第3話、トーナメント
マナと分かれて1人旅をする事にした俺は、更に北にあるウルガルド王国を目指す事にした。
ウルガルド王国は世界に3つしかない大領地の1つだ。
「まずは、ウルガルド王国のギルドに登録して資金調達しないとなぁ。」
マナが休んでる宿屋に手持ちのお金を全て置いてきたので、俺は数日分の食料以外を何も持っていなかった。
「とりあえずウルガルド王国までレッドの背中に乗って行くとするか」
『レッド、リリース。』
レッドが召喚される。
俺はレッドの背中に乗ってウルガルド王国に向かって行った。
道中で商人らしき馬車を見かけて足を止めて見てみると、魔物に襲われていた。
俺は即座にドラドラの魔石を手に持ち、レッドに馬車の近くまで走ってもらう。
「大丈夫ですか!?助太刀します!」
「おぉ!何方かわかりませんが助かります。襲ってきたのは、Dランクのストロングボアです!気をつけて下さい。」
ストロングボアを見てみると、右足に古傷が見えた。
(もしかしたらアイツ。俺が4年前に追い払った奴じゃないか?)
俺はドラドラを召喚すると、ストロングボアがビクっとして警戒を露わにした。
ドラドラが少しずつ近づいて行くと、ストロングボアは後退していき、ドラドラが走り出すとストロングボアは逃げ出して行った。
(やっぱりあの時の奴だったか……。)
撤退したストロングボアを見て、商人は何度も頭を下げてきた。
俺は自己紹介をして、助けたお礼に金貨10枚を受け取る。
因みに金貨1枚で日本円の1万円相当だ。
商人の方もウルガルド王国に行く最中だったと言う事で、同行する事にした。
「エレンさんって強そうなのにFランクテイマーなんですか?」
「はい。つい先日にギルド登録をしたばかりでして、このドラドラも子供のドラゴンって事で、Fランクから始める事になったんですよ。」
「ほへー。Dランクの魔物を威嚇だけで撤退させられるのにFランクスタートですか……。」
俺は商人にこれまでの成り立ちや、これからの目標等を話していると、いつの間にかウルガルド王国に到着していた。
「エレンさん。本当に助かりました。」
「いえいえ、こちらこそ。お金が無かったので助かりました。」
商人とはウルガルド王国に着くと、すぐに別れる事になった。
俺は冒険者ギルドでクエストを受ける為にギルドに向かい、ギルドの中に入ると魔物を出して自慢している者や、昼間からビールを飲んで騒いでる者などがいた。
「さすが大領地のギルドって感じだなぁ。」
俺が感慨深くしていると、受付嬢がキョロキョロしている俺に気が付いて話しかけて来てくれた。
「ウルガルド支部は初めてですか?」
「はい。つい先日アイスホークでギルド登録したばかりなんですよ。」
俺は受付嬢にギルドカードを見せてそう言った。
すると受付嬢は満面の笑みで簡単なクエストを紹介してくれる。
「このクエストは初心者の方が、好んでやっておられますよ。」
「へー。じゃあそれを受けます。」
受付嬢に渡されたクエストを即決して、森に向かう事にした。
クエストの内容は木の実の採取だった。
この木の実は魔物専用らしく、魔物の大好物らしい。
食べると10分間は素早さ、攻撃力、防御力のどれかがランダムで上がると言う事で、結構な高値で取り引きされているみたいだ。
(まぁクエストはオマケみたいなもんだけどな。)
俺はクエストよりもレベル上げを重点的にやると決めていた。
森に到着してドラドラとレッドを召喚する。
『ドラドラ、レッド。リバース。』
2匹が召喚されて森にいる弱い魔物を葬って行く。
4時間ほど魔物を倒していると、ドラドラのレベルが20に到達した。
「やった!進化出来るぞ!」
ドラドラのアイコンを見て進化タップすると、また2つのルートが表示された。
1つ目がドラゴン、Cランク。【亜種】
2つ目がワイバーン、Dランク。【亜種】
と書いてあるので、詳細を見る。
《ドラゴン:大地の覇者。攻撃力、防御力、体力がずば抜けて高い。》
《ワイバーン:通称、空飛ぶ竜。スピード特化で防御面には期待できない。》
(ほうほうほう。ドラゴンにすればいきなりCランクか。それにドラゴンの方が詳細も良さそうだな。)
俺は迷わずドラゴンをタップする。
ドラドラが光り輝き、10倍くらいの大きさに膨れ上がった。
俺はドラドラを見て、前世のゲームに出てくるドラゴンを思い出す。
「でかいなぁ……。それにめちゃくちゃ強そうだ。」
大きくなったドラドラのステータスを確認する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ドラドラ】
種族:ドラゴン【亜種】
LV:1/40
スキル:1:火炎の息
2:アイアンクロー
3:????
大地の覇者。攻撃力、防御力、体力がずば抜けて高い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(次のレベルは40か。長いな……。それにリトルドラゴンの時にもあったけど、スキルにある使えない技は何だろ?)
俺はスキル3に疑問を持ったが、そのうち使えるようになるだろうと楽観視する事にした。
ドラドラが進化した頃には日が暮れだしたので、一旦ウルガルド王刻に戻ることにする。
ウルガルド王刻に到着して宿屋を取ると、他の客がコソコソ話しをしてるのが聞こえてきた。
「お前、明後日のランクアップトーナメントに出場するか?」
「優勝できる気がしないしなぁ。今月は辞めて来月のトーナメントにするわ。」
「そっか。お前のランクだと出場費も高いし、その方が良いか。」
なにやら2日後にトーナメントがあるようだ。
何のトーナメントかわからなかったので、明日ギルドの受付嬢に聞くことに決めた。
朝起きてギルドに向かい、受付嬢に宿屋で聞いた内容を聞いてみた。
「2日後にトーナメントがあるって聞いたのですが、トーナメントって何ですか?」
「えーと。アイスホークで登録なさった際に聞かされなかったのですか?」
「えぇ。色々ありまして……。詳細は全て相方が聞いていたんですよ。」
「そうですか。冒険者をやっていれば色々とありますものね。」
そう言って受付嬢はトーナメントについて、詳しく説明してくれた。
トーナメントはランクごとに分かれていて、そこで活躍や優勝をすると、ランクが上がったり報酬が出たりするらしい。
特にSランクトーナメントで活躍すると、この国のランキングに乗り、他の国で顔を利かせやすくなるようだ。
「なるほど。じゃあ俺も2日後のトーナメントに参加します。受付はどこでするんですか?」
「ここで出来きますよ。ただ、私の意見を言っちゃうと、冒険者になったばかりの初心者には厳しいですよ?それでも登録しますか?」
「はい!お願いします。」
「じゃあ、Fランクだから金貨1枚ですね。」
俺は満面の笑みで返事をして、金貨を渡したら登録は完了した。
登録を済ませると、トーナメントが開催される場所と日付などを説明される。
特に重要だった説明は、魔物が3匹必要だと言う事だった。
俺は急いで森に向かい、3匹目の魔物と契約する事にした。
「レッド、リバース。この辺りに魔物が居ないか探してきてくれ。」
レッドはガウっと返事をして、森の中を駆け出して行く。
ぼんやりレッドの帰りを待っていると、茂みから物音がしたので振り向いた。
そこには見たことのない魔物が現れたのだった。
見た目は岩のような外皮で、隙間から赤い瞳が2つ覗いている。
その魔物から敵意は感じないが、一応ドラドラを召喚することにした。
ドラドラと見知らぬ魔物が見つめ合っていると、レッドが戻ってきた。
「レッド。まだ敵か分からないから攻撃はするなよ。」
すぐレッドに指示を出して、俺は見たことのない魔物に近づいていく。
腕を伸ばせば届く距離まで来ると、体を擦り付けてくる。
それもまだ契約していない魔物が……だ。
(なにが起こってるんだ……?契約していない魔物に懐かれてる……?)
契約をしていないのに懐かれたことに驚き、俺は見知らぬ魔物に声を掛けたのだった。
「何だかわからないけど、俺と契約したいのか?」
見知らぬ魔物は頷くかのように、体を上下に動かした。
それを見て俺は契約魔法をすることにした。
『この地に生まれし高貴なる者よ。神の導きと思わせる、この素晴らしき出会いに感謝を。俺と運命を共に歩んでくれ。』
『サモンズコントラクト』
陣が光り輝き、契約は成功したようだ。
そしてステータスを見てみると、色々と頭が混乱しそうになった。
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種族:ストーンタンク(新種)
LV:1/40
ランク:C
スキル:1、身代わり
2、ストーンブレイク
硬い外皮に覆われ、素顔を見たものは居ない。この世に1匹しか居ない魔物。
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(新種……?ランクC……?)
新種だと言う事とランクCの魔物と契約出来たことに驚いた。
(まぁ……。契約出来たんだし、深く考えるのは辞めるか。)
驚いていても何もならないと思い、名前を付けることにした。
「見た目が硬そうだしプラチナって名前で良いか?」
ストーンタンクは頷くように、体を上下に動かしたのでプラチナに決めた。
これでトーナメントに出場出来るようになったので、ついでにレベル上げをすることにした。
トーナメントまでの2日間で進化までは行かなかったが、ある程度はレベルを上げる事が出来た。
「ついにトーナメントの日がやってきたな。」
俺はやる気満々でトーナメント会場に足を運ぶ。
受付けから250番の番号札を渡され、他の冒険者を見回す。
緊張している者や気合の入ってる者など様々だ。
(思ったより人が多いな。この中で上位を目指すのは中々難しそうだ。)
因みにFランク会場は隣のEランク会場より狭く、観客も全然居ない。
ランクが上がるほど客も増えて、会場も大きく派手になるらしい。
(ここから俺の物語が始まるのか。)
ワクワクしながら待っていると、開催者らしき人が歩いてきた。
祭壇に登り出場者に向かって声を掛けてくる。
「トーナメントに来てくれた諸君。私は冒険者協会の理事を務めている、ガラン・オルフェだ。今日この中からランクが上がる者が居るだろう。存分に実力を発揮するが良い。君たちの今後の活躍に期待している。」
冒険者達はガラン・オルフェの激励に叫んだり、震えたったりしている。
俺も武者震いをしながらニヤリと笑い、ガラン・オルフェの話を聞いていた。
因みに貴族にはガラン・オルフェのような苗字がある。
それと貴族とは別だが、冒険者で名を響かせるとテイマーでも2つ名を貰える事もあるらしい。
開会式が終わり予選が始まろうとしていた。
予選は魔物による火力テスト、耐久テストをして上位36名が、トーナメントに出場出来るらしい。
その中で上位4名はシード枠になるみたいだ。
最初は火力テストになるみたいで、テイマー達は3匹だったり、1匹だったりと魔物を召喚して行った。
出してる数に違和感を感じたので、測定者に質問してみる事にした。
「すみません。魔物の出してる数が違うのは何故でしょうか?」
「あー。複数出してる人は、登録している複数魔物で同時攻撃をして、火力を稼ぎたいのでしょう。」
「では、1匹のみの人は何故3匹出さないのですか?」
「それは同時攻撃は難しく、1匹の魔物だけが攻撃を先に当てると、測定結果は最初に当たった魔物だけになります。なので、3匹の連携が取れてない方が1匹なのでしょう。」
「なるほど。丁寧にありがとうございます。」
俺は測定者の言葉に納得をして、自分の番が来るまで他の参加者を観察していた。
(あの人は耐久で頑張らないと落ちるなぁ。おっ。今の人は結構火力あったな。)
測定機の数値が面白く、魔物も出さずに傍観していると俺の番が来た。
慌てて1匹の魔物出す。
「ドラドラ、リリース。」
俺がドラドラを出すとざわめきが大きくなっていく。
「ドラゴン!?」
「初めてみる色をしてるけど……。」
周りがざわざわしているのを気にせず、俺はスキルをタップした。
スキル2、アイアンクロー。
ドラドラの爪が輝き初め、測定器にアイアンクローを叩き込むと、測定器に強烈な音がして、4500と言う数値が出た。
俺がさっきまで見ていた数値の最大が98だったので、最高記録を更新した事になる。
さっきまでざわざわしていた者達も、そうでない者達も、測定器の数値に目を奪われ、呆然としていた。
測定者まで驚いた顔で数値を見ている。
「ドラドラ、シール……。」
俺はドラドラを魔石に入れて、逃げるように下がって行くのであった。
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