第15話、Sランクテイマー「2」

 ザンドラに乗って北に向かうと、魔物の軍勢を発見する。

 俺はザンドラの実力を確認したかったので、空中からスキルをタッチした。


 【スキル3:天竜神のブレス】


 ザンドラは大きく息を吸ってからブレスを吐いた。

 進化前の天竜より、広範囲のブレスが魔族に降り注ぐ。

 吐き終わるとそこは更地になっていたのである。


「は?」


 ブレスの後には魔物1匹残っていない。


(いやいやいや。流石にこの威力はヤバいって……。下手したら俺が魔王になっちゃうよ?)


 俺はスキル3を民家の近くでは使わないと、心に決めたのであった。


「さて……。ドラドラが規格外なのはわかったし、次の軍勢を探しに行くとしますか。」


 俺は更に北にザンドラを飛ばせて魔物の軍勢を倒していった。

 魔物の軍勢は合計で3箇所あったが全てザンドラ1体によって壊滅する。

 ザンドラに乗って更に北に飛んでみたが魔物の軍勢は見当たらなく、ウルガルド王国に迫っていた脅威は無くなったようだ。



「ふぅ。ドラドラ。全て終わったみたいだから、王国に戻るよ。」


「ギャウ。」


 俺はザンドラに乗って王国に戻っていく。


 すると俺を見送るように、フードを被った1人の男が木陰から出てきたのである。

 その男は通信魔法か何かで会話を始める。




ーーウルガルドに攻め込んだ魔物の軍勢は全滅した。そして脅威となる人間を発見。至急、魔王様との閲覧をお願いしたいーー



《俺はこの日に魔族から狙われる対象となった事を知るよしもない》



 王国に戻るとすぐに城に行き、王様との閲覧をお願いした。

 すぐに許可が出たので王座へと足を運ばせて、王様の手前で片足をつき頭を下げる。


「陛下。ウルガルド王国に向かってくる魔物の軍勢は全て殲滅致しました。」


「なんと! それは誠か!?」


「はい。ここから海岸沿いまで飛んで行ったので、間違いないかと。」


 ウルガルド王国への脅威が去り、周囲から歓喜の声が聞こえてくる。


「エレンよ。大義であった! この国を救ってくれた事に礼を言う。此度の活躍は息子のガストンからも聞いておる。そなたには報奨金と、Sランクテイマーになれるようにギルドに言っておこう。」


「ありがとうございます。もしまた何かあれば呼んでください。」


 王様から報奨金として白金貨100枚を貰い、城を後にした。


(白金貨100枚とか使い切れないって……。日本円で1億だもんなぁ。)


 俺はジャラジャラと音がする白金貨の袋を見て、使い道を考える。

 だが、特に使い所がないのでギルドの口座に全て預ける事にする。

 ギルドに着くと王様の使いが来ていて、ガランとバスターにSランクの件を話していた。


「おぉ! 丁度いい時に来たな。全て聞いたぞ。1人で魔物の軍勢を追っ払っちまったんだってな!」


 ガランが大声で笑いながら話しかけてきた。

 声が大きくて耳を塞いで頷く。


「流石ランカー達が目をつけるだけの事はあるな。まぁ、その件は置いといて……。ギルドカード渡してくれ。Sランクに更新するからよ。」


「お願いします。」


 Cランクのギルドカードを渡して更新が終わるのを待っていると、後ろから背中を叩かれる。


「エレンやったな! ワイ達にも見せ場は欲しかったんやけど、お前が無事ならまぁええわ。」


「ハルトさん!? 急に後ろから背中を叩かないでよ!」


「悪い悪い。Sランクの昇進祝いをしに来たんやけど、普通に話しかけてもつまらんと思ってな。」


 ハルトはSランクになった事を祝いに来たらしい。

 俺は祝いの言葉に、お礼を言ってどのような敵と対峙したのかを繊細に話す。

 するとSランクカードの手続きが終わったのか、ガランがこちらに歩いて来た。


「待たせたな。ほらよ。Sランクカードだ。」


 ガランが俺にSランクカードを渡してくる。

 今まで持っていたカードが銀だったのに対して、Sランクカードは金で出来ていた。


「うわー。Sランクカードってこんなに目立つんですね。」


「そうだな。Sランクテイマーは国の宝だから、わかりやすくなってるんだよ。」


「国の宝ですか……。」


 気づいたら国宝の仲間入りしていて釈然としないが、目標だったSランクは達成する事が出来たのであった。

 

(とりあえず第一難問クリアだな。マナの元に急いで行きたいけど、どこに居るのかもわからないからな……。)


 マナの事を考えていると、ギルドの扉が勢いよく開けられる。


「ウルガルド王国の冒険者達に申し上げます! 我らの国が魔族に襲われているので、至急応援をお願いします!」


 急いできたのか、荒く呼吸をしている冒険者が応援の申請をしてくる。

 ガランはその冒険者を落ち着かせながら、Sランクテイマーを呼び出す準備を始めていた。

 そして息が整い始めた冒険者にガランが問いかける。


「どこの国で、どのくらいの規模が迫って来ている?」


 冒険者は深呼吸してから、ガランの問いに答えた。


「バルスティック王国です。そして魔族は魔物の群れを数万……いや、数十万は引き連れて襲って来ています。」


 周囲の冒険者がごくりと息を呑み込む。

 それと同時に更にギルドの扉が勢いよく開かれる。


「ウルガルド王国の皆様! ランゲルーン王国が魔族と魔物の群れに襲われています! 至急応援をお願いします!」


「なんだと? ランゲルーン王国もかよ。」


 何と2つの王国からの応援が重なる。

 ガラン1人には対処が難しいと考えて、ハルトが口を挟む。


「これは陛下の所に行った方が無難やな。ワイとエレンでアレク・サンドラ様の所に行ってくるから、ここの対応は任せたで。」


 俺はハルトに名指しされて、王様の元へ向かう事になった。

 城に着き、そのまま王座まで駆けて向かうとガストンと遭遇する。


「ガストン! 悪いんやけど、ギルドに向かっといてくれ。理由は着けばわかるはずや!」


「は? ……まぁお前の事だ。緊急なんだろ? 行ってみるさ。」


 ガストンは何も聞かずにギルドに向かっていった。

 それを見届けると、俺たちは再度王座に向けて駆け出す。

 王座に着くと、王様はカップを手に持ち優雅に飲み物を啜っていた。

 ハルトと俺は、優雅に寛いでいる王様の前まで行って話しかける。


「陛下! 今さっき2つの王国から応援を要請されたで。ガランだけやと対応が難しそうやったから、ワイとエレンがここに来たんやけど。」


 それを聞いた王様は、カップをテーブルに置いて驚愕する。

 そして震えた声で喋り出す。


「そ、それは誠か?」


「せやな。早く対応せんと2つの国が潰れるかもしれへん。」


 王様が真顔で考えて、すぐに口を開いた。


「エレンよ。この国の脅威は去ったのだよな?」


「はい。間違いなく向かってくる魔物達は殲滅致しました。」


「ふむ……。ならSランクテイマーを二手に分けて、救援に送ろう。エレンとハルトは至急ギルドに向かい、この事をガランに話してくれ。」


「「了解したで! はい!」」


 ハルトと俺は、2人で返事を返してギルドに向かう。


 

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