同盟国同士の婚約破棄~再来~
マキシム
第1話
50年前に2つの国が戦争をした。きっかけは国の王子が同盟国から嫁いだ姫君を婚約破棄の上、断罪したことである。問題を起こした国の王は戦争を避けるべく和平を望んだが、王の実弟のクーデターによって国を追われ、とうとう戦争へと発展した。王の実弟の指揮の下、快進撃に進んだが王の実弟の失策により窮地に追い込まれ、軍を見捨てて、敵前逃亡した。その後、国は降伏し、王の実弟も死亡した。しかし歴史は繰り返すのである
ここはスリザリー王国、王宮の一室にて二人の男女が話し合っていた。一人はスリザリー王国の王太子のグレイム・スリザリー(21歳)、もう一人は同盟国であるラトロワ王国の第1王女であるシャルロット・ラトロワ(17歳)である
【グレイム・スリザリー】
「シャルロット、大事な話があるんだ。」
【シャルロット・ラトロワ】
「何でしょうか、殿下?」
【グレイム・スリザリー】
「実は・・・・思い人ができたんだ!」
【シャルロット・ラトロワ】
「はい?」
突然のグレイムの浮気発言、複雑な思いを抱きつつ、冷静に振る舞うシャルロット
【シャルロット・ラトロワ】
「まあ、殿下の御望みとあれば止むをえません、側妃は認めましょう。」
【グレイム・スリザリー】
「いや、その者を正妃にしたい!」
【シャルロット・ラトロワ】
「はい?」
殿下の想い人を正妃に?シャルロットは耳を疑った。自分は正妃なのに?
【シャルロット・ラトロワ】
「あの、殿下、私は正妃ですが?」
【グレイム・スリザリー】
「分かってる、だから一旦、婚約解消して、君を側妃に迎える!」
この男は何をほざくんだ。私を側妃に?仮にも同盟国の第1王女だぞ、気は確かか!
【シャルロット・ラトロワ】
「ははは、殿下、お戯れが過ぎます。」
【グレイム・スリザリー】
「戯れではない!本気だ!父上も了承済みだ!」
はい、国王陛下も了承済みだと、確か、陛下は体調が悪く、療養中のはず・・・・
【シャルロット・ラトロワ】
「殿下、陛下に会わせてください、事の真意を確かめます。」
【グレイム・スリザリー】
「父上は今は療養中だ。」
【シャルロット・ラトロワ】
「これは同盟国同士の大事な話なんです。」
【グレイム・スリザリー】
「ならん!」
グレイムはシャルロットの頬にビンタした。乾いた音が部屋中の響き渡った。シャルロットは茫然とした表情でグレイムを見つめた。そんなシャルロットにグレイムは・・・・
【グレイム・スリザリー】
「女が口出すことではない!」
グレイムの差別発言にシャルロットの心は一瞬にして冷めていた。ああ、この人に何を言っても無駄だ、国同士の婚約はなかったことにしていると・・・・
【シャルロット・ラトロワ】
「少し、頭を冷やしてきます。」
【グレイム・スリザリー】
「ああ、そうしろ!」
シャルロットが部屋を退出した後、王太子妃専用の部屋へと戻った。そして側近のニーマ・ラドリーに王太子との出来事を話した
【ニーマ・ラドリー】
「それは誠ですか!姫様!」
【シャルロット・ラトロワ】
「ええ、私と婚約解消をした後にその思い人を正妃に、私を側妃にするわ、どうやら陛下もご了承とのことだわ。」
【ニーマ・ラドリー】
「陛下は確か、療養中のはずでは・・・・」
【シャルロット・ラトロワ】
「ええ、恐らくは殿下の独断か、誰かがそそのかしたとしか思えないわ。」
シャルロットはそういうと、ニーマはニヤリと笑いだし、シャルロットに密命を話し始めた
【ニーマ・ラドリー】
「姫様、これは好機にございます。」
【シャルロット・ラトロワ】
「好機ですって?」
【ニーマ・ラドリー】
「はい、実は陛下より内々に密命がありました。もしスリザリー王国に何かしらの不都合があれば、すぐに帰国し、後にスリザリー王国を我が国の支配下に治めることを・・・・」
ニーマの発言にシャルロットは驚いた。父からそのような密命を下していたとは知らなかったのだ
【シャルロット・ラトロワ】
「ニーマ、それは本当なの。」
【ニーマ・ラドリー】
「はい、陛下はかねてからこの国を併合しようと画策しておりました。しかしスリザリー王国が同盟を打診されました。我が国が強大ゆえに戦争を避けたのが狙いです、陛下も国を乗っ取るのに良き方策と思い、この同盟を受諾されました。姫様が王子をご出産され、その王子がやがては王太子、そして国王になれば、間接的にラトロワ王家の血筋をつぐ国王が誕生いたします。もし不都合があれば私が転移魔法にて姫様をお連れし、そこからスリザリー王国に戦争を仕掛けることができます。」
【シャルロット・ラトロワ】
「そうだったの。」
【ニーマ・ラドリー】
「それでいかがなさいますか?側妃としてこの国に留まるか、母国へ帰られますか?」
【シャルロット・ラトロワ】
「国へ帰ります。」
ニーマの出した選択肢にシャルロットは迷わず母国への帰国を選んだ。自分は仮にもこの国の王太子に嫁いだが、あくまで正妃としてである。どこの誰かも分からない思い人の下に置かれるのは王女としてのプライドが許さなかった、それにグレイムの知られざる一面を知り、シャルロットは幻滅した。もはやこの国に未練はない
【ニーマ・ラドリー】
「よくぞ御決断をされました。では参りましょう。」
【シャルロット・ラトロワ】
「供の者たちはいかがするのです?」
【ニーマ・ラドリー】
「ご安心を、後から追いかけます。」
【シャルロット・ラトロワ】
「そう、その前に置き手紙を残します。」
シャルロットは手紙を書き、テーブルの上に置いた。そして王太子妃専用の指輪を置いていった
【ニーマ・ラドリー】
「では姫様、参りましょう!」
【シャルロット・ラトロワ】
「えぇ・・・・さようなら。」
シャルロットは別れの挨拶を述べ、ニーマの唱える転移魔法によって姿形を消したのである。そのころ、グレイム・スリザリーは守役のマサヒデ・ヒロテと側近のジュウザ・ヨークとともにシャルロットのいた王太子妃の部屋へと向かっていた
【グレイム・スリザリー】
「はぁ~、やってしまった。」
【マサヒデ・ヒロテ】
「全く何ということをしてくれたのですか!おまけに暴力まで振るうなんて!」
守役のマサヒデはグレイムの愚挙に驚き、すぐさまシャルロットの下へ謝罪に行くのであった
【ジュウザ・ヨーク】
「なんでそんな嘘を言ったのですか!しかも陛下の名を使って!」
【グレイム・スリザリー】
「確かめたかったんだ!私を愛しているかどうかを!」
【マサヒデ・ヒロデ】
「何を仰るのですか、下手をすれば国際問題に発展するのですぞ!」
【グレイム・スリザリー】
「うう。」
実はグレイムには思い人はおらずシャルロットが自分を愛しているかどうかを図るための虚言だったのだ。もちろん思い人を正妃、シャルロットを側妃にすることも真っ赤な偽りである。守役と側近はグレイムの愚挙に頭を痛めながら、謝罪の言葉を考えていたのである。そして王太子妃の部屋の前に着いた
【マサヒデ・ヒロテ】
「殿下、よろしいですね?誠心誠意、謝罪するのですよ。」
【グレイム・スリザリー】
「あ、あぁ。」
【ジュウザ・ヨーク】
「では。」
ジュウザはドアをノックしたが返事がなかった
【ジュウザ・ヨーク】
「留守ですかね?」
【グレイム・スリザリー】
「中に入ろう。」
【マサヒデ・ヒロテ】
「はい?」
【グレイム・スリザリー】
「もしかしたら居留守を使っているのかも知れない!」
【マサヒデ・ヒロテ】
「殿下、お待ちを!」
守役と側近の制止を振り切り、部屋に入ったグレイム、部屋の中を見渡したが、誰もいなかった。ふとグレイムはテーブルに目を向けると手紙と王太子妃専用の指輪が置かれていた
【グレイム・スリザリー】
「ま、まさか!」
グレイムはすぐに手紙を取り上げ、内容を確認した
【グレイム殿下へ】
「殿下、私は貴方様に愛想がつきました。私にも第1王女としてのプライドがあります。どこの誰かも分からぬ思い人の下に置かれるのは甚だ心外です。どうか思い人とともにお幸せに。」
置き手紙を見たグレイムは頭が真っ白になり、手紙を落としてしまった。守役と側近が置き手紙を見ると、仰天した
【マサヒデ・ヒロテ】
「殿下!どうしてくれるのですか!」
【ジュウザ・ヨーク】
「殿下!何か仰ってください!」
守役と側近の声はグレイムの耳には届かず、立ち尽くすだけであった
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