第13話、ランカーの実力「3」
ガストンは戦う前に話してきた。
「この事を言うのは初めてだが、2000年前に3カ国の王族は、救世主から1匹ずつ魔物を渡されている。代々王族で受け継がれていて、ウルガルド王国に渡された魔物は俺が持っている……。」
ガストンがニヤリと笑い、2体の魔物を倒す事が出来れば見せてやると言ってきた。
そして1匹目の魔物を召喚してくる。
『出てこい! クイーン。リバース!』
クイーンと呼ばれた魔物は全長3メートル程で、槍を持った女性型の白銀騎士だった。
俺は先程と同様に、天竜から召喚する事にした。
トーナメント用の舞台は結界によって、死んだ魔物は蘇りバトルで疲労していた魔物も、魔石に戻すと全回復しているようだ。
「また天竜からか。芸がないな。」
「お二人の実力を確認する為ですから。2体目のレッドを倒せれば、下級魔族には勝てますよ。」
救世主から渡された魔物が気になったが、当初の予定通りに2人の実力を確認する事にした。
両者睨み合ったままだったが、痺れを切らして仕掛けたのはガストンだった。
「クイーン! 天竜をぶちのめせ。」
白銀の騎士が槍を地面に突き刺すと、地面が盛り上がり複数の槍が伸びてきた。
天竜は回避しようとしたが、槍の数が多すぎて串刺しになる。
「ドラドラ!」
声を掛けるも虚しく、天竜は光の粒子となって魔石に注がれる。
(これがランキング1位の実力か。天竜がなす術もなく負けるとは思わなかったな。)
俺は切り替えてレジェンドウルフを召喚した。
白銀の騎士は先程のように、槍を地面に突き刺して複数の槍を伸ばしてくる。
だがレジェンドウルフは全ての槍を躱した。
「なに……!? 素早いのは知っていたが、全て回避出来るものなのか?」
ガストンの攻撃が不発に終わると、俺はスキルを押す。
【スキル2:噛み砕く】
レジェンドウルフは白銀騎士に噛み付き、そのまま噛み砕く。
白銀騎士は光の粒子となって消えた。
「はっはっは。やるではないか!クイーンだけで大抵の試合が終わるから、バトルが楽しいと思ったのは初めてだ。」
満悦そうなガストンは2体目の魔物を出してくる。
『いくぞ! キング。リバース!』
キングと呼ばれた魔物は、全長15メートル程あるドラゴンだった。
全身が灰色で、背中にはトゲのような突起物がいくつも生えている。
硬そうな見た目をしており、岩石がドラゴンになったような感じだ。
「レッド。初手から全力で行くぞ!」
【スキル3:乱撃】
レジェンドウルフが俺の視界から消えて、ドラゴンの方から凄まじい音が聞こえてくる。
視線をドラゴンの方に移すと、ドラゴンは倒れて……いなかった。
レジェンドウルフは乱撃をして疲れたのか、舌を出して荒い息をしている。
ドラゴンはダメージを受けていないのか、眠たそうに欠伸をしている。
「やはり早いだけで、火力はそこまで高くないようだな。こちらも攻撃に移ろう。キング!」
ドラゴンは岩のような体を丸めて転がってきた。
レジェンドウルフは疲れてて動きが鈍く、間一髪回避した。
「まだだ!」
ドラゴンはガストンの声に反応した。
背中のトゲを利用して、90度曲がってくる。
レジェンドウルフは予想外の攻撃に、回避する間もなく背中のトゲで体を貫かれる。
「レッドが負けた……!?」
レジェンドウルフは光の粒子になって魔石に降り注ぐ。
「レッドを倒されたのは初めてです。流石ランキング1位ですね。」
3体目まで追い込んだガストンを心から褒めてプラチナを召喚する。
『プラチナ。リバース。』
召喚したと同時に1つのスキルを押す。
【スキル:仏の顔も3度まで】
両者が睨み合いをしていると、ガストンが痺れを切らして攻撃をしてくる。
「バトル楽しかったぞ。だが、それもこれで終わりだ! 行け、キング。」
ドラゴンは先程と同じように転がってきて、凄まじい勢いでダイヤモンドスマイルに激突する。
俺を除いた3人は勝負が決まったと思っていた。
だが、悲鳴はドラゴンの方から聞こえてくる。
「グガアアァァ!?」
何とダイヤモンドスマイルに攻撃してきたドラゴンのトゲが折れていたのだ。
全員がその光景に目を奪われる。
攻撃を受けたはずのダイヤモンドスマイルが、笑顔のまま一歩も動いて居ないからだ。
「くっ……! キング。違う技だ!」
悲鳴をあげていたドラゴンは息を大きく吸って、灼熱のブレスを吐いてくる。
ダイヤモンドスマイルに直撃して、ガストンは今度こそ倒したと笑みを浮かべた。
しかし、ブレスが吐き終わってもダイヤモンドスマイルはピンピンとしていた。
常識外の硬さに、俺を除いた3人の惚けた声が重なる。
「「は?」」
ガストンも惚けていたが、バトル中と言う事もあってすぐに現実に戻ってくる。
そして最大火力のブレスで、ダメージを受けていない事に焦燥して、次の攻撃を仕掛けてきた。
「キング。攻撃を続けろ!」
ドラゴンは口を大きく開けて、ダイヤモンドスマイルに牙を立てる。
ダイヤモンドスマイルに噛み付いたドラゴンは、牙が折れて悲鳴を上げた。
「グガアァァァァ!」
それと同時にダイヤモンドスマイルから笑顔が消えて、ドラゴンの顔を殴る。
ドラゴンは怯んで逃げようとしているが、ダイヤモンドスマイルはそれを許さない。
先程までとは打って変わり、ダイヤモンドスマイルの猛攻が始まった。
そして怯んだドラゴンはなす術もなく、殴り殺されるのであった。
「まさかキングを倒される日が来るとはな……。」
ガストンは俺とダイヤモンドスマイルを交互に見てから、ニヤリと笑い最後の魔物を召喚してきた。
ガストンが出してきた魔物を見て、俺は初めて勝てないと感じた。
(あぁ。救世主はホントに凄い人だったんだな。魔物を見ただけで、勝てないと思わせられるんだもんな……。)
召喚された魔物は全長50メートルはあると思われる。
そして魔物の神と言われても納得する存在感を放っていた。
「はっはっは! これが救世主から受け継いだ最強の魔物だ!! すぐに終わらせてやろう!」
救世主の魔物は俺とダイヤモンドスマイルを見つめて、懐かしそうな笑みを浮かべていた。
何故だかわからないけど、目元には涙が浮かんでいるように見える。
そんな救世主の魔物と目を合わせていると、ガストンが声を荒げて命令を始める。
「何をしている! 早くあの笑ってる奴を倒すんだ!!」
救世主の魔物は愛おしそうに俺を見たあと、ダイヤモンドスマイルを一瞬で消しとばして試合は終了した。
倒すと同時に救世主の魔物も魔石の中に戻っていく。
「ガストンさん。救世主から受け継いだ魔物は凄いですね! でも呪文を唱えてないのに何で勝手に魔石に?」
「何だ? 知らんのか?」
ガストンは無知な俺に説明してくれた。
他人の魔石で魔物を召喚すると、1日に30秒しか召喚出来ないようだ。
俺は納得をしてから本題に入る事にした。
「ガストンさんなら、下級魔族は余裕で倒せそうです。ホントに強くて驚きました。」
「エレンと言ったか? エレンの強さも常軌を逸していたぞ。救世主の魔物が居なければ、負けていたのは俺の方だったかもしれんしな。」
暫く話しているとガストンと意気投合をして、打ち上げに行く話の流れになる。
でも奇襲部隊として朝から動き回っていたので、俺は疲れていた。
それを察したのか、ハルトがガストンを説得してくれた。
説得されたガストンは諦めて、ハルトとランカと共に夜の町に出かけて行くのだった。
俺は宿屋に戻り、部屋に着くとベットに倒れ込む。
「あー。疲れたー。」
余程疲れていたのか気が付いたら寝ていて、その日は幕を閉じた。
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