっぱなしの星野さんは、また一つ謝って続けた。「実はですね……」
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