第11話『これは銃ですか?いいえ、それはライフル銃です』
雷は何だかんだ銃弾を掴んでいた。明らかに大量の弾丸が彼の足元に落ちており、それでいて彼の腕の動きは一切遅くならない。ここで雷はある事に気が付いていた。
「弾丸はいい!しかしスタンガンはおかしいだろ!テーザーガンかぁ?!」
それは銃弾の間にたまーにスタンガンらしきものが撃ち込まれているという事であった。何発かは体に当たっているが、彼はそれをものともせずに弾丸を掴んでいたのであった。当然だがJの方はなぜ弾丸を掴めるのかと考えていた。
「……何で掴めてるんだ?」
「あぁ?スラムで散々やらされたからなぁ……!この程度なら止まって見えるわ!」
雷はスラムで散々銃を持った奴と戦ってきた。そんな中で彼は銃弾を掴む術を身に着けていたのだ。というかそうでもしなければまず死ぬのは自分。一応達人ともなれば銃弾を掴んで投げ返すとか言う訳の分からない技術が使えるらしいが、結局雷はそれを使うことは出来なかった。
「うわぁ狂ってる……ま、それなら俺が更に早くすればいいだけなんだがなぁ!」
そして弾丸を掴めると理解すると、Jは更に移動の速度を上げるのであった。もはや宇宙飛行士もびっくりなGを食らいながらも、それでも一切問題なし!と言わんばかりに闘技場を駆けるのであった。観客も、ナレーターも、誰も何が起こっているのかを正確に理解できる奴はいなかった。
『……何が起こっているんですか?』
『……その……恐らくエレクトロの方が銃弾を受け止めて……うわぁ……』
更に早さが上がったJの姿にドン引きしながらも、一応解説していく二人。しかしよく分からないので大分解説が雑になっていくのであった。
『わかりますよ……その気持ち……その……何でしょうねアレ?』
とここで雷は弾丸を受け止めるのをやめた。当然これを見逃すJではなく、更に弾丸の嵐が増していく。既に何発食らったのか分からないくらいであったが、HPは既に二割を切っていた。
「……」
「っと?勝負を諦めたのかぁ?」
何を言われても動かない。いや動いてはいる。弓を限界まで引き絞り、異常とも言える音を響かてせる。しかしJはこの速度では流石に当たらないと判断して、銃を撃ちまくる。既にHPは一割を切ろうとしていた。
「……」
「まぁいい!動かないってんならぶっ放すだけ!頼むからやられてくれやぁ!」
とここで雷は静かに目を開ける。見るのはまっすぐ前、Jの姿ただ一つ。そして雷は遂にその弓矢を放つ。それは音を置き去りにし、Jが背負っていたジェットパックを破壊し闘技場の壁を貫く。
「……俺がやるべきは……ただ、撃つ!」
「おぉ……!?」
まさか当たるとは思っていなかったのか、地面に着地しようとする彼の全身。何とかそれを避け、最後にとっておいたとっておきを取り出す。そして勢いそのままに雷の方に走っていく。
『一撃で三割!?』
『あの弓が当たったらしいです!しかし見えなかった……!』
『あーッと!?銃を持って突撃しています!というか銃で加速していますね!』
両腕にショットガンを装備したJは腕をリロードするように曲げると、それを雷の横目掛けて叩き込む。鈍い音と銃声が聞こえるが、それを腕で逸らし何とか避ける。
「……俺の全力、受けてみやがれヤァーッ!」
「……やってやらぁ!」
そして返すように更に左の腕で攻撃を行うJ。雷はただ冷静にその一撃を受け止め、顔面目掛けて蹴り上げる。とここでかわされた右腕を地面に向けると、銃を撃った反動でその蹴りを避ける。ここでようやくナレーター達は解説をできるくらいには、理解出来たようであった。
『腕が銃に!?』
『アレもスペルの性能の一つです!……ただ既に体には尋常じゃない程のGがかかっていますから……耐えられますかね?』
最早解説を放棄し始めた二人。正直に言って何をやっているのか分からないのでしょうがないともいえる。まぁ観客達も雰囲気で見ているような物なので同じであるが。
『わかりません!』
そしてジョークを飛ばせるくらいには落ち着いてきたのか、雷はJの攻撃を捌きながら攻撃を当てていた。
「銃のようなパンチってか!」
「そうだよ!」
そして遂に雷のパンチがクリーンヒットする。腹に当たったその一撃によってJのHPは消し飛び、残り一割程にされる。だがまだ終わらない。二撃目があるのだから。
「ガァッ……!」
「まだ終わらねぇよ」
そして左の拳がJの顔面にぶち当たり、壁に激突したJのHPはゼロになる。そしてそれを見たナレーターは、この戦いがどうなったのかを叫ぶのであった。
「……」
『……け、決着ーッ!無名のエレクトロの選手、『雷』!この戦いを制したのは雷選手だぁーッ!』
観客達の叫び声が上がり、会場は熱気に包まれる。そんな中雷は壁に激突したJの体を回収しに行くのであった。
『……最後の部分、大分二人共消耗しているようですね……しかしまだ準決勝みたいなものですから、これ以上上があるんですよね……?』
何というか決勝レベルまで盛り上がってしまったが、これはほぼ準決勝。これ以上もあるのか?というような感じになってしまう。
『……そう言えばそうでしたね。……とは言え次の試合は十分後!それまで何とか体力を回復してほしいですね……』
とりあえず当たり障りのない言葉を言うと、そのまま休憩時間へと移行する。雷は自分が勝ったことを噛みしめていた。そんな彼にうっきうきのJが話しかけてくる。先程ボコボコにされたのにも関わらずである。
「……勝ったか……」
「いやー!負けたわ
何か序盤で死にそうなやつの様な事を言っているが、雷の疑問はそこではなく、こいつも一点物を持っているという点であった。何で一点物を持っているのにこの場所に来ているんだ?という疑問も追加されてしまったが。
「……お前一点物もあるのか?」
雷のそう言う疑問に対し、当然と言うようにその答えを言うJ。彼は笑いながらこれからの事を話していくのであった。
「え?うん。しかしまぁこれから金稼がねぇといけねぇんだけどな!今ので金欠ですわ!……っと、そうだこれやるよ」
Jが投げつけた物を取ってみると、それは何かのパーツであった。一応エレクトロに組み込めるようであったが、そもそも何のパーツ何だ?という事であった。
「おっと……何これ?」
「銃。俺が腹に付けてた奴。まぁこれも何かの縁!何はともあれだ!……さて。じゃあな!」
そう言うとどこに隠していたのか銃を取り出し空に飛んでいくJ。雷はそれを何だったんだと言うように見つめていたのであった。
「……何だったんだよあいつ……確かJって名前だったか……いや偽名だろどうあっても……まぁその辺探っても無駄か。……何はともあれ次だ問題は!いよいよ決勝!……何としても勝つ!」
雷がそう考えている時、闘技場の休憩室では二人の男が話し合っていた。一人はよく分からない奴、そしてもう一人はジャックその人であった。かなり低腰に話しかける男に、ジャックは忌々しそうに、だが嬉しそうに話しかけるのであった。
「それで知らねぇ奴が勝ちましたけど……ジャックさん、あんなのに賭けていたんですか?」
「あぁ?……始めて見た時からなぁ……あいつは強いって思ってたからなぁ……それに」
「それに?」
口にくわえていたタバコを男の額に付きつけて、その頭に灰皿を叩きつけると、ジャックは闘技場の入り口に向かう。
「強い方がぶっ潰した方の楽しみは上がるだろぉ?」
誰に持聞こえていない筈であるが、まるでかみしめるようにその一言を言うと、『賞金稼ぎのジャック』……もとい、『初心者狩りのジャック』は進むのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます