第12話、ランカーの実力「2」

 1戦目を余裕で勝利して、ランカが次に出す魔物を待つ。


「さすがは天竜ね。その強さには惚れ惚れするわ。でも次は勝たせてもらうわよ!」


 ランカは2体目を召喚した。

 今度は全長が5メートル程で背中に甲羅を纏った亀のような見た目だ。

 獰猛な牙と爪が付いていて、魔族が従えていた魔物と同等の強さを感じる。


「天竜! ブレスを使うぞ!」


 俺は天竜に指示をしながらブレスのスキルをタッチする。

 天竜がブレスを吐くと、亀は体を甲羅の中に隠して耐えている。

 天竜がブレスを吐き終わると、平然な顔をして体を甲羅から出してきた。


「次はこっちの番ね! やっちゃって!」


 ランカが指示を出すと、亀は予想外の攻撃で天竜を襲う。

 亀の首が凄い勢いで伸びてきて、天竜の首に食らい付いたのだった。

 まともに攻撃を受けた天竜は、ジタバタして牙を取り外そうとする。

 しかし、亀の牙は天竜の首にしっかりと食い込んでいて取れる気配がない。


「ドラドラ。踏ん張れ!」


 俺は天竜を励ましながら、使ったことのないスキルをタッチする。


 【スキル2:天竜の逆鱗】


 天竜は赤く輝き始めて、首を噛まれている状態なのに攻撃を始める。

 

(今までのドラドラより、攻撃力が高くないか?)


 気になってドラドラのステータスを見ると、項目が追加されていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


       【ドラドラ】



種族:天竜「亜種」    

LV:91/100

スキル:1、スカイクロー

    2、天竜の逆鱗

    3、ストームブレス

    4、???


天空を縄張りとしている竜種。風系スキルが得意で、その気になれば嵐を呼び寄せる事が出来る。




【天竜の逆鱗】発動中


 状態異常(怒り)


・死を恐れなくなり、目の前の敵を殺すまでは治らない。〝効果が切れると動けなくなる〝


・攻撃力2倍。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(ステータス表示に、スキル確認の機能が付いていたのか。攻撃力2倍は凄いけど、良いのか悪いのかわからないスキルだな……。)


 天竜は首を噛まれたまま、2倍の攻撃力でスカイクローを使う。

 至近距離から直撃を貰った亀は、吹き飛ばされると同時に天竜の首を噛みちぎった。

 亀と天竜は互いに光の粒子となり、その粒子が両者の魔石に注がれる。


 初めて契約している魔物が死んだ事を体験した。

 内心ドキドキしていたが、魔石を覗くとドラドラの名前があってホッとする。

 トーナメン用の舞台は、魔物が死んでも生き返ると聞いてはいたが、本当に生き返るか不安だった。



「頼みの天竜はもう居ないわよ。貴方に私の3体目が倒せるかしら?」


 ランカが勝ち誇ったように話しかけてくる。

 まだ天竜が最強だと思っているランカの相手をせずに、次の魔物を召喚する。


 『レッド。リバース。』


 レジェンドウルフを召喚するとランカは驚きの声を上げた。


「嘘よ! 天竜より強い魔物を従えていたの!?」


「ほう。ついに災厄級を倒した魔物が出たか。」


 レジェンドウルフの存在を知っていたガストンは、特に驚く様子もなく観戦している。

 驚いていたランカも、すぐに平常心に戻って最後の魔物を出してきた。

 最後の魔物は馬型の一角獣だった。

 俺の中で一角獣はペガサスのように格好良いイメージだったのだが、目の前にいる魔物に全て壊される。

 体の大きさが2メートル程に対して、ツノの長さが4倍程あり、その見た目は異様だった。


「レッド。速攻で終わらせるぞ。」


 【スキル2:噛み砕く】


 レジェンドウルフは高速で移動して一角獣のツノに噛み付く。

 しかしドリルのようなツノが回転を始めて、噛み付いていたレジェンドウルフも、クルクルと回転を始める。

 ツノの回転が速くなると同時に、レジェンドウルフはツノから牙を外して後ろに退く。


「そのまま貫いちゃって!」


 カレンの言葉で一角獣は、螺旋回転をしているツノをレジェンドウルフに向けて、そのまま突っ込んでくる。

 レジェンドウルフが間一髪でツノを回避すると、同時にスキルをタッチする。


 【スキル3:乱撃】


 レジェンドウルフは、ツノを避けた場所から一瞬で姿を消す。

 すると、一角獣本体の方から切り裂く音が聞こえてくる。

 全員が振り向いた時には、一角獣が倒れてレジェンドウルフが佇んでいた。



「カレンさん。対戦ありがとうございました。」


 俺は悔しそうな顔をしているカレンにお礼を言って、ガストンの方を振り向く。

 そして小声で話しかけた。


「ガストンさん。少しだけ話があります。多分カレンさんの強さだと魔族に勝てません。」



 俺の言葉にガストンは息を呑みこんで口を開く。



「先程、捉えた魔族より弱いと言うのか?」


「いえ。多分同等くらいです。ただ、魔物の質は魔族の方が若干上な気がしました。」


 ランカが下級魔族にも劣ると思って居なかったのか、ガストンは冷や汗を浮かべる。

 そして俺の実力を見てから、再度感想を聞かせて貰うと言ってきた。

 ガストンとの会話を終えるとハルトがやってくる。


「さすがエレンやわ! ランカをこんなにあっさり倒すとは思へんかったわ。」


「運が良かっただけだよ。それより次はガストンさんだから、気合い入れなきゃ!」


 ランカとのバトルを謙遜して言い、俺は気合を入れる。

 ハルトは満面の笑みでエレンなら勝てると、俺の背中を押してくれた。

 舞台に着くと、既にガストンが待ち構えている。

 



 遂にランキング1位のガストンとのバトルが始まる。

 

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