第8話『最初の戦闘』
彼らはまず、設計図を作る為に色々と調べていた。彼の身長や体重、握力や体脂肪率までも。そんなに調べる必要ある?と思うが、考えてみればそれだけ面倒くさいことなのだ、何かを作るという事は。
「さて、まずお前の身長やらを調べていくぞ」
「まぁそりゃな。……そんで機体はどうするんだ?」
作る機体のイメージを問うと、彼は特に問題ないと言わんばかりに大丈夫だと話していく。要は作ろうと思えば何でも作れると言わんばかりのセリフであった。雷もまぁこいつなら大丈夫だろうなと判断し、特に何も言わなかった。
「まず、お前はどういう機体がいい?一応イメージとどんな感じかを考えてくれれば作れなくはねぇぞ」
そう言われると、彼は自分が考えた機体の情報を喋っていく。まず彼は銃やら弓やらは正直性に合わないと考えていた。チマチマ撃ったりするよりも、やっぱり殴ったりする方がいいと考えていたのだ。
「そうだなぁ……俺は一応弓も銃も使えるが……まぁやっぱ殴り合いが性に合ってるんだろうな!という訳でそう言う感じの奴はどう?」
「成程ねぇ……よっしゃ閃いた!ちょっと設計図書くから紙持ってきてくれ!」
それを聞いただけで即座にどんな機体を作ればいいのか理解する。そしてそれを忘れないために紙に書こうとする憐。ただし紙がないので雷に持ってきてくれと言う。
「あいよー」
と紙を持ってきた時に、彼は気になることを質問していく。それは単純に、彼が今までどうやって生きてきたのか、また何が出来るのかという質問のような感じであった。
「……ところで、お前ってさ、機体を作る以外にも何か出来るのか?」
「あー……修理に開発、料理も多少、後は資金管理?」
途中までは良かったのだが、最後のは出来ていないじゃないかと思い、流石に突っ込むことにした。まぁそれ以外は普通に出来るようなので一安心であった。
「資金はお前駄目だったじゃねぇか……まぁいいや、結構なんでもできるのねお前」
「そうだな!……しかし……これ多分一か月くらいはかかるな、完成まで」
憐は色々と言っておいたが、ここで憐は雷がいう機体を作るのには一か月くらいかかると判断する。なぜかと言えば、今回に関しては設計図もないし、それに機材も碌に揃っていない。つまり金も時間もかかるのだ、そう言う物なのだ。
「そりゃなぁ……アレとかは?」
アレとは要するに親父の機体の事。一か月くらいかかると言っていたが、アレも一か月くらいかかったのか?と言うようなことであった。憐は少し見ると、ちょっと違うかなと言うような感じで話す。
「あれか?アレは二日で出来たよ。設計図もどう作るかも書いてあったからな」
まさかの二日。一か月くらいかかると言っていたのに、アレ自体は二日で終わったのだという。流石に疑問に思うのであったが、逆に言えば図面さえあれば問題ないらしいのだ。そう言う物なのかと考える雷。
「……図面があったら作れるのかお前……」
「普通は作れないのか?」
まるで作れるのが当たり前だというように話しかける。普通は設計図があっても二日では無理である。流石にスラム出身でも二日は無茶だろと思う雷。憐はそれに疑問符を浮かべ、その後思い出したかのように話しかけてくるのであった。
「……?」
憐は机の上に置いてあったある物を雷に対して渡す。それは先程のエレクトロのスーツを着ることが出来るアレであった。なぜここにあるんだ?と聞く前に、憐はなぜあるのかを話していく。
「あ、そうそう、お前の付けてたエレクトロのスーツ、直しておいたから、大会行ってみるなら一度行ってみたら?俺はここで待ってるから」
大会は大きく分けて二つある。一つは参加する為に色々と条件がある、大きな大会。そして誰でも気軽に参加できる小さな大会である。ちなみにだがどちらでも一応賞金は出る。ただし額は大分違うのだが。
「確かにそれもいいかもしれねぇなぁ……よし!一回行くだけ行ってみるか!」
という訳で毎週のように行われている大会に行ってみることにした彼であったが、意外にもその場所が大きいという事に驚く。正直週一でやってるところとか、それこそ小さい場所でやっていると思っていたからである。
「相も変わらずデカいなぁ……さて。受け付けはどこだ?」
と雷が中に入ると、そこに在住しているロボットが話しかけてくる。ちなみに量産品のメイドロボットらしい。
「あなたもGGに参加するのですか?」
「うわぁっびっくりしたぁ!……え、機械!?へー……最新の機械は凄いんだなぁ……人間と見間違えるくらいだな」
「あなたもGGに参加するのですか?」
見た目はいいのだが中身はどうやら決まった事しか話さないらしい。それは別に問題ないのであるが、ちょっぴり寂しくなった。それで、雷は市民証を目の前にいる奴に見せると、メイドロボは自分の口の部分を開くと、そこにカードを入れるように指示する。
「するけど……市民証がいるのか?」
「ではこちらにスキャンしてください」
「あいよー」
口の中でもごもごしたかと思うと、口からベーッと言うように出してきた。雷は正直に言ってこういう物かと思っていた。
「……雷様。登録完了しました。それでは次に使用するスーツをこちらにスキャンさせてください」
再び口を開けたので、口の中にスーツを突っ込んでいく。ちなみに今回は大きいのか、ちょっと入れる時に嗚咽音が聞こえた。流石に雷もこれには眉をひそめたが、正直どうでも良いので無視することにした。
「ほれよっと」
「……『特型エレクトロ』を承認しました。それではこちらの機体を使用して下さい」
やっぱり口から出てきたそれを取り出す。何はともあれこれで参加したことになったようだ。これに意味があるのかは、よく分からないが恐らく開発者の趣味なのだろう。
「了解!……で、今回何人がいるの?」
「八人です。トーナメント方式ですので、最大三回戦ってもらいます」
最大というところに何となく気になるところを感じるが、機械は決まった事しか喋らないのだ、そう言うように言われているのだろう。たぶん。
「了解!さーて、どんな奴がいるのかなぁっと……」
「てめぇもこの大会に参加するのかぁ?」
と彼が選手の休憩所に向かうと、その途中で変な奴に絡まれる。そいつはとても黒いサングラスに、スーツっぽい服、どう見てもヤクザである。ここにいる以上、一応ヤクザでは無いようであるが。後雷の今の服は、スラムの服とも言えない何かではなく、憐から貰った格安文字Tシャツを着ていた。ズボンに関してはジーンズをはいており、見た目はまぁ少年かなって感じであった。
「そうだけど?……誰?」
と雷が尋ねると、その質問をされるのを待っていたのか、意気揚々と話しかけてくる。正直雷はこう言うのには関わりたくないのであったが。面倒なことになりそうだし。ちなみに雷はとある一件からヤクザと若干の関わりがある。良くも悪くも。
「俺は『ジャック』、『賞金稼ぎのジャック』さ!覚えておけ!」
ジャックと名乗る男を無視して自分の戦闘する場所に向かう。どうやらジャックとか言う奴とは正反対の場所にいるので、どちらも勝ち上がった場合のみに出会えるようであった。
「はいはい……」
そして最初の戦いが始まったのであった。一応刀に関しては折れた物を直してくれたようで、普通に使えるようになっていた。初戦の相手は研修所で見たことのあるスーツ、『カリガカリ』を装着していた。そしていざ対決という前に、解説者の二人が盛大にナレーションをしていた。
『さぁ一回戦の始まりです!八人ですのでサクッと四人分行きましょう!さて第一回戦ですが、今回の見どころって言うのはどうでしょうか?』
と女性の声のナレーターがそう言うと、もう一人の男性ナレーターが色々と解説してくれる。二人共慣れているのか、サクサク進めていく。
『えぇそうですねぇ……とりあえず一回戦で二人の強者が連なっています、『賞金稼ぎのジャック』と、『上位狩りのデンティス』。二人がいますからね!これはもう見逃せない戦いでしょう!他のお客さんもそっちに行ってますからね』
『そうですか!ではおしゃべりもそこそこに……第一回戦!始めぇ!』
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