第24話『△?Δ?』


一回戦少し前、雷は憐にお前の父親に会ったと言った。当然だが驚く憐。


「アレとあったのか!?」


本気で怒りの表情を隠すことなく憐に話しかける雷。それもそうだろう。初大会であるのに八百長をしろと言ってきたのだ。そんな事に頭を下げる気はさらさらない。


「八百長をしろって言ってきやがったよアイツ」


「マジかよ……まぁ俺らがする訳もないしな。……んでこれからどうする?」


「とりあえずその八百長はしない。……とは言えあの野郎に見せつけてやるのよ、俺の相棒は……強いってな」


という訳で一回戦はわざと八百長に乗ることにした二人。それは機体を着ずに戦闘しろという物であった。普通であれば確かに無理な話であるが、これは雷の話である。


「了解!」


そして彼らは選手入場をする。他の選手が集まり、色々な奴が集まってくる。ナレーター達も大興奮であった。


『さぁ始まりました!第十二回オメガ大会です!』


とナレーションするのは、前回雷が出場したトーナメントでナレーションをしていた二人であった。今回は彼ら以外にも色々といるようであったが、とりあえず四ブロックは彼らが主となって担当するようであった。


『今回は猫選手が出なかったり、あのジャック選手をぶっ飛ばした新人の雷選手など、様々な選手がいますね。他のナレーター達も大盛り上がりですよ』


『そうですね!私達は……確か第四ブロックでしたか?』


『そうです。総当たり戦になりますので、皆さまお好きな選手の席に向かうと良いでしょう!さぁそれでは始まりますよ!』


遂に一回戦が始まろうとしていた。憐はこんなくだらないことに巻き込んでしまい申し訳ないというように謝っていた。正直父親が勝手に関わって来たのは想定外であり、こんなふざけた戦いをさせるのを気にしていた。しかし雷はこれを準備運動程度にしか思っておらず、大丈夫だと憐に言うのであった。


「……何、父親あのカスの事は気にするな。全員ぶちのめすくらいの気兼ねで行け!」


「おう!」


そして雷は走っていく。中にはいっぱいの観客と、目の前には今回の敵である三人が立っていた。雷の試合を見に来ている奴は結構多く、それ故に父親も八百長をしろと言ったのである、自社製品で今注目を浴びている雷を倒せれば、そりゃ有名になるだろうからである。


『さぁ始まりました一回戦!しかし今回やはりと言いますか、雷選手の所に座っている人が多いですね……』


『まぁジャック選手を倒した選手ですからね。誰でも気にはなるでしょう』


『っと、ちょっと待ってください?!雷選手スーツを着ていません!これはどういうことなのでしょうか?』


とここで誰もが気が付く。雷がスーツを着ていない事に。それに驚くが、男のナレーターはこれをこう解釈した。


『お前らなんか素手で十分というパフォーマンスでしょうか?』


観客達も最初はちょっとザワついていたが、この解説によって凄まじい煽り方をすると逆にヒートアップする。そして相手の三人組は、雷を見ると話しかけて来た。


「よぉ……久しぶりだなぁ!」


そう言う雷はどこかで出会った事があるなと考え、そして思い出す。


「……あ!お前らあの……」


「そう!」


「三角兄弟!」


三人はずっこける。明らかに間違えていたので訂正しながらも間合いを取っていく。


「違う!デルタ!アレデルタって言うの!」


「ていうかお前ら三人じゃん、ズルじゃん」


これはルール的にどうなの?と思う雷であるが、デルタ三人衆は、これは別にルール的には大丈夫だといい、そしてなぜ大丈夫なのかを話していく。


「ズルじゃねーよ!三人で参加してるからルール的には問題ねーんだよ!」


それを聞いた雷。ナチュラルに考え、そして煽っていく。


「……それって三人いなきゃ一人にも勝てないって意味?」


正直観客もそれは気になっていたが、目の前でそれを言うのかと困惑してしまう。煽り耐性ゼロの鉄骨使いが即座に攻撃を仕掛けてくる。


「は?殺すわ……」


それを避け、次に来るナイフによる接近攻撃もひらりとかわし、更に更に銃弾もあっさりと避けて見せる。痺れを切らした鉄骨が雷に更に接近して攻撃しようとするが、そんな思い物を持って戦える訳もなく、あえなくカウンターを食らってしまう。


「オラ死ねよ!」


「……破壊『表』」


彼の手がスーツに触れた瞬間、はじけ飛ぶスーツ。それを見ていた他二人は何が起こったのかと判断できない様子であった。逆に観客達はこれに大盛り上がり。何せ素手で破壊してのけたのである。


「は?」


『あーっと!素手でぶっ壊れました!あり得ますか素手ですよ!?』


『いえ、実は素手で壊すことも出来なくは無いのです。……しかしこれほどまでとは……』


あまりにも衝撃的な光景に一瞬身を引く物の、それでも何とか気持ちを落ち着けて雷に攻撃しようとするナイフ。


「この野郎よくも弟を!」


「……一転、『裏』」


今度は裏拳の応用で出した技。それによってナイフ使いのナイフはぶっ壊れ、使い物にならなくなってしまう。


「何だぁ!?」


『ナイフがへし折れました!』


『力……?いや技でしょうか……』


そしてそれに驚いている間に顔を踏んずけて奥にいる銃を持っている奴を殴り倒す。パーツをひたすら破壊し、そして二人目も崩壊判定を食らった後で地面に倒しておく。


「ヘボッ!」


「これで二人目」


最後に残ったナイフ持ちが素手で襲い掛かってくる。後ろから飛んできたナイフに対して、その腕を掴む。


「この野郎調子に乗るんじゃぁねぇ!」


「……あばよ」

そして全体重をかけると、地面に叩き付ける。更に顔面を打ちぬくような一撃を叩き込まれ、しばらくピクピクと痙攣した後、動かなくなってしまった。一応死んではいないようである。流石に殺したわけではない。ナレーターも観客達もこの結果には大盛り上がりである。


『雷選手!何と無傷で三人を倒して見せました!』


『しかもスーツを着ずにですからね……一体何があったのでしょうか』


『何はともあれ一回戦!雷選手の勝利です!』


そしてその様子を見ていた父親は、深いため息をつきながら、もう見る価値は無いと言わんばかりに会場から出ていこうとする。


「……何をしているあいつら……所詮チンピラに頼んでは駄目か」


後であの三人を始末しておかなければならないと判断し、部下に始末要請を出した後、怪訝はさっさと帰るのであった。一方の雷と憐はハイタッチをしていた。試合で勝ったこと、そして強さを見せつけたという事。それによるものであった。


「やったな雷!」


「勝ったぜ憐!」


「しかし……三角じゃなくてΔとはなぁ……まぁアレ文字で書かれるとよくわからねぇし……そう言うもんだな!」


そして第二回戦に向けて、雷は気合を入れなおそうとするのであった。


「とりあえず次の戦いに向けて気合を入れてくるわ」


次の相手は、以前に絡んできたあの男であった。



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