第2話
ここはラトロワ王国、シャルロットの母国である。その母国に5年ぶりに帰国したのである。王宮の正門前に現れたシャルロットとニーマは久しぶりの王宮に里心が芽生えた
【ニーマ・ラドリー】
「姫様、到着しました。懐かしき故郷です!」
【シャルロット・ラトロワ】
「えぇ、懐かしいわ。」
私たちが突然現れたことで門番たちが驚き、事情を話すと王宮へ案内された。シャルロットの突然の帰国に皆はビックリしており、慌ててシャルロットに臣下の礼を取る。そして父のいる王室へ辿り着いた。先にニーマが入り、許可を得た後に入室した。そこには父と母と兄、つまりラトロワ王国のカエサル・ラトロワ国王陛下とヤエ・ラトロワ王妃陛下とウルスラ・ラトロワ王太子殿下に拝謁した
【シャルロット・ラトロワ】
「お久しゅうございます、父上、母上、兄上。」
【カエサル・ラトロワ】
「うむ、よう戻ってきた。」
【ヤエ・ラトロワ】
「シャルロット、一体何があったの?」
【ウルスラ・ラトロワ】
「まさか、何かされたのか!シャルロット!」
【ニーマ・ラドリー】
「畏れながら仔細は私がご説明いたします。」
ニーマの報告を聞いたカエサルは顔を真っ赤にさせ、ヤエは無表情だが持っている扇子を折り曲げ、ウルスラは憤怒の形相だった。グレイムが愛娘(愛妹)を側妃にしようとしたこと、暴力を振るったこと、そして国王の許可を得たことに、腸が煮えくり返るほど腹が立ったのである
【カエサル・ラトロワ】
「こんなことだったら、攻め滅ぼすべきだったわ!」
【ヤエ・ラトロワ】
「娘を側妃にするとは、我が国も舐められたものね。」
【ウルスラ・ラトロワ】
「父上!今すぐにでも兵を差し向けましょう!」
【カエサル・ラトロワ】
「まて、まずは稀代の愚王と愚王太子の弾劾状を国内外に広める!誰かある!」
【側近】
「ここにおります。」
【カエサル・ラトロワ】
「すぐに弾劾状を書け!国内外にスリザリー王国の国王と王太子の悪行を知らせるのだ!」
【側近】
「御意!」
【カエサル・ラトロワ】
「更にミカロス城の修築を急ぐんだ!いつでも迎え撃つ準備をせよ!」
カエサルの命令で国内外に多くの弾劾状が広められた。内容はスリザリー王国の王太子がラトロワ王国の第1王女を側妃に降格しようとしたこと、暴行を働いたこと、国王も側妃を了承したことや国交を断絶等を手厳しく、辛辣に描いたのである。更にミカロス城の修築を急いだ。弾劾状を見た国々と民たちはスリザリー王国に対し、不信感を抱き、国との交流を避け、スリザリー王国に行くことも憚るようになった。この時点でスリザリー王国の評判が地に落ちたのである。そのころ、問題を起こしたスリザリー王国では・・・・
【オウキ・スリザリー】
「この大馬鹿者!何ということをしてくれたんだ!」
スリザリー王国の国王であるオウキ・スリザリーは療養中だったが事の仔細を聞き、何とか起き上がり、目の前にいるグレイム・スリザリーを叱りつけていた
【オウキ・スリザリー】
「貴様はシャルロット嬢に嘘をついただけではなく、暴力を振るった、あろうことか、ワシの名を使ったことだ!ワシは苦心をしてラトロワ王国と同盟を結んだのに、貴様がそれを潰したんだ!」
【グレイム・スリザリー】
「父上、申し訳ございませぬ!」
【オウキ・スリザリー】
「お前たちはこの愚か者にどういう教育を施したのだ!」
【マサヒデ&ジュウザ】
「申し訳ありません!」
様子を見ていた貴族と将軍たちは愚挙を起こしたグレイムに冷たく蔑んだ目で見ており、守役のマサヒデと側近のジュウザは青ざめた顔で震えながら、国王の叱責を受けていた
【オウキ・スリザリー】
「グレイムよ。こうなったら、お前の首をラトロワ王国に届けるしかあるまい。」
【グレイム・スリザリー】
「ち、父上、お、お待ちを。」
【オウキ・スリザリー】
「国のためだ!誰かこやつの首を斬れ!」
【グレイム・スリザリー】
「父上、どうかお許しを!お許しを!」
衛兵たちが現れ、グレイムを連れていこうとする。グレイムは必死で詫びたが聞き入れず、刑場にて斬首の刑に処されたのである。わずか21歳の若さであった。グレイムの首は塩漬けにされ、そのままラトロワ王国へ輸送された
【オウキ・スリザリー】
「お前たちには自害を命じる!」
【マサヒデ&ジュウザ】
「は、ははっ!」
マサヒデとジュウザは此度の責任を取り、即日自害させられた。2人の遺体は名もなき無縁仏に埋葬されたのである
【オウキ・スリザリー】
「グレイム亡きあと、王太子は第2王子のヨハネ・スリザリーが継ぐ!」
ヨハネ・スリザリー、この時、12歳。12歳の若さで急遽、王太子に任命されたが、状況は最悪、おまけに同盟国であるラトロワ王国は虎視眈々と母国を狙っている、不幸尽くしである
【オウキ・スリザリー】
「全くついてな・・・ごほっ!ごほっ!」
【貴族&将軍たち】
「陛下!」
無理して動いたため、オウキは更に体調を崩し、再び療養に努めた。そしてグレイムの生首は2週間後にラトロワ王国に届けられたのである。すぐに首実検が行われ、ニーマ・ラドリーが確信した
【ニーマ・ラドリー】
「はい、間違いなく、グレイム王太子殿下です。」
首がグレイムのものだと確認すると、カエサルはある命を下した
【カエサル・ラトロワ】
「香木で作った木彫りの体を首とともに手厚く弔ってやれ!」
カエサルは自らの度量の広さを知らしめるために、上等な香木で木彫りの体を作り、出来上がった後に首とともに棺に入れて、諸侯の礼を持って、手厚く葬ったのである。このことは国内外に広められ、万人がカエサルの徳を称える一方で、スリザリー王国の評判が奈落の底にまで落ちたのである。ちなみにグレイムの葬儀にはシャルロットは参加していない。カエサルの命で参加不要とされ、シャルロット自身もかつての婚約者の顔を見たくなかったので、葬儀には参加しなかった。そのことを知ったオウキは・・・・
【オウキ・スリザリー】
「ワシへの当てつけか、ゴホッ!ゴホッ!」
【ヨハネ・スリザリー】
「父上!」
オウキの容体は益々悪化しており、床から起き上がれないほどである。オウキは我が身の命が尽きることを確信し、丞相のクレイム・ブルック、大将軍のゴードン・ロイヤルを呼び出した
【ゴードン・ロイヤル】
「お召しにより参上いたしました。」
【クレイム・ブルック】
「陛下、お呼びでございましょうか?」
【オウキ・スリザリー】
「うむ、ヨハネ、ゴードン、クレイムよ、ワシはもうすぐで死ぬ。」
オウキの発言に3人は仰天した
【ヨハネ・スリザリー】
「父上、何を弱気に!」
【オウキ・スリザリー】
「自分の体は自分がよく知っている、ヨハネ、ゴードン、クレイムよ。ワシの死は3年隠せ。」
【クレイム・ブルック】
「ラトロワ王国に悟られないようにするためですか?」
【オウキ・スリザリー】
「そうだ、ワシが死んだことを彼の国に悟られてはならぬ。」
【ゴードン・ロイヤル】
「畏れながら臣下たちの目もございます、陛下が現れぬと皆が不安になります。」
【オウキ・スリザリー】
「心配いらぬ・・・・参れ。」
オウキの命で現れたのはオウキに瓜二つの影武者が現れた。影武者の顔を見た3人は驚き、マジマジと見た
【ヨハネ・スリザリー】
「ち、父上にそっくりだ。」
【オウキ・スリザリー】
「万が一のために用意したんだ、この影武者をワシの代わりで動く。よいな。」
【影武者】
「御意!」
声までそっくりで、3人は益々驚いた。これだったらオウキの死を3年隠し通すことができるかもしれない
【オウキ・スリザリー】
「それとワシの死後は葬儀は無用だ、密かに埋葬するんだ。ゴホッ!更に我が国の総力を挙げて、ラトロワ征伐を進めるのだ。」
オウキのラトロワ討伐にゴードンとクレイムは苦言を呈した
【クレイム・ブルック】
「畏れながら、ラトロワ王国の国力は我が国の10倍はあります。とてもじゃありませんが太刀打ちできません。」
【ゴードン・ロイヤル】
「丞相の仰る通りです、我が国が総力をあげてもせいぜい20万くらい、ラトロワ王国は30万以上の軍を出します。おまけにミカロス城は天然の要害で守られています。とても勝ち目はありません。」
【オウキ・スリザリー】
「分かっておる、あくまでパフォーマンスだ、我が国が国力が健在であることを知れば、向こうが根負けして和睦に持ち込むだろう、その時こそ同盟を復活させる!」
オウキは無謀と知りつつも、ラトロワ王国に戦を仕掛けるのは、あくまでパフォーマンスに近く、何回もラトロワ征伐を繰り返すことで、ラトロワ王国が根負けし和睦に持ち込む腹である
【オウキ・スリザリー】
「ヨハネよ、この影武者をワシと思え、決して悟られてはならぬぞ。」
【ヨハネ・スリザリー】
「はい、父上。」
【オウキ・スリザリー】
「この事は我等5人だけの秘密だ、外には絶対に漏らすな。」
【クレイム&ゴードン&影武者】
「御意!」
【オウキ・スリザリー】
「うむ、皆の者、さらばじゃ。」
オウキは力尽き、眠るように息を引き取った。遺言通りに葬儀はせず密かに埋葬されオウキの死は3年隠し通すのであった。後に影武者がオウキ・スリザリーとして生き、ラトロワ征伐の準備が刻々と進められたのである。ここから本格的にスリザリー王国とラトロワ王国の戦争が始まるのであった
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