第18話、魔族襲来「3」

 歩いている最中に、とある事を思い出す。


「そういえば、プラチナの幸運の守りってスキルの詳細を見ていないな。」


 魔族に遭遇する前にダイヤモンドスマイルのスキルを確認する事にした。


 【スキル2:幸運の守り】


 スキルをタッチすると、辺りに虹色の光が降り注ぐが、見た感じは何も変わっていなかった。

 俺はダイヤモンドスマイルのステータスを確認する事にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

       【プラチナ】


種族:ダイヤモンドスマイル(新種)

LV:15/140

ランク:AA

スキル:1、仏の顔も3度まで

    2、幸運の守り

    

オートスキル【自動回復】


《その硬さは常識外で常に笑顔を絶やさない。もしその笑顔が消えた時は、相手の死が近づいている。》



幸運の守り【発動中】


・主人に予期せぬ攻撃や不運が訪れると、攻撃や不運が主人に当たらなくなる。

(1時間orダイヤモンドスマイルが死ぬまで効果は継続する。)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(おおぉ! プラチナが死ぬまで、俺に害のある攻撃が当たらなくなるのか。このスキルは使えるな。)


 効果が分かったところで、幸運の守りが発動している間に魔族の群れを探す事にした。

 10分程歩くと、また地響きが聞こえてくる。

 俺は戦闘態勢に入りスキルを使う準備をした。

 準備を整えると1キロくらい先の森林から、魔物の群れがやってくる。


「ドラドラ! この辺りには人間の集落が無さそうだから、ブレスを使うぞ!」


「ギャオォ!」


 魔物の群れを200メートル手前まで、接近させてからスキルをタッチする。


【スキル3:天竜神のブレス】


 ザンドラは大きく息を吸って、灼熱のブレスを吐いた。

 ブレスを吐いた場所は黒くなっていて、迫って来ていた魔物は塵となっていた。

 今回も余裕かなと思っていると、フードを被った2人組が森林から姿を現した。

 そして、背丈の高い方が話しかけてくる。


「初めまして。先日、ウルガルド王国に向かった魔物が全滅したと通信が来たのですが、貴方がやったんですか?」


 話しかけられる前から、何となく予想は付いていたが魔族だった。

 俺はそんな魔族に、敵意を剥き出しにして言葉を返す。


「あぁ。俺が全て倒した。」


「くっくっく。貴方でしたか……。魔王様への手土産が増えるとは、なんたる幸運!」


 背丈の高い魔族は声を荒げて歓喜している。

 隣に立っている背の低い奴は、特に何も喋らず会話を聞いているだけだった。

 そんな背の低い奴をよく見てみると、マナが付けていたネックレスをフード越しに、ぶら下げているのが見えた。


「ま、マナ!? マナなのか?」


「……。」


 声を掛けても反応は無かった。

 それを見ていた背丈の高い魔族が、驚いた顔をした後に、ニヤリと顔を歪める。


「おやおや。知り合いだったのですか? でもマナ様は魔王軍の幹部になり、今は人類の敵ですよ。貴方にマナ様を殺せるのですか?」

 

 背丈の高い魔族の言葉によって、マナだという事が判明した。

 マナだと判明した直後に、目から涙が溢れそうになるが、堪えてマナに呼びかける。


「マナ、会いたかった……。人間側に戻ってこいよ? 魔族側に行っちゃダメだ!」


「……。」


 マナが催眠状態に陥っている事を知らない俺は、マナに向かって何度も話し掛ける。

 何度話しかけても無反応だったので、俺の心は徐々に砕けていく。

 そして背丈の高い魔族が、高笑いをしてから魔物を召喚してくるのだった。


「あっはっは! どんなに話しかけても無駄だ。死ねえぇ!」


 俺の心は崩壊しそうになり、迫ってくる魔物に指示を出す事は無かった。

 そんな俺の事を庇うかのように、ダイヤモンドスマイルが立ち塞がり、攻撃を受け止めてくれる。

 ダイヤモンドスマイルはただ攻撃を受け止めるだけで、ダメージが蓄積されていた。


「みんなごめん……。頭の中がぐちゃぐちゃで何にも考えられないよ。」


 俺の独り言に反応するかのように、ダイヤモンドスマイルがこちらに振り向く。

 そして大丈夫だよと、言わんばかりの顔で見つめられた。

 そんな姿を見ていたにも関わらず、俺は何をすれば良いのか分からなかった。

 いや、正確には分かっていたけど行動に移せなかったのだ。

 暫くダイヤモンドスマイルが、敵の攻撃を防ぐだけの戦いが続いていた。

 攻撃が通用しない事に苛立ちを覚えた魔族が、マナに手伝いを求める。


「ええい! なんて硬さだ! 忌々しい。マナ様。お手数ですが、魔物の召喚をお願いします。」


 魔族がマナに話しかけると、マナはリバースと言って魔物を召喚する。

 マナの魔物は、魔族が出していた魔物より強そうだった。

 そんな魔物を見つめながら、俺は思考を放棄した。


「これは天罰かな。1人っきりにさせてごめんね……。マナになら殺されても文句は言えないよ。」


 どん底まで落ち込んでいた俺は、マナの殺意を受け入れて地べたに沈み込む。

 その時、後ろから叫び声が聞こえて来た。


「エレン! 何座り込んでんねん!! 気になって来てみれば、この有り様かいな!」


 ハルトの声だった。

 俺は後ろを振り返り、懸命に向かってくるハルトを見つける。

 思考を放棄したのにも関わらず、ハルトが来てくれた事によって、少しだけ考える力が湧いて来た。


「ハルトさん……? はっ! 来ちゃダメだ! 来たら殺される!!」


 俺の声がハルトに届いたはずなのに、ハルトは構わず向かって来る。

 そして俺の元に着くと、息を切らせながら喋り出した。


「何言ってんねん。ワイにも背負わせろ言うたやろ? 片方の魔族は押さえつけたるから、マナちゃんをどうにかしろや。」


 精神がどん底まで落とされていたが、ハルトの心強い言葉に救われてマナと向き合う事にした。


「ハルトさん。相手のランクはA以上だと思うから、プラチナを盾役として援護させるね。」


「おう。助かるわ。」


 ダイヤモンドスマイルにハルトの援護を指示してから、マナの方を振り向く。


「マナ……。ホントにどうしちゃったんだよ。」


 俺は声を掛けるが、やはり無反応だった。

 めげずに違う言葉を掛けようとしたら、マナは俺を指して殺せと魔物に指示を出す。

 マナの魔物が向かって来たので、先に対処する事にした。


「アイツらを倒さないと話すことも出来なそうだ。ドラドラ、レッド。本気で行くぞ。」


 【スキル1:天竜神の裁き】


 【スキル3:乱撃】


 向かってくる3体にザンドラとレジェンドウルフがスキルを使用する。

 ザンドラの雷で2体を黒焦げにして倒せたが、レジェンドウルフは苦戦をしていた。

 敵対している魔物が、レジェンドウルフの攻撃を上手く躱している。


「レッド! 噛み砕くを使うぞ。」


 【スキル1:噛み砕く】


 噛み砕くを使用したが、レジェンドウルフの牙は空を切る。

 そして、相手の魔物がレジェンドウルフのお腹を殴り吹き飛ばした。


「レッド!」


 レジェンドウルフは、お腹を殴られて足をガクガクさせていたが、死ぬようなダメージではなくてホッとする。


 『レッド。シール』


 もう動けなそうなレジェンドウルフを魔石に戻して、ザンドラで倒す事にした。


「ドラドラ。あの魔物はさっきの2体より、強そうだから油断するなよ。」


「ギャオォ。」


 俺はザンドラのスキルをもう一度タッチする。


【スキル1:天竜神の裁き】


 白い雷がうねりながら敵に向かっていく。

 だが、予測出来ないうねりをしていた雷さえも、目で捉えたかのように回避していく。


「回避能力がメチャクチャ高いな。ドラドラ! あの魔物を鷲掴みに出来ないか?」


 俺の言葉を理解したザンドラは、敵を中心にして体を使って円を作る。

 そのまま円を小さくしていき、敵を鷲掴みにした。

 敵が鷲掴みにされたのを確認してから、スキルをタッチする。


 【スキル3:天竜神のブレス】


 ザンドラは鷲掴みをしている敵に向かってブレスを吐く。

 回避能力が高い魔物だったが、動けなくなってしまえば関係ない。

 ザンドラのブレスによって塵と化した。


「ようやく2人だけで話せるな。」


 俺はマナの元に足を進めるのであった。

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