第55話 先生、誤解なんです!終

 翌日、西尾先生は丹羽先生の処分について報告したらしく、夏休み前の今日、丹羽先生の姿はどこにもなかった。

 西尾先生によれば、大学には報告済みで、最悪退学もあり得るとのこと。

 教育者となる人が、裏ではいじめのようなことを率先してやっていたのだから、当然のことだ。

 それと美化委員については、西尾先生との話し合いの結果、今後は真っ当に活動するとのことで、今ある花壇は当番で回していくと、後日伊吹さんから聞かされた。

 特に丹羽先生の取り巻きだった生徒は推薦の話がなくなったとか。

 それについても文句を言ったようだけど、西尾先生のひと睨みで沈黙したとのこと。


「嵐、早く取りにこんか!」


 ボーッとしていた俺に西尾先生の怒号が飛ぶ。

 慌てて教団の前に立ち、通知表を受け取る。


「まったく、しっかりとしろ」

「す、すいません」

「だが……少しは頑張っているようだな」


 チラリと通知表を見れば、前年度より俺の評価が上がっている。


「これからもその姿勢を崩すな。平穏に過ごしたいのであればな」

「あ、ありがとございます」


 俺は軽い足取りで席に戻った。

 明日からはいよいよ夏休みだ。

 ということで、みんなと一緒にユヌブリーズで集まり、夏休みの計画を立てることに。


「んで、夏休みどこ行くかって話だったと思うんだけど……なんであんたら二人共全然予定空いてないのよ!」

「仕方ないだろ部活なんだからよ」

「夏のイベントが僕を待ってるから!」


 九十九と都和瑠の二人は中々予定が空いていないようだ。


「せっかくの夏休みだよ! 夏祭りは!? 海は!?」

「別に予定が全部埋まってるわけじゃねぇんだからさ。空いてる時に行けばいいだろ。そもそもお前は他に友人いるだから、そいつらと行けばいいだろ」

「私はこのメンバーでどこか行きたいのよ!」

「お、おぅ……反応に困る返答するなよ。動揺するから」

「まぁ、まぁ、そのためにこうして集まってるだから落ち着いて」


 ヒートアップする梨花さんをとりあえず落ち着かせる。


「梨花さん。私も同じ意見です。私も友人と夏休みを過ごしたことがあまりないので、できれば梨花さん達と一緒に色々行きたいです」

「純花〜、純花だけが私の味方だよ〜」


 純花さんに抱きつく梨花さん。

 本当に、少し前までは水と油の関係だと思っていたのに、当時では想像できないほど仲良くなってるな。

 いや、それ以上に俺の周りがこんなに賑やかになったことの方のほうが予想できないな。

 夏休みなんて、課題をやって、余った休日をだらだらと過ごすことくらいしかなかったから、こうして友人達と計画するこんなちょっとした時間でさえ、俺は十分に新鮮で充実している。

 明日から始まる夏休みはきっと、俺が経験したことのないイベントが盛りだくさんなのだろうと、思いながら、みんなで計画を立てるのだった。

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