『天才二人の初挑戦』
第15話『ライバルと仲間?』
散々食った後、彼らはカードで支払いを終えると、家に帰ろうとしていた。とここで彼らに話しかける彼女が一人、誰もいない店内で話しかけて来た。彼女は周りを確認しながら静かに話しかけるのであった。
「さてと……腹一杯食ったし、そろそろ帰るか」
「だな。……っと?」
「あの……あなたが雷さん……ですか?」
初めて見た時に、雷はなぜか目の前の彼女が犬に見えていた。と言うか犬そのものであった。しかしすぐ人の姿になると、幻覚だったのかと判断して何も言わずに喋る。
「そうだけど?何犬のお嬢ちゃん」
「えっと……その……私の相棒があなたに会いたいと言っているのです……はい」
犬と言われた瞬間、びくりと肩を震わせるが、それでも彼女は会話を続けようとする。とここで会話に混ざるように憐は雷に名前を知っているのかと問うのであった。
「……と言うか誰?お前知ってるのか?」
「いや?……特にないけど」
あっけらかんと話す雷。何も言えなくなる憐。そして会話を再開しようとする彼女。気まずい空気がその場を覆っていた。
「……」
次に口を開いたのは彼女であった。重苦しい空気を浄化するような声でそう言うと、彼らもそれに反応する。
「で、その……来ていただけますか?」
「俺は構わねぇけど?憐はどうするよ」
これからやる事は特にないので、彼女に着いていこうとする雷。そして憐はと言うと、そもそもパーツが来なければどうしようもないので行ってみることにしたのであった。後自分以外に機体を作っている奴がいると判断したからでもある。
「なら着いていこうか……お嬢ちゃん、あんた機体を作ってるだろ?って事はその相棒って奴はGGの選手。だから行くわ」
「……あ、はい……」
正直憐が来ることを想定していなかったのか、生半可な答えを返す彼女。ハッキリ言って憐はいまだ無名の機体作りであるがゆえに、誰?と言うような感じになっていたのであった。とは言え雷の隣にいる以上、雷の関係者である事は分かるので、問題ないと判断したからである。そして連れていかれたのは街から大分離れた木の前。
「ここです」
木の上に一軒家が立っている事に気が付いた雷達は、それを見上げてそれぞれ適当に感想を述べていく。
「ツリーハウスかな?いい感じの場所だな」
「確かに。……それで俺らを呼びつけたのは誰?」
「……今呼びますね……猫さん!来ましたよ!」
そして彼女がそう言うと、猫目の少年……猫がやってくる。猫は気さくに二人に話しかけると、雷の元に向かい、若干の敵意を持って話しかけるのであった。
「……来たか。やぁ
「……誰?」
雷はいきなり話しかけて来た猫に不信感を覚えているようであった。と、猫が誰なのかを知っていた憐は即座に彼に向けて話しかける。
「あ、お前猫か!」
「いやホント誰?」
本当に知らない雷は、憐へと質問する。憐はその質問にすぐに答える。
「あぁ、こいつはアレだよ、GGのプロ選手でな、……何でそんな奴が俺らに?」
「……何、新人君に挨拶しておこうと思ってね」
猫は少し考えた後、憐に向けて話しかける。そして話が終わった後、雷は猫に話しかけるのであった。
「あぁそうか……ところでその……彼女、犬だよな?」
「……あぁ、確かに名字が犬だが」
質問の意図を飲み込んだのか、そう答える猫に、更に雷は質問する。雷は犬と出会った時から何か違和感を覚えており、確実に何かを知っているであろう猫に向けて話しかけたのであった。
「いやそうじゃなくて、……彼女から犬の匂いがするんだが」
と言った次の瞬間、彼らに向けて猫は銃を向ける。二人は咄嗟に手を上げて、自分達は敵ではないと言うようにして、止めてくれと言うのであった。
「おいおいおい!銃を構えるなよ!」
憐は雷に何を言っているんだと話す。そもそもなぜ犬に対して犬の匂いがするんだと言い、説明を要求するのであった。
「雷!何を言っている!どういうことか説明しろ!」
銃を真っすぐに構え、こちらを見続け話しかける猫。犬は既に避難していた。そして更に銃を突き付けて質問する事にした猫。
「……お前……何でそれを?」
「……その銃を下げてくれ。……そうでなけりゃ俺は話さないぞ」
雷の交渉。猫はここで聞いておかなければならないと判断したのか、一旦銃を下ろし、話すようにジェスチャーするのであった。
「……」
「よし。まず俺が彼女の事を犬だと思ったのは一番最初、匂いを嗅いだ時だ。……犬の匂いがしてな。ンでそのデカい帽子と必死に隠している尻尾……俺も初めて見たけど、犬なのに何で人間なんだ?」
そう答える雷。普通に考えればなんだその質問は?と言いたくなるだろう。しかし憐はそれに反応する。それがどういう事かを知っていたからである。
「……獣人って事か!?だがなぜ今ここにいる!?」
獣人、その言葉に反応するように犬が怯えだし、猫は敵意をむき出しにこちらに銃を構える。だが遂にこの状況をどうしようもないと判断した猫は、銃を下ろして話し合う事を始めようとするのであった。
「……もう隠していられねぇようだ。……話すよ。彼女の事を」
猫は彼女が何者なのかを喋っていく。まず彼女は元々、名前のない奴隷であったという事であり、その辺に売られていたのだと言う。放っておけなくなった猫は、彼女を買い取り、匿っていたがそれも限界に近付いていた。そんな時GGのスーツが壊れてしまったので修理に出そうとしたとき、彼女はそれを修理し始めた。そしてなんと完全に回復させたのであった。それを見た彼は、その時から彼女を相棒として隣に置くことで秘匿性を保ったままその能力を向上させることにしたのであった。黙って聞いていた二人。雷は途中で混乱していたが、憐はそれに対して完結に言う。
「あー……つまり、お前の彼女さんはその……アレだな?元々獣人って訳で……んでもって奴隷にされていたところをあんたが助けたって訳か……」
「そうだ。……俺たちは獣人の待遇改善を求めている」
憐に対してそう言う猫だが、GGはあくまでスポーツなのである。正直に言って、それで何かが変わるとは思っていなかった。ただ、猫は確実な決意をもって憐に話す。
「それもそうかもしれないが……けど、GGに出たところで何か変わるか?」
「……奴らは獣人を何もできない愛玩用のペットとしか考えていない。……それなら獣人がこれだけのことが出来ると見せつけてやれば問題ないだろ?……そうなればあいつらも認めざるを得ないだろう?」
そう、猫は彼女がスーツを治せると気が付いた時から、獣人にも仕事が出来ると伝えようとしたのである。更に、今現在彼がかなりの強さを誇っている事で、彼のスーツを獣人が作ったという事実を伝えてしまえば、少なからず獣人の人権は上がるだろう。そう判断したのである。
「……確かにな」
「それも一理ある。んでお嬢ちゃんはどうなんだ?機体作れるのか?」
色々聞いたが、根本的な疑問を口にする雷。すると犬はここで、もう大丈夫だと判断したのか二人に話しかけてくる。
「はい!……元々細かな創作は上手かったので……後は独学です」
「独学!はぇ~凄いなお嬢ちゃん」
憐はそもそも独学で機体作りしていた訳ではない。親父からちゃんと聞いていたのである。なので完全に独学で機体作りをしていたという彼女の事を手放しでほめたのであった。それに嬉しそうにする犬。
「えへへ……」
「……さて。じゃあ一回見せて貰おうかな、その機体を」
そして彼らは、猫の機体を見ることにしたのであった。
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