第17話、魔族襲来「2」

 ザンドラは西に向かって、物凄い速さで飛んでいく。

 1時間くらい飛んでいると、城が見えてきた。


「クルシュさん! あの城がランゲルーン王国ですか?」


「そうですわ。まさかこんなに早く着くとは思いませんでした。エレン様のお陰です!」


 ランゲルーン王国だと確認が取れたので、すぐに行動に移る事にする。


「Sランクテイマーの皆さん! 敵地に到着したので、ランゲルーン王国の手前で降ります! 魔物を挟み撃ちにして、倒していきましょう!」


「よっしゃ! やっと出番が来たで!」


 ハルト達は果敢に魔族軍に突っ込んでいく。

 俺とクルシュはそれを後ろから眺めていた。


「あの〜……。エレン様? エレン様は突撃しないのですか?」


「はい。活気盛んなSランクテイマーが多いですから。それにあれくらいの魔物なら、俺が出なくても大丈夫だと思いましたので。」


 俺は苦笑気味に言って、Sランクテイマーの実力を後ろから眺める。

 やはりSランクテイマーなだけあって、迫り来る魔物を難なく倒していく。

 相手の強さは思った通りで、俺が出る幕もなく魔物の軍勢は少なくなっていく。

 それを見てザンドラを魔石に戻す事にした。


『ドラドラ。シール。』


「クルシュさん。ここの討伐が終わりましたら、国王の元に案内してくれませんか?」


 クルシュは勿論と答えて戦況を見守っていた。

 次第にランゲルーン王国側と、反対側で挟み撃ちにあっていた魔物の群れは居なりSランクテイマー達が戻ってくる。


「あー。久々に活躍出来た気がするな。」


「ホンマやで。エレンが動くと、ワイの見せ場が無くなるからな。」


 ザワザワと喋りながら戻ってくるSランクテイマー達。


「お疲れ様です。余裕でしたね! 王国はもうすぐそこです。歩いて行きましょう。」


 俺はそんなテイマー達に言葉を掛けてから、ランゲルーン王国に向けて歩き始める。

 王国の手前まで行くと、城壁を守っていたランゲルーンのテイマー達から声が聞こえてきた。


「クルシュ! もうウルガルド王国からの援軍を呼んできたのか!?」


「助かったぜ! ありがとな。」


「流石にあの数の魔物には参ったぜ。援軍が来なかったら落とされてたかもな。」


 複数の会話からも俺達は歓迎されているようだった。

 クルシュは声を掛けてくるテイマー達に、手を振り返しながら城に向かって歩いていく。

 ようやく城に着いたと思ったら、厳重な警備がされていた。

 クルシュが警備員達に事情を説明すると、警備員達は頭を下げてから通してくれた。

 

「援軍感謝します! どうぞ、我らの王がお待ちしています。」


 警備員から言われた通り、クルシュの案内で王座に向かう。

 王座に着くと、ガタイの良いお爺さんが座っていた。

 筋肉質で髭は全く生えてなく、清潔感のある見た目をしている。


「おぉ! ウルガルド王国からよく来て下さった。心より感謝する。私がランゲルーン王国の現王であるスーマン・サンドラである。」


 王様は頭を下げてお礼を言ってくる。


(サンドラ? ここの王様もサンドラって2つ名なのか。)


 俺は頭を下げている王様に、頭を上げて貰い本題に入る。


「それで、魔族の軍勢は何回やって来たのですか?」


「今回の襲撃で2回目じゃ。魔族の発言から、まだまだ群れは迫ってくると思っとる。」


「なるほど。それならここに居るSランクテイマー達に国の警備を任せて、俺が単独で奇襲をかけても良いですか?」


「何と!? 1人であの大群の相手をするのか?」


「ウルガルド王国では、その方法で魔族の部隊を撃退したので、多分大丈夫だと思います。」


 その言葉を聞いた王様が、援軍に来た俺に全てを委ねても良いのか考え始める。

 しかし他に頼れるテイマーが居ないのか、俺に頭を下げてお願いしてきたのだった。


「ウルガルド王国の援軍者だけに、この国の命運を託すのは気が引けるが、この国を救ってくれないか?」


「はい! 任せてください。」


 スーマン・サンドラに国の命運を託されて、城を後にする。

 城を出るとハルトが文句を言ってくる。


「エレン! また1人で背負い込もうとしてるやろ? マナちゃんが居なくなった時に話したやんか。

ワイも手伝うって!」


「ごめんハルトさん。でも敵が沢山いると、1人の方が動きやすいんだよね。もし俺だけで解決出来ない時が来たら願いするよ。」


 ご立腹なハルトを説得してから、Sランクテイマー達に残ってもらうように指示を出す。

 全員から了承が出たところで、城壁を出て魔物を3体呼び出す事にした。


『レッド、ドラドラ、プラチナ。リバース。』


 レジェンドウルフ、天竜神ザンドラ、ダイヤモンドスマイルが出てきた所でレベルの確認をする。



レッド:119/140


ドラドラ:18/160


プラチナ:1/140



(レッドのレベルがカンストしそうだな。あれ? プラチナが1レベル……? あっ、そっか。進化してから、1度もバトルに出してないな。)


 レベルを確認し終わると、3体のレベルが上がるように出したまま行動する事にした。


「このまま魔物の群れを探しに行くぞ! ドラドラは空から確認してくれ!」


 3体は同時に返事をして歩き始める。

 暫く歩いていると、ザンドラが空から降りて来た。

 そして首を動かして左側を見つめる。


「その方向に敵が居るのか?」


「ギャウ。」


 頷くようにザンドラが返事をしたので、ザンドラの向いた方向に歩いていく。

 10分くらい歩いていると地鳴りがして来た。

 その地鳴りによって、魔物の群れが来ているのが分かる。


「皆! そろそろ来るから気合い入れろよ!」


 俺が指示を出すと、すぐに魔物の群れが地鳴りと共にやってくる。


「レッド、ドラドラ。行くぞ!」


【スキル3:乱撃】


【スキル1:天竜神の裁き】


 スキルをタッチすると、レジェンドウルフはいつも通りに敵を切り裂きに行く。

 ザンドラは体に雷のような青白い稲妻を纏ったかと思えば、顔を上に向けて咆哮をした。

 すると、体に纏っていた青白い稲妻が敵の方に向かって行き、稲妻が当たった敵は焦げて黒くなっていった。


(おぉ! 天竜神の裁きは使い勝手良さそうだな。周りに仲間が居たら使えないけど……。)


 2体の活躍により、攻めて来た魔物の群れは壊滅した。


「よくやったな。まだ魔物の群れは居ると思うから、気を緩めずにいくぞ。」


 俺はそのまま魔物が来た方向に向かって歩き出す。

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