第2話、冒険ギルド
後日、俺は村長に呼び出されていた。
ドラゴンとの契約や俺の将来について聞きたいらしい。
「エレンよ。どうやってドラゴンと契約したんじゃ?」
「話せば長くなるんだけど……。俺はストロングボアと出会って死にかけたんだよね。その時に頭の中で声が聞こえてきて、無我夢中に契約呪文を唱えたらドラドラが急に……。」
少し沈黙した後、俺はドラドラとの出会いを偽りなく村長に報告した。
「ふむ……。頭の中に声が聞こえて、呪文を唱えたら何も無かったところに、そこのドラゴンが現れたと?」
「うん。そんな感じ。……そんな顔で見られても嘘じゃないからね?」
村長に偽りなく報告したが、村長は一向に信じてくれなかった。
「まぁよい。虚偽を確かめる為に、お前さんを呼んだわけじゃないしの。エレン、この村を出て世界を見て回りたくないかね?」
「!?」
「すぐにって訳じゃないが、お前さんが12歳になったらワシの権限で外の世界に出してやろう。ドラゴンのテイマーがこんな小さな村で、働いて寝る生活をしても勿体ないしの。」
俺は村長の言葉に目をキラつかせた。
「外の世界に出たい!村長。12歳になったら世界を旅して最強のテイマーを目指すよ!」
「じゃからすぐに答えを出さなくても……ん?お前さん、外の世界に出たいと言ったか?」
「うん!もう決めたよ。心残りは父さん、母さん、マナと別れなきゃいけない事だけど……。」
村長との話し合いも終わり、俺は4年後に村を出る事を、父さん、母さん、マナに報告した。
マナは泣きそうな顔で行かないでって言っていた。
世界を回ってS級テイマーを目指す夢を話したら、マナは泣きながら私もS級テイマーになるって、可愛い事を言ってくれた。
父さん、母さんは世界1位のテイマーになれよって応援してくれた。
他にもケガには注意しなさいとか危険な事はするなとかの小言も色々と。
〜〜時は立ち〜〜
4年後。
俺は12歳になり旅に出られるようになった。
マナも村長に旅に出ると毎日しつこく懇願したら、心の折れた村長が許可を出したようだ。
そのお陰で俺はマナと一緒に旅を出来る。
「父さん、母さん!行ってくる!!」
「行ってらっしゃい。たまには帰ってきて顔を見せにきなさいね。」
「何かあったらすぐに帰って来いよ。ここはエレンの故郷だからな。あ、マナちゃんが美人になったからって手は出すなよ。」
「しないよっ!」
最後に他愛ない会話をして、両親は俺たちを見送ってくれた。
「とりあえず、村長に言われた通りに北のアイスホークって町に向かって歩こうか。」
「うん。エレンと一緒ならどこまでだって行けるよっ!」
俺とマナは話をしながらアイスホークを目指して歩いていく。
この4年の内に、マナが仲間にした魔物はスライム、キャタピラーの2匹だ。
因みに俺は親孝行する為に、畑やら家事やら手伝いをしていたので、森には1度も行かなかったからドラドラの1匹だけだ。
「マナは森に頻繁に入ってたし、スライムとキャタピラーのレベルが少し上がったか?」
「……レベルって何?」
「ほら、このアイコンを見たらレベルが書いてあるじゃん。」
「アイコン?」
俺はマナにレベルの事を聞いたが、マナは魔物にレベルがあることを知らなかった。
それと、アイコンも見えないらしい。
俺も他人の魔物のアイコンは見えないが、ドラドラのはしっかりと見えている。
(もしかして、アイコンって普通は見えないのかな……。)
「変なこと言って悪かったな。ドラドラを仲間にした時にアイコンが見えるようになったから、マナも仲間になった魔物にはアイコンが表示されると思ったんだ。」
「へー。よくわからないけどエレンはすごいなぁ。」
「よくわからないなら凄くないじゃないか。」
俺は苦笑いしながらマナに言い返した。
でもマナは首を横に振って、エレンは凄いよっと何度も褒めてくる。
俺は褒められ慣れてないせいか、恥ずかしくなり顔をそっぽに向けた。
それから暫く歩くと、狼の見た目をした魔物に遭遇。
「あれはレッサーウルフか。」
「確かFランクの魔物だよねっ。」
マナと相手のランクを確認して、仲間に出来ると確信する。
「よし、アイツと契約するか。マナが契約したいなら譲るけど、どうする?」
「私はもう2体と契約してるから、エレンが契約していいよっ。」
マナが譲ってくれたので、俺は軽く頷き呪文を唱える。
『この地に生まれし高貴なる者よ。神の導きと思わせる、この素晴らしき出会いに感謝を。俺と運命を共に歩んでくれ。』
『サモンズコントラクト』
レッサーウルフの中心に陣が出来上がり輝いた。
少ししたら陣は消えて、レッサーウルフは俺に顔を擦り付けてきた。
「よし。成功だ。」
「やったねっ。エレンの呪文始めて見たけど、カッコ良かったよ。」
「あ、ありがとう。」
マナに褒められて、照れながら言葉を返す。
「名前を決めなきゃな。マナならどんな名前にする?」
「もふもふ君!」
「……却下。見た目が赤茶色だし、レッドでいっか。」
「ぶーー。」
俺の却下にマナは頬を膨らませるが、マナの相手をするよりやらなきゃいけない事がある。
マナには悪いけど、こっちが気になるのだ。
契約にしたレッサーウルフをジッと見ると、やはりアイコンが表示された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
種族:レッサーウルフ
LV:1/15
ランク:F
スキル:かみつき
ウルフ系で最弱。攻撃力、防御力は低いが、素早さが高い。気弱な性格で、1匹だと他の魔物を襲えない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(なるほどな。スキルは1つしかないけど、ランクが低いせいか、ドラドラよりレベル上限が低いな。)
俺はアイコンを見て、レッサーウルフの情報に目を通していく。
レベル上限に達したらどうなるのか疑問を持ったので、マナと今後の方針を話すことにした。
話し合った結果、レベルの最大値を目指す事になった。
「ねぇ。どうやったらレベルって上がるのかなぁ?」
「多分、魔物を倒せば上がるんじゃないか?」
「うーん。ちょうど魔物が出やすい森の中に居るし、魔物を倒してみる?」
マナはそう言ってくれたが、検証するなら1人の時でも出来る。
先に次の町を目指す事にした。
「とりあえず、レッドを魔石に収納するか。」
『レッド、シール。』
レッドは光に包まれ、魔石に吸収されていった。
魔石にレッドと言う名前が刻まれているのを確認し、アイスホークを目指して歩いて行く。
道中に魔物が出てくれば倒して検証出来たのだが、整備された道を歩いていたので、全く魔物と遭遇しなかった。
4時間くらい1本道を歩いて行くと町が見えてきた。
「わー!エレン。町だよ!おっきい!!」
「はしゃぎすぎだよ。でも、確かに大きいな。」
マナは凄く驚いていたが、俺は前世の記憶もあるのでそこまで驚く事はなかった。
俺とマナはアイスホークに入り、当初の目的だった冒険者ギルドに登録する事にした。
この世界には2つのギルドがある。
冒険者ギルドと商人ギルドだ。
どちらか一方のギルドにしか入らず、掛け持ちはタブーらしい。
でも俺とマナはSランクテイマーを目指しているから、冒険者ギルドに入ることは4年前から決めている。
「ようこそ。冒険者ギルド、アイスホーク支部へ。私は受付嬢のマフィンと申します。」
二十歳くらいの金髪美女が話しかけてくる。
手足がすらりとしていて、清楚感を漂わせるマフィンに目を奪われそうになる。
そんな俺を見て、マナが少し不機嫌そうな顔をしていた。
気まずい雰囲気になる前に、俺は受付嬢に登録の申請をすることにしたのだった。
「えっと……。冒険者になりにきました。」
「わかりました。それでは契約している魔物の魔石をここに置いて下さい。」
俺とマナは契約した魔石を受付嬢に渡すと、魔石を何かの機械でスキャンしていた。
何とこの機械で契約した魔物のランクを確認出来るみたいだ。
マナはスライムとキャタピラーがFランクの魔物だったので、Fランクテイマーのギルドカードが渡された。
次に受付嬢が俺の魔石をスキャンするが、機械からエラーと言う文字が出ていた。
それを見た受付嬢は驚いた顔をして、奥の部屋へと入って行く。
数分待つと奥の部屋からざわざわと声が聞こえてきて、体つきの良い中年のおじさんが現れた。
「エレンと言ったかな?ちょっと良いかい?」
俺は中年のおじさんに呼ばれて、奥の扉に入っていく。
「まず先に自己紹介をしよう。私はここのギルド長をしているゴランだ。エレン君に聞きたい事は、スキャン出来ない魔物と契約していると言う事だが……。」
「スキャン出来ないってどう言う事ですかね?」
「まだ世の中に知られていない魔物はスキャン出来んのだよ。とりあえず、どんな魔物か見せてくれないか?」
「了解しました。」
俺はドラドラ、リリースと言ってリトルドラゴンを召喚する。
「ほぉ〜。ドラゴンは何度か見た事があるが、子供のドラゴンは初めてみたな。」
「そうなんですか?」
「あぁ、ドラゴンと契約出来るテイマーは高ランクなんだが、君のドラゴンは子供で査定基準がわからないな。エレン君には悪いけど、Fランクスタートでも良いか?」
いきなり高ランクでスタートするよりかは気楽だと思い、ゴランの意見に賛同した。
話し合いを終えた俺はゴランからFランクのギルドカードを受け取り、マナの居る控室に戻るのであった。
控室でマナにゴランとの事を話し終えると、外は暗くなっている。
今日はもう遅いからという事で宿屋を探して、そこで一泊することにした。
次の日、マナにレベル上げをしたいから別々の行動を取るように話し合いをした。
マナに一緒が良いと駄々をこねられたが、俺の意思がブレそうにないのを感じて渋々諦めてくれる。
『ドラドラ、レッド。リリース。』
ドラドラとレッドが召喚されて、2体に話しかける。
「ドラドラ、レッド。今日はお前たちのレベル上げをするから魔物と遭遇したら戦闘するぞ。」
「「キュイ。ガウ。」」
二匹は同時に返事をしてくれた。
森に入るとスライムとニードルワームと言う、口がギザギザした芋虫のような魔物が出てきた。
ドラドラとレッドで危なげなく倒すと、アイコンにレベルアップの表示が現れたのだ。
二匹ともレベルが2に上がっていたので、俺は目を輝かせて次々と魔物を倒していく。
次々と魔物を倒していくと、あることに気付いた。
(レッドが止めを刺してないのに、レッドのレベルが上がったな。戦闘に参加するだけで、経験値は貰えるのか?)
色々と検証しながら魔物を葬って行くと、ついにレッドのレベルが15に到達するのだった。
アイコンを見てみると、名前の横に進化って文字が書いてある事に気付く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【レッド】
種族:レッサーウルフ ≪進化≫
LV:15/15
ランク:F
スキル:かみつき
ウルフ系で最弱。攻撃力、防御力は低いが、素早さが高い。気弱な性格で、1匹だと他の魔物を襲えない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
進化の文字をタップすると、2つのルートがアイコンに表示された。
1つ目がウルフ、Eランク。
2つ目がウルフチャンプ、Eランク。
と書いてあったので、詳細を見てみる事にした。
《ウルフ:気高きプライドを持ち、風のような速さで地を馳ける。》
《ウルフチャンプ:二足歩行になり、素早さが遅くなる代わりに、腕力が強くなった。》
「なるほど、進化してランクを上げる事ができるのか。」
俺は前世でのゲーム感覚に似てるような気がして、ワクワクが止まらなくなった。
「ドラドラも力は強いし、機動力のあるウルフにするか。」
少し考えてウルフの進化ルートにする事を決めた。
ウルフの文字をタップするとレッサーウルフの体が輝き始め、レッサーウルフを一回り大きくしたような毛並みの良い魔物に進化したのだ。
俺は目をキラキラさせながら、レッドの毛並みを撫でてみる。
レッサーウルフの時とは違いってサラサラした毛の感触が堪らなく、顔を付けたりモフモフしてレッドと戯れていた。
「あっ、ステータス見るの忘れてた。」
前世の愛犬シルバーとレッドが被り、俺はレッドに夢中になっていた。
現実に戻り、レッドをジッと見つめるとステータスのアイコンが現れる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【レッド】
種族:ウルフ
LV:1/20
ランク:E
スキル:1:ひっかく
2:かみつき
気高きプライドを持ち、風のような速さで地を馳ける。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(レベルは1になってるな。なるほど……。色々とわかってきたぞ。)
どうやら俺にだけレベルアップと魔物を進化させる事が出来るようだ。
何でかはわからないけど、レベルを上げて進化させまくれば、俺もSランクテイマーになれるかもしれない。
そうだと知った俺はマナと別行動を取り、1人で色々やった方が効率的だと考えた。
俺は話し合いをする為に宿屋に戻り、マナの帰りを待つ事にする。
「マナ、おかえり。」
「ただいまぁ。クエスト疲れたよぉ。」
「そっかそっか。大変だったね。お疲れ様。マナに大事な話しがあったんだけど、疲れてるみたいだから明日にしよっか。」
「そうしてくれると助かるぅ。」
マナはヨロヨロと風呂場に向かい、ご飯を食べたらすぐに寝てしまった。
「おやすみ。マナ。」
明日大事な話しをすると言ったが、マナは多分頷いてくれないと思う。
村長のくれた旅費をここに残して、俺は遠くにある街に行こうと考えた。
(マナ。手紙だけ残して旅立って悪いな。でもお前も高ランクテイマーになれば、また俺と会えるはずだ。お互い強くなってまた会おうぜ。)
マナの顔を撫でてから俺は町を出ていった。
《マナがエレンの手紙を読んで号泣する事になるが、それはまた別のお話……。》
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