第17話「実質デート回でしょこれ」


色々あった彼らであるが、家に帰って寝た彼らは機体作りの為に色々とやっていた。しかし雷はほとんどやることがないのでちょっと飽きていた。そんな中憐に対して質問をしていく雷。


「さてさて……ぶっ壊れた機体、これどうするの?」


「残ってるパーツが足しかねぇし……まぁいい、これも使う。んでお前はこれから何かあるのか?」


何かあるかと言われたが、雷はそれ以前に特にやる事が何もないので無いと答えた。はっきり言って雷は何も分からないのである、この街のことも、他に何があるのかも。


「無いよ。ほら機体はアレだし、と言うか俺この街に関して何も知らないし……」


「よし、なら街を散歩にでも行ってきたらどうだ?お使いも頼む」


散歩するということ自体は問題ないと判断し、ついでにお使いもする事にした。要件を聞きながら散歩の準備を進めていく雷。指定された物はアイスであった。


「何?」


「アイス。チョコミントでね」


「あいあーい」


それを適当に流しつつ、金を持って適当にふらつく雷。その途中雷はある看板を見つける。それはGGのスーツを販売している会社の看板で、その中に憐が言っていたあの父親の姿があった。


「しかし……どこを見てもGGの宣伝ばっかりだな。世界的に有名って言ってもここまでかぁ……?あ、憐の父親だ」


まじまじとそれを見つめると、何となくいけ好かない顔である事が分かる。正直よくこれで社長になれたなと言うレベルの奴であった。何となくだが憐が出ていくのも勿論という感じの奴なのであった。


「へー……いけ好かない顔だな。確かにウザイなこりゃぁ」


正直気味が悪かったので別の場所に行くことにした雷であるが、ここでとある彼女に話しかけられる。そう、前に色々あって助けたあのネリンである。雷に気さくに話しかけるネリンに気が付いたのか、雷も話しかける。


「あれ?雷さんですか?」


「お、ネリンじゃん。どうしたネリン?」


どうしたと言われるネリンであったが、正直見つけたから話しかけたというだけの話であり、特に何も考えていなかったのである。という訳で何とか一緒にいようと、話を考え、そして話しかける。


「えーっと……暇なんですよね。はい。色々……そうだ今からどこかに行きませんか?」


何とか話を考えると、雷はその答えを聞いて、これは都合がいいと考えて一緒に街を探索することにしたのであった。


「そうか。じゃあ街案内頼むわ」


「了解です!」


という訳で二人は歩き始める。まず彼らが向かったのは街一番のスーパーマーケット。彼女はよくここに来るので、それも兼ねての案内であった。そして話は雷がジャックに勝利したという話になる。


「そう言えば見ましたよ!初トーナメントで優勝したんですってね!」


「あぁそうだな……まぁそれは通過点でしかねぇよ」


これは雷の本心。もっとデカい大会で優勝しなければ、どうにもならないと考えているのだ、アレがいくら強かろうが通過点の一つであると判断している。それだけであった。それはそうと雷は憐に言われた事をしようとしていた。


「向上心が凄いですね!っと、ここがスーパーです!よく私も行ってるんですよね。何か買っていきますか?」


「そういやアイス買ってこいって言われてたな……まぁまだ散歩したいし、まだ買わなくていいか」


どうせ他の場所も見て回るのだ、今アイスを買っても溶けてしまうだろう。なので止めておくことにした。それに正直彼女とまだいたいという気持ちも、少なからずあったからである。


「それじゃあ他の所に行きましょう!」


そして次に案内されたのは、彼女がよく行く商店街であった。商店街では色々なお店があり、また人で賑わっている様子もあった。


「……でここは?」


「ここは商店街ですね。いろんなお店があります!」


その中には前に来たステーキ店もあった。何で商店街に?と思うだろうが、売肉店とステーキ店を共同経営している感じらしく、裏口にはきちんと店があるのであった。


「前に来た店もあるな……」


とここでネリンに気さくに話しかけるおばちゃんが一人。ネリンに話しかけながら、今日も上手い事旨い物を作れたので買ってもらおうとしていた。


「おうネリンちゃん!何か買っていくかい?」


「じゃあコロッケ二つください!」


「あいよ!……そちらの彼は、彼氏さん?」


おばちゃんに彼氏と言われると、顔を真っ赤にしながらそれを否定するネリン。雷は他の店で適当に旨そうなものを資金内で買っていた。そして二つコロッケを買うと、それを雷と一緒に食べようとするのであった。


「ち、違いますよー!」


「……」


おばちゃんはにっこりと微笑み、若いカップルを見るような目で彼女達を見る。そして二人はベンチに座ってそれを食べていくのであった。ちなみにこの時間帯はほとんど人がいない。


「一緒に食べましょうね!」


「おう。……ありがとな」


もちもちと食べ進めていくネリン。既に食い終えたが、彼女が食べ終えるのを待つ雷。味の感想は普通に美味しかったとだけ言っておこう。そして食い進めていく彼女を見て、雷はリスっぽいと思った。一応言っておくとスラムにリスはいない。こちら側に来て一度触ったことがある。可愛い奴だと思った。


「美味しいですね!」


「あぁそうだな……」


そして食べ終わった後、雷はふと前にネリンが言っていたことを思い出し、それを聞くことにした。


「そう言えば前に言ってた奴はどうだ?」


それを聞いた瞬間に、彼女は少しこわばり、ちょっとだけ負の感情を出して喋り出す。それは要するに嫉妬という奴であった。


「あ……その……一応上手く行っているんですが……先輩たちと比べちゃうとまだまだですね……」


彼女はなんだかんだと試験に受かっており、既にここの商店街支部に配属されていたのであったが、とにかく商店街が平和である為に、成果を中々出せずにいたのだ。それをちょっとだけ嫉妬するように雷へと喋っていた。雷はそれを聞いて、大事なのは過程だというのであった。


「そうか。なに、いきなり上手くなれるもんじゃない。地道にやればいいさ」


平和なのはいいことだと、スラム出身である彼は心からそう思っていた。そして彼女はここで、ある事を切りだすのであった。それは雷の出身に関わる話。


「そうですね。……その……一つ良いですか?」


「何だ?」


ネリンは雷の目を見る。真っすぐ、ただ真っすぐに。


「……雷さんは、どこから来たんですか?」


「……聞くな」


嫌悪感をあわらにする雷。それでも彼女は言葉を止めない。


「……前に聞いていなかったと思いまして……」


「止めろ」


本気でそれを止めさせようとする雷。しかしそれでも彼女は、質問を止めない。彼女がそれを知りたい理由は一つ、もしスラム出身であったら、どうして助けてくれたのだろうという疑問であった。


「……教えてください」


「……」


「お願いです」


あまりにも真っすぐな目。その目に圧倒されてしまった雷は、遂に自分の過去の話をしようとするのであった。


「……はぁ。……見損なうなよ?」


「……大丈夫です」


「俺はスラム出身だ」


そう言った瞬間、彼女はやはりこわばった。それでも彼女は大丈夫だというように言い聞かせながら落ち着く。そしてそんなに驚かない彼女に、雷は、むしろ困惑するのであった。スラム出身と言えば誰でも正直に言って気味悪がり引くはずであったが。


「……そうですか」


「驚かないんだな?」


「何となくそんな気はしていました。……あの凄み、……少なくともこちらの人間ではないと思っていましたよ」


こちらの人間ではないという事を察したのは、前に雷がデルタ三兄弟をぶちのめした時、あれほどまでに人をぶちのめすのに躊躇いがないのを見て、少なくともアレはこちら側ではないと理解していたのである。しかし彼女はそれでも話しかけた。


「……それで、一つ聞きたいんだが。……これからどうする気だ?」


「正直初めは怖かったです。……でも、あなたは悪い人ではないと思うんです」


それでもあの時、助けてくれたのは事実なのである。それ故に彼女は彼を信用した。それだけか?と思うだろうが、それだけで十分。スラム出身であろうが同じ人間であると悟ったのである。


「……そうか」


「ですから……何も言いません。……大丈夫ですよね?」


その声には少しだけ、どこか悲しみのような表情が含まれていた。雷はそれを聞いて彼女に申し訳なさを感じるが、それでもやはり価値観が違うのは否めない。だからこそこう言うしかなかったのであった。


「俺だって命の価値くらいは知ってるさ。……大丈夫。たとえスラム出身だろうが問題ねぇよ」


それは暗に殺人をわきまえていると言うような、そんな感じであった。


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