第5話、覚醒

 ウルフの体が光に包まれて体が膨れ上がっていく。

 光が収まるとそこには体長8m程の金色に輝く神々しいウルフが居た。


「レジェンドウルフかっけぇ……。あっ、急がないと。」


 レジェンドウルフの気高く金色に輝く姿に目を奪われたが、時間がなかったのですぐにステータスを見る事にした。



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       【レッド】


種族:レジェンドウルフ   『最終進化』 

LV:1/140 

ランク:A A

スキル:1、威嚇

    2、噛み砕く

    3、乱撃


 伝説のウルフ。人々の言い伝えでは500年間戦い続け生き抜いたウルフとか。地域によっては石像を作り、神のようにお供物あげる所などもある。目に見えぬ速さで敵を翻弄して攻撃をする。


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(レベル上限たっか。まぁもう進化しないからレベルなんて関係ないか。)


 ステータスを見終わったところで俺は急いでハルトの元へ向かう。


「ハルトさん! お待たせしました。あとは任せてください。」


「!? なんやねんその魔物は......。さっきまでウルフと一緒だったやないかい!」


「そんな事は気にしないで下さい! それよりアイツを倒す事に集中します!」


 ハルトからの疑問をスルーしてレジェンドウルフのスキルをタッチする。


 【スキル3、乱撃】


 押した瞬間レジェンドウルフの姿が消えて、キマイラの方からザクザクと何かを切り裂いてく音が聞こえてきた。

 振り向くとキマイラがいつの間にか倒れてる。

 それも何度切り裂いたかわからない程の傷を残して絶滅していたのだ。


「「は?」」

 

 俺とハルトの声が被る。

 ハルトはその光景をポカンと口を開いて見ている。

 俺も最初は唖然としたがハルトに声を掛けられると面倒だと思い、レジェンドウルフの背中に乗せて貰いバレずに帰還した。

 レジェンドウルフは物凄い速さで森を駆け抜け、3分程でウルガルド王国に着いてしまった。

 騒ぎになりそうだったので、森を出た所でレジェンドウルフを魔石に戻して宿屋に戻る。

 宿の中に入ると今日の出来事を思い返してみた。


(はぁ。あの強さは桁違いじゃないかな......。ランキング15位のハルトさんが押されてる魔物を一瞬で葬るとか......。)


 色々と思う事があったが、明日冒険者ギルドで話してみようと思い就寝するのであった。


 翌日ギルドに向かって歩いていると、ギルド内から賑やかな声が聞こえてきた。

 中に入るとざわめきの中心にハルトが居て、昨日の件を語っているようだった。

 少し離れた位置で聞いているとハルトがあの件を話し出した。


「ワイが死を覚悟した相手を、一瞬で切り刻んだウルフが頭から離れへん。あのウルフはなんて言う魔物なんやろうか。」


「そんなウルフが存在するんですか? それにしてもハルトさんを助けるってなると、名の知れたテイマーなんでしょうね。」


「そやな。せやけどランキング戦では見たこともない少年やったで。他の情報っちゅうとウルフの前に出してた色違いのドラゴンくらいやな。」


「色違いのドラゴン?」


「おい、まさかFランクトーナメントに居たやつか?」


「なんや。見たことあるんか?」


 バレそうな気配がしたから逃げようと扉に手を掛けた瞬間、ガラン・オルフェと目があった。

 ハルトの話を聞いていたガラン・オルフェはニヤリと笑みを浮かべて俺の名前を呼ぶ。


「エレン。ちょっと待ちな。」


「はい。何でしょう…。」


「災害級の魔物を倒したのはお前か?」


 ニヤニヤ笑いながら話を振ってくるが、俺は違いますと答える。

 しかし全員が俺の方を振り向いてきた為、ハルトに俺の存在が気付かれてしまった。


「あ! あん時の少年!!」


 もう言い訳が出来なそうになり、俺は頭を押さえてため息を吐く。


「ハルトさん。ご無沙汰してます。」


「少年のお陰で助かったわ。でも礼も言わせずに帰るんはあかんで。」


「はい。でもあんまり目立ちたくなかったもので……。」


 俺の答えにハルトは訳がわからなそうに首を傾げる。

 確かに冒険者としては目立った方が得になる点が多いからハルトの疑問もわかる。

 少し沈黙した後、ガランが口を開く。


「会話してる最中に悪いが、ハルトとエレンは今からギルド長の部屋に来るように。」


 ノックをしてギルド長の部屋に入るとバスターとガランが待っていて、いきなり質問攻めを食らった。

 第2級災厄はどの様な魔物だったのかとか、どうやって倒したかなど。

 詳細を細々と話すと、ガランはため息を吐いて話しかけてきた。


「ハルトでさえ負けそうな相手だったのだ。第1級災厄だったと考えよう。その魔物を一瞬で倒したウルフとやらを見せてくれないか?」


 ガランは俺の方を向いてウルフの召喚を催促する。

 でもここでは建物が小さくて出せないと言うと、バスターにギルドの地下室に案内される。


「ギルドに地下室なんてあったんですね。」


 案内された地下室は高さ、広さ50メートルはありそうな四角形をしていた。

 何でも災厄モンスターが出た際に避難出来るシェルターらしい。

 バスターとガランは目をキラキラさせながら俺の召喚を待っている。

 仕方がないので渋々召喚する事にした。

 

『レッド。リバース。』


 体長8メートルはある金色のウルフが召喚される。

 バスターとガランは驚きに目を丸くしたまま硬直した。

 ハルトは前日に見ていたから驚く事なくレッドを観察している。


「コイツはレジェンドウルフって名前でランク A Aです。」


 そう言うとバスターとガランは更に驚いて口をパクパクさせている。

 ハルトも名前とランクを聞いて驚いたのか、目を見開いて俺の方を向いている。

 沈黙が続いたが、ガランがゴクリと喉を鳴らした直後に口を開いた。


「レジェンドウルフってあの伝説のウルフか……?」


「そうみたいですね。」


「簡単に言うがレジェンドウルフは絶滅したって話だぞ。そもそも契約出来るのかも怪しい魔物だ。」


「はぁ……。見つけて契約出来ちゃったみたいです。」


 進化の事を黙って普通に契約をした事にしたが、ガランは納得していなそうな顔をしていた。

 バスターは興奮していて、俺と会話もせずにレジェンドウルフの全身を眺めたり、体を触ったりしている。

 ハルトはレジェンドウルフを眺めながら難しい顔をしている。

 そして1人で良しと頷いてから話しかけてきた。


「エレンと言ったか? ワイとパーティーを組んでくれへんか?」


 急なパーティーの申し出に戸惑ったが、CランクがSランクの申し出を断るのも良くなさそうだし、一応理由を聞いてみる事にした。


「急ですね……。何か困ってる事でもあるんですか?」


「そうやな。Sランクトーナメントには2対2のタッグ戦があるのは知ってるか?」


「知らないですね。まだ冒険者登録したばかりですし……。それよりCランクがSランクの試合に出れるんですか?」



 そう言うとガランが割り込んできて口を開く。


「タッグバトルはSランクテイマーが、ランク不問で1人の冒険者を選んでチームを組むんだ。Sランク同士で組むのも良し。伸び代がある若手を選んでもいいんだぞ。」


 ガランの言葉に納得して、ハルトの言葉を聞き入れる。

 何でもランキング1位から3位が別次元の強さらしく、俺の力を借りたいみたいだ。

 ガランもそれはいい考えだなと賛同している。

 ハルトの相方として出て活躍出来ればいきなりSランクも夢じゃないらしい。

 タッグバトルの件を了承すると、ハルトは来月にあるタッグバトルまでに新しい魔物と契約してくると意気込んでどこかに行ってしまった。


『レッド。シール。』


「ガラン・オルフェさん、バスターさん。俺もそろそろ受注しているクエストの期限が切れそうなので木の実を探しをしてきます。」


「あぁ。それは構わんのだが、今回の討伐報酬を受け取ってからにしてくれんか?」


「そうじゃな。第1級災厄として白金貨10枚を支払うから上で待っててくれんか?」


 ガランとバスターに止められて、ギルド受付の近くで待つ事にした。

 数分待つとガランがやってきて白金貨10枚を渡してくる。

 因みに白金貨1枚で金貨1000枚分の価値がある。

 そんな大金持ち歩きたくないと言うと、ギルドカードの口座に入れとく事も出来ると言われて、白金貨1枚は手持ちに残して9枚を口座に入れておいた。

 それとギルドカードの口座は別のギルド支店でも使えるらしい。


「じゃあ今度こそクエスト行ってきます!」


「おう。来月のタッグ戦楽しみにしてるぞ。」


 最後にガランと話してギルドを後した。





 森に着くと同時にレッド、ドラドラ、プラチナを召喚する。

 先日のバトルでドラドラ、プラチナ、レッドのレベルがどれくらいまで上がったか確認する為だ。


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レッド「23/140」


プラチナ「40/40」


ドラドラ「40/40」


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(おぉ。プラチナとドラドラが進化出来るじゃん。あのキマイラっぽい奴、相当経験値持ってたんだな。)


 とりあえずプラチナの進化をタッチすると、2つの進化先が出てきた。


 1、マジェライトゴーレム(ランクB+)新種

 2、魔鉱パラセクト(ランクB)新種


《マジェライトゴーレム:全身マジェライト鉱石に包まれたゴーレム。無類の硬さを誇り、炎攻撃にめっぽう強い。)


《魔鉱パラセクト:魔鉱石の甲羅を背負った昆虫。引っ込み思案であまり顔を出さないが、いざと言うときはその防御力で仲間を守る。》



(なるほどな。これはマジェライトゴーレム一択かな。)


 俺はマジェライトゴーレムをタッチする。

 するとストーンタンクは光に包まれ、体長10メートルくらいのゴーレムに進化した。

 マジェライト鉱石は知らないが見た感じだと、とてつもなく硬そうな石だと思う。

 因みに頭には兜を被っていてゴーレムって言うより武士のような見た目だ。


「よし。スキルを見るか。」


プラチナをじっと見つめてステータスを表示させる。


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       【プラチナ】


種族:マジェライトゴーレム(新種)

LV:1/75

ランク:B+

スキル:1、カウンター

    2、リフレクション


全身マジェライト鉱石に包まれたゴーレム。無類の硬さを誇り、炎攻撃にめっぽう強い。


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「反撃と反射か。中々偏ったスキルだな。」


 プラチナのステータスをマジマジと見つめて特徴を掴むと、次はドラドラの進化先をタップする。

 やはり進化先は2つだった。


 1、天竜(ランクA)亜種

 2、雷竜(ランクA)亜種


《天竜:天空を縄張りとしている竜種。風系スキルが得意で、その気になれば嵐を呼び寄せる事が出来る。》


《雷竜:雷より強い電撃をその身に宿らせる事が出来る。その気になれば雷の雨を降らせる事も可能。》



「これは迷うな……。どっちもカッコ良さそうな上にランクも一緒か。説明文的にも同等の強さって事だろうな。」


 めちゃくちゃ悩んだ結果、天竜を選ぶ事にした。

 進化先の天竜をタッチするとドラドラは光に包まれる。

 光が収まっていくと、そこには前世のゲームに出てくるような立派なドラゴンが姿を見せた。

 体長は15メートルくらいあるだろうか。

 その格好良さに叫びたい気持ちがあったが、それを抑えてステータスを確認する。


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       【ドラドラ】


種族:天竜「亜種」

LV:1/100

スキル:1、スカイクロー

    2、天竜の逆鱗

    3、ストームブレス

    4、???


天空を縄張りとしている竜種。風系スキルが得意で、その気になれば嵐を呼び寄せる事が出来る。


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(もうタッグ戦に負ける気がしなくなってきたな…。とりあえず依頼の木の実を採取して帰るか。)


 レッドの嗅覚を頼りに木の実を探すと、すぐに目当ての木の実は見つかり帰宅する事になった。

 ギルドでクエスト報告をしたら宿に戻ってのんびり過ごす事にした。

 



それから毎日のように森に出掛けてレベル上げをしていたが、流石にここまで強くなると中々上がらず進化出来ないまま1ヶ月が経った。



【現在のレベル】

レッド39/140


プラチナ32/75


ドラドラ30/100


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