第16話、魔族襲来
ギルドに着くとガストンとガランが、上手く混乱を捌いていた。
俺は王様の言葉をガストンとガランに伝える。
「戻りました! 陛下からの伝言で、Sランクテイマーを二手に分けて応援に当たるそうです!」
俺の言葉を聞いたガストンとガランは、分かっていたと言うように、Sランク冒険者達を全て召集していた。
そしてギルド代表として、ガランが全員に話し始める。
「戻ってくるのを待っていたぞ。ここに居る33名がウルガルド王国のSランクテイマー達だ。」
ガランが俺を除いた32名のSランクテイマーを紹介してくれた。
紹介が終わると、ガランが本題に入る。
「先程説明した通り、ここに居るテイマーで他国の応援に当たってもらう。組み合わせはランキング順に分けていきたいと思っていたのだが、新参者の実力はランキング1位に匹敵すると聞いている。そこでエレンには、魔族側に着いたレオナルドの代わりに、ランキング2位として組み合わせを決めていく。」
ガランが俺の事を言い、注目を集める。
トーナメントのタッグ戦を思い出して、納得する者も居れば反論を言う者も居た。
ザワザワしている所でガストンが口を開く。
「今は口論の時間などない! エレンの実力は本物だ! 現にランカはエレンに負けている!」
「そうよ! 天竜だけだと思ったら他にもとんでもない魔物と契約しているのよ。」
ランキング1位のガストンと、3位のカレンに言われてその場は静まり返る。
それを見ていたガランが再度話し始めた。
「納得はいったようだな。それでだ。ガストン様とエレンを軸に2組に分けていきたいと思う。エレンはまだ未熟な部分があるから、ランカに同席して貰おうと思う。後はタッグ戦を共に戦い、親しみのあるハルトだな。」
「私はそれで良いわよ。」
「さすがガランのおっさん! わかってるやないかい。」
ランカとハルトは、ガランの言い分に従う。
俺としてもガランの決定は素直にありがたかった。
馴染みのあるハルトや、実力のあるランカが一緒なら何とかなる気がする。
そう思っていると、ガストンが不服そうに口を出して来た。
「ガランよ、貴様はバカか? エレンを過小評価しすぎだ!」
ガストンが人差し指を立てて喋り出す。
「1つ目だ。エレンの方が複数の敵を安定して倒す事が出来る。
そして2つ目。素直に契約している魔物だけならエレンの方が格上だ。
そして3つ目。ウルガルドに迫って来た魔族を壊滅させたのはエレン1人によるものだ。」
1つ目と2つ目は分からないが、最後の3つ目はガストンに言われた通りで、ガランは言葉を失う。
それらを吟味した上で話し合い、ガストンのチームにランカを取られてしまった。
俺も反論をしようとしたが、ランカに進化したザンドラを見られなくて済むのは、良しと思い黙り込む。
それからは特に問題もなく決まっていき、17名と16名のチームが出来上がった。
チーム分けが決まった所で、ガランが話し始める。
「よし。エレンのチームが17名で、ガストン様のチームが16名だな。全員文句ないなら、別れて救援に向かってくれ。」
Sランクテイマー達から文句が無かったのを見届けると、応援申請をしてきた冒険者がやってくる。
「本当にありがとうございます! 私はランゲルーン王国から来ましたクルシュと申します。エレン様のチームと一緒に行く事になりました。どうかランゲルーン王国を救ってください。」
「俺はパルタスティック王国から、来たヨツゥン言います。ガストンさん。パルタスティック王国の事をよろしく頼んます。」
2人の男性と女性が頭を下げながら頼み込んできたので、俺とガストンは必ず助けると言ってから出発する事になった。
「死ぬなよエレン! お前とは、またバトルがしたいからな。」
「ガストンさんこそ死なないでくださいよ? 勝ち逃げなんて許しませんから。」
互いに生き延びろと激励したところで、ガストンは東の方向に、俺は西の方向へと別れた。
別れてから暫く歩いていたが、流石に12歳の体力じゃ限界も近く、クルシュに尋ねる事にした。
「はぁはぁ。クルシュさん。ランゲルーン王国までどのくらいですか?」
「そうですね〜……。このペースで歩き続ければ、2日半くらいでしょうか?」
クルシュの発言に絶句する。
「2日半!? もっと早く着ける方法はないんですか……? 応援に来たけど、着いた頃には滅んでる可能性もありますよ?」
俺の言葉に頭を悩ませるクルシュだったが、他に方法は無さそうだった。
そこで俺は1つ提案する事にする。
「クルシュさん。 俺の契約している魔物に乗って、全員で飛んで行きませんか?」
俺の言葉にクルシュは笑い返す。
「あはは。ここに居る18名を乗せて、飛べるような魔物がいる訳ないじゃないですか。」
クルシュの言葉に、周りにいるSランクテイマー達も納得して頷く。
その中でハルトが援護をしてくれた。
「エレンの事まだ見くびってるんか? ガストン同様の強さって事は、バケモンと契約してるって事やねん。見せてやれエレン!」
ハルトの言葉に頷き、ザンドラを召喚する。
『ドラドラ。リバース。』
「ギャオオォ!」
40から50メートルはある、天竜神ザンドラが姿を現した。
それを見たSランク冒険者と、クルシュは目を見開いて固まる。
ハルトでさえザンドラが出てきた事によって、少し時間が止まったように固まる。
動き出したハルトが小声で耳打ちしてくる。
「天竜が進化したなんて聞いてへんぞ! 帰ってきた時に何で言ってくれへん? 毎度心臓に悪いねん。」
「ごめんごめん。ハルトさんの反応が楽しくて、敢えて言わないんだよ。」
俺はハルトに笑いながら返すと、その場にいた者から戸惑いの声や、大声が聞こえてくる。
「えっ!? え? ええっ?!」
「何だこれええぇ!?」
「図鑑で見る天竜とは違う? 天竜じゃないのか?」
「えええええぇぇぇ!?」
俺は騒ぎが収まるで、ほっとく事にした。
その中でも、冷静だったクルシュは俺に話してくる。
「エレン様……。あの魔物は何なのですか!? 魔力が異次元に高いとしても、あのレベルの魔物とは契約出来ないと思うのですが……。」
「出来ないと言われても、契約出来ちゃったものは仕方がないよね。とりあえずドラドラなら全員乗れるから、すぐにランゲルーン王国まで行けるよ?」
クルシュの言葉を軽く流して、ランゲルーン王国に行く話にすり替える。
クルシュは頭を抱えてから、申し訳なさそうに言ってくる。
「私もエレン様の事を甘く見ていたようです。このような魔物が居て、凄く心強いです! 本当にランゲルーン王国を救って頂けそうです。」
クルシュが俺の手を取り、何度も頭を下げてくる。
どうして良いか分からなかったので、クルシュの気が済むまで頭を下げて貰っていた。
そんなクルシュとのやり取りが終わる頃には、Sランクテイマー達も冷静になっている。
俺は全員を見てから、ザンドラの背中に乗るよう指示を出した。
全員が乗り終わってから、最後に俺が乗る。
「待たせたなドラドラ。行くぞっ!」
俺が指示を出すと、ザンドラは翼を大きく羽ばたかせて、ランゲルーン王国に向かって飛び立つのだった。
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