第14話、Sランクテイマー

 ザワザワと喋り声が聞こえる。

 その喋り声で、夢の世界から現実世界に呼び起こされる。

 疲れが溜まっていたのか、時計を見ると昼を過ぎていた。


「ふん。やっと起きたか。」


「鍵も掛けずに寝るなんて、よっぽど疲れていたのね。」


「はよ顔を洗って支度しいや。」



 昨日、舞台に居た3人は寝起きの俺に声をかけてきた。

 何で朝から俺の部屋に居るのか理解出来ず、寝起きで回ってない頭を精一杯回転させる。


「うーーん……?」


 考えても何も分からなかったので、とりあえずハルトに言われたように顔を洗ってくる事にした。

 支度を終わらせて3人の前に行くと、いきなり冒険者ギルドに行くぞと言われる。

 急すぎて話に付いていけなかったが、大人しく従う事にする。



 冒険者ギルドに付くと、ガラン・オルフェとギルド長のバスターが待ち構えていた。

 何事かと思ったが、話を聞いていると俺のランクをSに上げてやってくれとの事だった。

 

「ガランよ。エレンは俺と同等の力を持っている。すぐにSランクに上げるのだ。」


「そうよ! 私はエレンに負けたんだからっ! ここに居る3人は異論ないのよ?」


「そうやで! 魔族のせいで1回戦しかやってへんけど、トーナメントでも十分過ぎる存在感を示してたやん。」


 ランキングトップの2人と、ランキング15位のハルトに言われてガランとバスターは目を合わせた。

 そしてガランが口を開く。


「本当にランキング3位のランカを倒し、1位のガストン様と同じくらいエレンは強いのか?」


「だから言っとるやないか! ここに居るワイ達が承認やで!」


 ハルトが本当だと返した事で、ガランは腕を組んで考え始める。

 暫く沈黙が続いていたが、意を決したようにガランが口を開いた。


「あー! わかった。このメンツに言われたら信じるしかねーか……。ただし、条件がある。Sランクカードを発行するには、攻めてくる魔族からこの国を救うのが条件だ。無論エレン1人に押し付けるわけじゃない。」


 ガランが条件を付けて話を続ける。


「ここに居る4人でこの国を魔族から救ってはくれないか? エレンは奇襲部隊と聞いているし、他の3人も迫り来る魔族が居たら対処に当たるんだろ?」


 ガランの条件は魔族からこの国を、俺とランカー達で救ってくれという事だった。

 他の3人は当たり前だと言わんばかりに首を縦に振る。

 俺も願ってもないチャンスだったので、ガランの条件を飲む事にした。


「急な事で頭が回ってませんでしたけど、話は終わりましたか……? そろそろ魔物の軍勢が来るかもしれないので、ちょっと偵察に行きたいんですけど。」


 俺がそう言うと、全員から了承を得てギルドを後にした。



 王国の外に出て天竜を召喚する。


『ドラドラ。リバース。』


「また北の方向に行くからよろしくな。」


「ギャオォ。」


 天竜の背中に跨って飛び立つと、思ったより近くに魔物の大群が迫っていた。

 すぐに降りて他の2体を召喚する。


『プラチナ、レッド。リバース。』


 魔物の大群が地響きを立てて近づいてくる。


(とりあえず天竜のブレスから使うか。)


【スキル3:ストームブレス】


 迫り来る魔物の大群を消し炭にしていく。

 今回も余裕だと思い、そのままレジェンドウルフの乱撃と天竜のブレスで敵を殲滅していった。

 しかし、ブレスで消し炭にならない魔物が1匹だけ居たのである。


(でかいな。あの魔物が今回の災厄級か。)


 いつも通りにレジェンドウルフで終わらせようと乱撃をタッチする。

 すると、いつの間にか敵を切り裂きに行っているレジェンドウルフ。

 だがいつもとは様子が違った。

 魔物は傷つくとその箇所に緑色の光が発生して、すぐに完治していた。

 俺は目を凝らして見るが、やはり切り裂かれたと同時に回復しているようだった。


「レッド! 戻ってこい!」

 

 レジェンドウルフも違和感を感じたのか、俺の指示ですぐに戻ってくる。


「今までの敵より強いかもしれない。気を引き締めていくぞ!」


 俺の言葉が伝わったのか、3体とも軽く返事をして敵を見つめていた。


(あれはプラチナの自動回復と同じスキルかもしれないな。って事は3体同時攻撃とか、高火力で押し切るしかないかもしれないな……。)


 俺は悩んで一斉攻撃をしようと思ったが、天竜の逆鱗で攻撃力が2倍になる事を思い出した。

 1番火力のある天竜なら何とかなるかもと思い、スキルをタッチする。


【スキル2:天竜の逆鱗】


 天竜から赤いオーラが発生して、敵の魔物を攻撃しに行く。

 鉤爪を使って凄まじい勢いで敵を削っていく。

 目に見えて回復量が追いついてないのがわかった。

 行けると確信して、俺は追加でスキルをタッチする。


【スキル1:スカイクロー】


 天竜の鉤爪にドリル状の風が纏い、そのまま敵に突っ込んだ。

 天竜勢いは凄まじく、そのまま敵を貫く。

 貫かれた敵はそのまま地面に伏したのだった。

 

「よし! 皆よくやってくれたな。また敵と遭遇したらよろしくな。」


 3体は嬉しそうに返事を返してくれる。

 それを見た俺は2体を魔石に戻す。


『プラチナ、レッド。シール。』


 2体を戻した俺は天竜のレベルを確認する事にした。



ドラドラ:100/100


(きたー! 次もカッコよくて強いドラゴンがいいな!)


 俺はそのまま天竜の進化ボタンをタッチする。

 すると、また2つのルートが現れた。



1、ウロボロス:ランクS+「亜種」『最終進化』


2、天竜神ザンドラ:ランクAAA「亜種」


(うおおおおお。ランクSまであるのか! 最終進化付きだけど……。ちょっと詳細見てから決めるか。)


《ウロボロス:2頭の竜の頭を持つ。死と再生、破壊と想像の尊重。神々にも匹敵する悪魔の竜。》


《天竜神ザンドラ:天竜達の神。遥か高みに生息していて、そのブレスは山を消し、海を割る。》



(ふむふむ。天竜の真っ当な進化は天竜神だな。それにしてもウロボロスの詳細は凄いな。最終進化じゃなければ選んでたかもしれないな……。)


 俺は天竜神ザンドラの進化先をタッチする。

 天竜は光に包まれて、体が膨張していく。

 光が収まると、目の前には天竜が更に力強くなったような竜が飛んでいた。

 髭が立派になって全長は天竜の倍はあり、40メートルくらいはありそうだ。

 すぐに気になるステータスを覗く。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


       【ドラドラ】


種族:天竜神ザンドラ「亜種」

LV:1/160

スキル:1、天竜神の裁き

    2、天竜神の逆鱗

    3、天竜神のブレス

    4、???


オートスキル【自動回復】【竜の威厳】【ブレス:強】




《天竜達の神。遥か高みに生息している。そのブレスは山を消し、海を割る。》


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(色々と盛り沢山だな。このまま進化させ続ければ救世主の魔物に勝てるかな?)


 今後のことを色々と考えてから、ザンドラの背中に跨る。


「さぁ。魔族への反撃に出ようか。」


 そう言うと北に向かってザンドラは飛び立った。



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