第39話『スラムの奴ら、後俺ら』
裏町の一角で、二人の男達が話し合っていた。そんな場所に一人の男がやってきた。その男は四島だったモノを引きずり、彼らの元に投げつけて来た。肉隗になったそれを見た二人はそれが死体だとは気が付かなかった。
「……」
「おぉ大王具足、お前取り立てて来たのか……ンで死体は?」
肉隗を投げつけられ、ようやく彼がやって来た事に気が付いたのか、話しかける男。死体はと言う疑問には、地面を指さしこれが死体だと見せつける。売れる場所全て売って、ようやく借金を返せた残り香がこれである。
「……」
何も喋らない無言の圧力である。流石にそれを何度も見る気は無いのでちょっと文句を吐く。
「あのさ。喋って?」
「……」
更に顔を近づける大王具足虫。常にスーツを着たままな上、無口で恐ろしい程威圧感があるので正直怖い。
「分かった分かったよ!止めろ!その顔止めろ!」
「……」
と言う訳で何も喋らない具足を無視してボスの方に話しかける男。それは最近の街の様子と、それと問題になっているある事について話していた。そのある事と言うのがボスの姿を嗅ぎまわっている奴がいるという事であった。
「さて、どうもお前の事を嗅ぎまわってるやつがいるらしいぜ?」
「……」
「あぁお前じゃない、ボスさ」
具足がその言葉に反応するが、お前じゃねぇと座らせる。ボスは何故自分が追われているのかさっぱりと言うような表情であった。部下の男はその理由を知らないので適当に答える。
「……」
「なぜかって?さぁな?お前さんが何かやらかしたんでしょ。昔」
具足は自分に関係ないと理解すると、完全に興味を失ったように肉隗をべしべし叩いている。そんな彼を無視して二人はその探している奴をどうするかを話していく。
「……」
「さて……ここに来るってんなら歓迎しなきゃねぇ……!」
結論から言えば、雷は言われ無きリベンジを勝手に買われることになったのであった。とまぁそれとは別に、憐と雷は自分の家に向かった。当然であるがスーツは既に全壊しており、直さなければどうしようもない状態にあった。それもそうだろう。と言う訳で外に出れたのでさっさと機体を直しに行く憐であった。
「では機体を直しに行きます」
「……そういや跡形もなくぶっ壊れてたな」
雷は革命があるから大丈夫では?と思ったが、憐はそれでは駄目だと判断したようで、ちゃんとゴリアテと革命の二つを組み合わせた機体を作ろうと考えていた。そして単純に革命自体が元々そんなに使いこなせるような物ではないと判断していたのだ。
「まぁ一応革命があるから問題ねぇんだが、アレもチューンアップしないと使いこなせないと思うしな。と言う訳で行くのは三日後にしようと思う」
別にいつ行こうが問題ないと判断したが、太陽はどうするんだと疑問に思った。その理由だが、そりゃあれだけの殺意があったのに、わざわざ待つか?と思ったからだ。今すぐ殺しに行きたいはずだろう。正直自分の立場だったのならそうしている。
「それは問題ねぇが……太陽はどうする」
「……では一足お先に行ってくるとしよう。そして奴を倒せるのであれば、先に始末しておこう」
やはり先に行く用であった。そのまま太陽は先に行く。裏町に行くルートは三つあり、その中の一つを選んだ。それは直接行くルート。まぁ要は正規ルートと言う奴であった。二人がそれぞれの場所に行ってしまったので、雷はどこに行くべきかを考えていた。
「……そうか。じゃあ俺らは……と言うか俺はどうするかなぁ……?」
そんな感じで考えている雷、とそこに少女がやってくる。彼女は雷を見つけると唐突に話しかけて来た。本当に唐突に話しかけて来たのだ。困惑もするだろう。
「やぁ君、雷くんだね?」
「……あんたは?」
すると彼女は自分の事を紹介していないと思いだしたのか、自己紹介を始める。
「僕は『エクスラ』。君が使ってる救急治療薬の製造主だよ」
雷が普段使っている治療薬がある。そもそも雷は体を酷使する戦闘をしまくる。体がボロボロになり、血も少なくなる。とここで役に立つのが治療薬な訳である。とりあえずこれを付ければ大体何とかなるので、重宝している。それの開発者が目の前にいるのだ。
「……えぇ……個人で作ってたのか?」
「いやそう言う訳でもないけど……ともかく僕はね、君にスポンサー契約を結びに来たんだよ」
「……はぁ……」
正直意図がよくわからなかったが、別に手伝ってくれるなら文句はない。しかし意図が分からないのだ。他の奴と契約するのであればまだしも、自分一人の契約である。何か相手にメリットがあるのだろうか?と思った。
「正直君ってさ、結構体張るじゃん?という事は怪我もするよね。……つまり回復薬が必要になる訳だ!と言う訳で僕と契約してくれれば一戦闘につきこの試作品……じゃなかった、治療薬を使えるようにしてあげるよ!」
正直今試作品とか言う不穏な単語が現れた。しかし実際治療薬は馬鹿にならない。金がかかる。それをどうにか出来るというのなら正直どうにかしたい。願ってもいないが叶ってはいる。
「……まぁいいだろう、これ俺らの名刺な」
最近憐が作った名刺を渡す雷。それを受け取ると、エクスラは雷に意気揚々と話しかけて来た。
「ほうほう……じゃあこれが僕の名刺ね!今度電話かけてきてね!」
そして彼女が名刺を差し出すと、そのまま彼女はどこかに行ってしまう。正直かなり早くよくわからない会話を終えたので、今度電話をかける事にした雷であった。そのまま町を歩く雷。
「……まぁ今度かけてみますか……」
そして憐はと言うと、なぜか彼の元に猫と犬がやってくる。なぜやって来たのかは知らないが、特に入って悪いわけも無いので適当にもてなすことにした。
「やぁ憐、久しぶり」
「……どうも……」
「あぁ猫と犬じゃん、何しに来たの?」
二人に何をしに来たのかと聞くと、以前の戦いを見てやって来たようであった。それもそうだろう。元々試すためにあの大会に参加させたのだから。
「前の戦い見させてもらったよ。……やはり強いな」
正直強いとは理解していた。とは言え優勝できなければ意味がない。優勝以外価値のない事だと昔思っていた彼であるからこそ、優勝したことに一番喜んでいた。
「まぁね。……んで、何の用だ?」
「……今回の一件で、お前たちを信用することにした」
憐はたかが一回優勝した程度で信用していいのかと疑問に思った。それもそうだろう。前まで信用できないと言っていたのに、これで勝ったら信用すると言ったのである。これには流石に憐も引いている。
「……本当にいいのか?こんなんで」
「あぁ。それに犬も君が気に入ったようだし」
それでいいのかと思ったが、そう言う事らしい。まぁ多少は信じて貰えているのだろう。そう判断した訳であった。
「……ま、それならそれでいい。……さて、犬。お前はこの機体をどう思う?」
とここで犬に話しかける憐。彼女も機体を作っている手前、この機体がどれだけの物か理解していた。元々人が着るように出来ていない、正直スーツと呼ぶには惜しすぎる物であった。そんな現代のオーパーツが目の前にあるのだ。
「えーっとですね……かなりピーキーな機体だと思います……」
「だよな。実際かなりグレードダウンさせてようやっと使うことが出来るんだからな。普通に使えるようにするのなら……もっとグレードダウンさせる必要があるだろう……」
「そうですね……ですが機体その物を変えてしまってはダメです。……どうにかできますかね?」
「多分なぁ……しかし厄介なことにな、この機体はまぁ面倒なんだよ、ほら速さ特化だから……」
「そうですね……しかし……」
二人が専門的な話を始めてしまった。猫には一つも分からない。考える事と聞くことを止め、猫は雷を探すことにした。二人は多分放っておいても大丈夫だろうと判断した。
「……うーん分からん。雷はどこに行ったんだか」
そして猫も街に繰り出すのであった。
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