第9話『賞金狩りのジャック』
雷は試合が始まったにもかかわらず、ジャックの事を考えていた。カガリガリも強い方の期待ではあるのだが、エレクトロの方が若干量産機では性能は上。既にボロボロの状況であった。しかも大分舐めプで。
「さて……ジャックだっけ?あいつってどのくらい強いんだろうな?」
「おい!今お前は俺と戦ってんだぞ!?」
そう言う相手だが、相手になっていないのにそんなことを言うのかと、若干雷はうっとおしがっていた。実際ルールはよく分からないが、HP?とやらが減っているのは相手の方だけなので、恐らくこっちが勝っているのだろう。
「あっそう」
そして彼の拳による連撃が放たれる。顎を撃ちぬき腹、両手と両足に対して放たれたその連撃によって、相手のHPは一瞬のうちにゼロになり、こちらの勝ちが確定する。ちなみに観客はほとんど見ていなかった。
「ぶげぇっ?!」
「よし観戦しに行くか!……気になるしな」
そしてあっさりと勝ってしまったので、ジャックの試合を見に行くことにしたのであった。エレクトロをしまい、観客席に向かうと、ジャックの試合している場所に向かう。そこには人がたくさんいた。それ程の戦いなのだろう。雷は驚きつつも前に向かった。
「はいちょっと失礼……何だこの観客数!?そんなに人気なのかあいつ?」
そして最前列に来たときに、ジャックはディンテスをボコボコにしていた。既にHPは半分を切っており、誰がどう見ても相手に勝ち目はないと理解できた。後若干だがHPの横に金額が見えた。どうやら観客席から金をばらまく代わりに、ファイトマネーとして貰えるらしい。
「へー……」
そう言っていると、更にジャックが攻める。ジャックの機体は量産機では無いようで、どうも狼のような印象の機体であった。両腕には爪を装備しており、それが闘技場の壁にぶっ刺さっていることから、飛び道具でもあるらしい。ディンテスの機体に爪での連撃が入って行く。一応防御しているようだが、徐々にHPが減っていく。
「おらぁ!」
「流石に一点物持ちはちげぇなぁ……!」
ジャックは攻撃の手を緩めない。壁近くまで後退させると、爪による斬撃をスーツにドンドン当てていく。HPが二割程度まで削れたことによって、一旦ジャックはサービス感覚で彼を投げ飛ばし再び中央部分に寄せる。
「どうしたぁ?お前のスーツもぶっ壊してやろうか!」
とジャックが言う。それに反応したのはナレーターの二人であった。二人はこのGGのルールについて話し合っていた。
『そう言えばなんですが、今回のルールは……グリーンでしたよね?』
『そうですね、基本的にGGには三種類のルールがありまして、まず基本となる『グリーン』があります。これは機体ごとに定められているHP、『ヒットポイント』を減らし、ゼロにすれば勝ちになります。ヒットするときに減る物なのでヒットポイントと呼ばれています』
雷もそのセリフを聞いていた。雷は自分が最初に見た試合は少なくともグリーンではないなと考えていた。特に裏で行われていた試合ばかり見ていたせいで、彼はGGの事を殺し合いとつい先日まで考えていたのだ。
『そうなんですか……それ以外はどんなのでしたっけ?』
『はい、続いて『イエロー』というルールがありまして、こちらは機体を破壊すれば勝ちになります。簡単ですが、意外に奥が深いんですよ。まぁ基本的に今言った二つのルールで戦うと思ってください』
『……という事は、最後の一つがあるんですか?』
女性のナレーターがそう言うと、男性のナレーターがその質問に答える。
『はい。それが『レッド』と呼ばれるものでして……機体どころか生命すら奪いかねない非常に危険なルールです、裏のトーナメントでは基本的にこれがルールになります。相手がギブアップすれば一応勝ちになるのですが……その後は何をされても何も言えないという感じになります。危険なので公式で使われることは無いですね。はい』
『なるほど……っと!こんな事を話している間に動きがあったようですよ!』
と二人が話している間に、ジャックが遂に止めを刺そうとしていた。爪でディンテスの体を掴んで壁に当てると、背中に背負っているジェットパックを全開にしていく。そしてスーツを壁に当てながら闘技場を一周し始めた。
「どうしたぁ?動きが鈍いぜぇ!」
何とかそれから逃げようとするが、がっちり爪が刺さっている今の状況では逃げることが出来ない。そのままHPがもりもり減っていく。そしてそろそろ無くなるというところで、観客へのサービスタイムなのか、彼はディンテスの体を上に投げ、技を決める体制に入る。
「くっ……!」
それを見た瞬間、雷はディンテスの負けを悟った。というか普通に考えて誰でもディンテスの負けは分かっていた。ただその前にどれだけ格好よく止めを刺せるかを試していたのである。
「……ありゃ駄目だな、防戦一方にされちまってる。もう勝ち目はねぇな」
そして空中に飛ばされたディンテスめがけて、爪を発射、命中すると同時に飛び上がりその爪を穿つようにパンチによる打撃を食らわせていく。そしてその攻撃によって、彼のHPはゼロになり、勝敗が決まったのであった。
「おらぁ!」
『あーッと!ここで上位狩りのディンテスのHPがゼロになりました!』
『最後の方、完全に押されてましたからねぇ……いかに上位狩りとは言え、一点物には勝てないのでしょうか?』
『かもですね。一点物は基本的に……量産機より強いですからね。まぁ弱いという訳では無いと思いますよ!』
『そうですね。では、次の試合まで休憩時間がありますので、この間にトイレにでも行くと良いですよ』
ナレーターの解説も程々に、休憩時間が来る。基本的に何回も戦うことになるので、休憩時間が一戦ごとに含まれている。今回は十分位の休憩時間であった。
『次は第二回!ここで勝った方が決勝進出です!』
試合を最後まで見た雷は、観客席で考えていた。量産機では無い、一点物。それをまじかで見たのだ、流石にヤバイと判断、機体に詳しい憐に話を聞いてみることにした。
「……確かにあいつは強いようだ。……しかし……何だあの一点物?ちょっと憐に聞いてみよう」
憐から貰ったスマホを取り出すと、憐に電話をかけていく。すぐに出た彼に何があったのかを伝えていく。
「もしもし?」
『おう雷か!どうした?もう優勝しちまったか?』
と軽口をたたく憐に対し、信頼されているんだなぁと思いつつも、しっかりと連絡した理由を説明していく。
「いやそう言うわけじゃねぇんだけど……そうだ写真を送るわ」
最近の携帯は電話しながら写真を送れる。進化とは凄いなぁと思いながらも、さっさとその写真を送り始める。それを見た憐はこれが何だという質問をしていく。
『いきなりなんだよ……っと、こりゃ一点物か。何でこんな写真を?』
「どうもそれと戦うらしい。……何か策とかないか?」
それを聞いた憐は、はっきりと大きな声でこう答える。
『ない!……という訳でも無いが……まぁ一旦待ってくれ、それより次の試合は大丈夫なのか?』
そう言われ、時間を見てみると、休憩時間が終わりそうになっていた。流石に遅れるのは不味い。急いで選手控え室に向かう雷。それを声だけ聴いていた憐は、知っていたように言葉を話す。
「……やっべ遅れる!急げ!」
『……やっぱりな』
そして何とか次の試合には間に合った雷。次の相手の機体は見たことのない量産機、『スペル』と呼ばれるものであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます