第3話

【現場監督】

「急げ!急げ!敵はいつ攻めてくるか分からぬぞ!何としても完成させよ!」


ここはラトロワ王国領地内のミカロス城。ミカロス城が作られる前、この土地は名はミカロスといい、古くから軍事、交通、産業の要衝として発展した。そこからミカロス城を築き、城下町が作られた。ミカロス城の特徴は輪郭式で石垣を廻らした二重・三重の水堀による鉄壁の守りで、敵の侵入を防いできた。現在は周囲全長10kmの巨大な総構えを作っており、空堀と土塁と魔力障壁で城下町全体を囲む大工事をしているのである。スリザリー王国がラトロワ王国へ行く道はここしかなく、まさに前線基地である。更に城下には畑が作られており、籠城中でも食料生産が可能で、いつでも戦闘できる難攻不落の城なのである。国王陛下の発破をかけたことも相まって順調に進み、ついに完成させたのである。カエサルは完成した総構えを見て・・・・


【カエサル・ラトロワ】

「うむ、極めて壮大かつ堅固だ。これでスリザリー王国も易々とは攻め込めまい。」


カエサルは総構えの出来の良さに大変満足し、軍備を整えていた。一方のスリザリー王国ではオウキに成り済ました影武者が玉座に上り、家臣たちからお祝いを受けていた


【クレイム・ブルック】

「陛下、病の平癒、おめでとうございます!」


【ゴードン・ロイヤル】

「臣下一同、心よりお待ち申しておりました。」


【影武者】

「うむ、大儀である。」


臣下一同がまさか目の前にいるのは影武者とは知らず、いつも通り、臣下の礼を取っているのである。そして本題に入った。かねてより計画していたラトロワ征伐である。臣下一同は驚きを隠せなかった。母国とラトロワ王国の経済力と軍事力の差は歴然としており、正直言って勝ち目は薄かった


【貴族A】

「陛下、誠にラトロワ征伐を!」


【影武者】

「うむ。」


【貴族B】

「私は反対にございます!戦えば間違いなく我が国は負けます!」


【貴族たち】

「陛下、御考え直しのほどを!」


【クレイム・ブルック】

「では御一同に聞くが、黙って滅亡を待つ気であるか!」


クレイムが一喝すると貴族たちは沈黙を貫いた。そして大将軍であるゴードン・ロイヤルが口を開いた


【ゴードン・ロイヤル】

「もはやラトロワ王国との同盟は破談となり、我等に味方する国は一つもない、もはや我等に残された道はただ一つ、ラトロワ征伐しかない!」


【影武者】

「クレイム、ゴードン。」


【クレイム&ゴードン】

「はっ!」


【影武者】

「そなたらに外征及び内政を任せる。」


【クレイム&ゴードン】

「御意!」


【影武者】

「皆の者、二人に従い、ラトロワ征伐へと邁進せよ!」


【臣下一同】

「はっ!」


丞相のクレイムと大将軍のゴードンを主導にラトロワ征伐の軍を準備した。総勢10万を集め、ラトロワ方面へ行く道を大軍が通れるように整備をした。年貢も上がり、スリザリー王国の国民たちは戦々恐々としていた。できれば戦争は早く終わってほしい、家族が無事に帰ってきてほしいというのが願いである。準備が整い、閲兵式が行われた。大将軍ゴードンの指揮の下、将軍、兵士、兵器のパレードが大々的に行われた


【ゴードン・ロイヤル】

「いざ出陣!」


閲兵式が終わった後、スリザリー軍は出兵し目的地であるミカロス城へと向かう。スリザリー王国が挙兵したことを知ったカエサルはシメイ・エルサイムを大都督に任じ、総勢12万の大軍を与えた。ミカロス城に駐屯している3万の軍と合わせて15万の大軍となる


【カエサル・ラトロワ】

「シメイよ、賊軍スリザリー共を一掃せよ!」


【シメイ・エルサイム】

「必ずや!」


シメイは軍を率いて、全速力で駆け抜けた。スリザリー軍よりも先にミカロス城へ到着し、スリザリー軍を迎え撃つのである。果たして到着するのはゴードン率いるスリザリー軍か、それともシメイ率いるラトロワ軍か!


そのころ、ラトロワ王国ではシャルロットはある決断を下した


【シャルロット・ラトロワ】

「父上、母上、兄上、私は出家します。」


シャルロットの出家発言に驚く3人。3人は出家させまいと説得した


【カエサル・ラトロワ】

「シャルロット、気は確かか!」


【シャルロット・ラトロワ】

「はい、私の考えは変わりません。」


【ヤエ・ラトロワ】

「シャルロット、どうして出家などと!」


【シャルロット・ラトロワ】

「此度の戦争の原因を作ったのは私でございます。」


【ウルスラ・ラトロワ】

「そなたは悪くはない!悪いのはグレイムだ!出家は考え直せ!」


【シャルロット・ラトロワ】

「父上、母上、兄上、私は罪深き女にございます。私の決断で両国が決別し、戦争へと拡大しました。戦争が起これば敵味方問わず多くの死者を出します。その中には身内の帰りを待つ家族が含まれています。私の罪は未来永劫消えることはないでしょう。私は二度と結婚せず、戦争で亡くなる方々の冥福を祈りたいのです。」


シャルロットの固い決意に3人は根負けに出家を認めたのである。その後のシャルロット・ラトロワは歴史の表舞台には出ず、結婚はせず生涯独身を貫き、敵味方問わず戦争で犠牲になった者たちの供養にいそしむのである





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