第10話『その男、銃器につき』


雷はスペルという機体を確認していた。明らかに銃機体特化型と言うような機体であった。近くに行って全力でボコボコにするのが一番いいと判断したのであった。


「何かまた変な機体が出てきたぞ……何だありゃぁ……?」


「おっと!さっき相手をほぼ一撃で倒した奴じゃん!……その機体、エレクトロでしょ?何で持ってるの?」


色々と考えていると、相手の方が話しかけてきた。その声は少年というような感じの声色であった。雷は若干機嫌を悪くしつつ話を返す。


「……悪いか?」


「いや?それ軍用の物だからさぁ……気になってね!」


「そうか……まぁいい、来いよ」


エレクトロは元々軍用に作られたという紹介をいつかしただろう。しかしエレクトロが元々は戦争の為に作られたという話はまだしていないだろう。憐の祖父は戦争の道具に使われるのが嫌で今のようなGGというスポーツを作り、そしてなるべく戦争に使われないようにしたのだ。……最も、憐の父親の方はそんなことを無視しているが。


「なら容赦なく行きますよ!」


「銃か……って何だその量!?」


銃系の装備である事は何となく考えていたが、目の前から出てきたのは異常とも言える銃数。パッと見ただけで十二丁くらいはあるだろう。そしてその銃から大量の銃弾が放たれる。最初の一撃だけは何とか気合で避けるが、その避けた雷めがけて更に銃弾が放たれていく


「このスペルはな!大量の飛び道具を持てるんだよなぁ!おら避けねぇと命中しちまうぜ?」


「そうらしいなぁ!」


既に使いきった銃は後ろに下げて、リロードしながらこちらにバカスカ撃ち込んでいる。既に二回は弾丸に当たっているだろう。更にバルカンも設置されているので本当に厄介なのであった。しかし遠距離特化という事は近くに行ってしまえばがら空きになるのが通り。という訳で銃弾の隙を練って相手の懐まで接近する。


「遠距離特化型なら近くに行けばどうだ!?」


「おっと、そう来るならこれがあるんだよ!」


と接近した雷に対して、スペルの奴は体の中から大量の爆薬を取り出し、そしてそのままスイッチを入れる。何とか爆薬を見た瞬間に引くことでそれを避けることが出来たが、もし当たっていればHPをゴッソリ持っていかれたことだろう。一旦距離を取った雷は、近付くのは危険であると理解する。そして相手は高笑いしながら雷に告げる。


「爆弾!」


「分かったかぁ?!こいつは元々強いんだがな!俺が改造して色んな物を持っておけるようになったんだよ!」


「どんな改造をしたらそうなるんだよぉ!?」


正直スペルとか言う機体がどんなだかは知らないが、それでも明らかに何かがおかしい事だけは分かる。もはやキレそうになりながらも何とかその怒りを鎮めながら冷静にその機体を観察しようとするが、立ち止まれば間違いなく撃ちぬかれるだろう。そう言う次元の話なのである。


「遠くに行っても不利!近くに行っても結構不利!であれば何か使うしかねぇが……エレクトロの武器って刀以外にあったかぁ?!」


雷はエレクトロの武器を探していた。刀では決定打にならない、こちらも遠距離武器が欲しい所であるが、それらしき武器は今のところ見つけられていない。というか武器をどう出すのかすらよく分かっていないのだ、余りにも不利といえる。とは言え単純にフィジカルだけはこちらが上。どうするか考えていると、スペルがゴリゴリに煽り倒してくる。


「ほらほらどうしたぁ?撃ち殺されちまうぞぉ!?」


「うるせぇ!……しかし実際そうかもしれん!立ち止まっている暇はねぇ!」


とここで雷は遂に何かを発見する。それは余りにもデカい何かであった。一瞬なんだか分からなかったが、よくよく見れば弓である事が理解できる。とは言えなぜ弓なのだろうという疑問は出るが。


「……何か出た!何だこれ!?」


「あぁ?エレクトロに弓っておかしくねぇか?」


相手は何かを知っているのか、疑問符を出すが、雷にとってはようやく見つけた武器、早速放ってみることにした。背中から緑色の弓矢が出る。それを手に取ると、思いきり引き絞りながら弾丸の隙間を練って弓矢を当てようとする。


「……まぁいい!一発食らってみな!」


そして放たれた弓矢は避けられるが、その一撃は闘技場の壁にぶっ刺さる。流石に二人してこれには驚きを隠せない様子。


「何だこの速度!?」


「何だこの威力!?」


お互いに驚きするこそ、それでも攻撃の手は休めない。とは言え弓の方はいちいち引き絞る必要がある為に、隙が無くなってきた今引き絞る事が出来なくなってしまっていた。特にうっとおしいのがバルカンで、固定されている上にかなりの数あるので先程から邪魔な事この上ない。


「……いやお前は知ってなきゃならんのとちゃうか?……まぁいい。そっちがそう来るってんならぁ……俺はこいつを取り出すだけだ!」


そう言うと彼は、スーツからとんでもない銃身を備えた物を取り出す。それは一言で言うのなら、ライフル銃という物であった。しかし明らかに異常といえる大きさの銃。体で抱えないといけない程デカいのか、当然当たったらヤバいという事だけは分かる。


「ライフル……!」


そして遂に発射される。余りにも恐ろしいスピード、そして闘技場の壁をぶち抜くレベルの威力。雷はそれを見てから何とか回避ようとするが、もはや避ける避けないというレベルの話ではなく、肩にカスッてしてしまう。その一撃だけでHPの三割が持っていかれる。命中していれば間違いなく全部持っていかれていただろう。


「狙撃ッ!」


「ギリ……ッ!」


とは言え見て避けたのだ、隠し玉のような物を初見で避けられては相手にも立つ瀬がないのか、もう一発放とうとしている。一応だがこれは結構反動もデカく、一発撃っただけで体に案外ダメージが入る。HPは関係ないのであるが。


「一撃で持っていかれすぎだろ!お前も大概じゃねぇか!」


「かもな!そぉらもう一発!」


「流石に二発目は食らわねぇよ……!」


そして充填した二発目を放つが、流石に二回目ともなれば当たる訳もなく、あっさりと避けられてしまう。しかし避けたところで実際雷には有効打がないのは事実。故に雷はどうするかを考えていた。


「しかし実際どうする!?この弾丸の雨じゃまともに近づくこともできねぇ!……考えろ……!ここからだ!ここからなんだ!」


「さぁこっからどうするかよぉ!?」


とりあえず一旦距離を取る事にした雷。だが目の前にいる奴はそれを見越したかのように次の行動に出る。それは自分の体から大量の銃を取り出し、更にそれを大量に地面に設置した。


「さぁ!見せてやるよ俺の奥義って奴をなぁ!」


「奥義!?」


それは奥義というには少々粗すぎる物であった。何せただ銃ばら撒いては掴んで撃つだけであるから。もう技とは言えない。しかし、実際それで何とかなってしまうのだから恐ろしい所である。


「『地面に広がる銃の畑オール・パーティー・マン』!」


「うわぁ一面銃塗れだ!何だこりゃ!?」


驚いている間に既にジェットが最大火力になっており、そして闘技場の壁を使って高速で走っていく。一応避けれない程度の弾幕であるのだが、それでも厄介な事には変わりない。思考と考えが彼の中で渦を巻き、それでも何も攻略法は考え付かない。


「俺のスーツに隠しておいた銃を一斉放出じゃあ!」


「……どうも一筋縄ではいかないらしいな!」


完全に迎え撃つ為に完璧に闘志を燃やしだす。そして今ここから、約五分の弾幕と殺意の『二重奏ツイン』が始まるのであった。一方ナレーター二人は、意外にあっさりと終わってしまったジャックの戦いを解説しており、そして雷達の戦いに入ろうとしていた。


『ジャックが案外簡単に勝ちましたね……』


『そうですね。しかし……何が起こっているんでしょうか?』


彼らが見たのは技の最初の場所、既に飛ぶ体制に入っている彼の姿を見ているところであった。


『なんか銃いっぱい落ちてますけど……何ですかこれ?』


『あぁ、確か『J』とか言う人の技でしたね。馬鹿みたいに金を使うっていうんでほとんど使わないレア技ですよ』


『へー……どういう技なんですか?』


と男のナレーターが説明しようとした瞬間、彼らはこの一戦で度肝を抜かれることになる。銃弾が空を切る音と、何かがその弾丸を受け止めている視覚的情報だけが理解できることとなるだろう。



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