転生した俺にだけ使える魔物進化〜そして伝説になる

瑠偉

第1話、異世界転生

 何ということもない平凡な日常。

 俺は近くの高校に通う普通の高校生で、今年17歳になる。

 彼女も今まで出来たことがなく、他の人より優れた才能もない。

 そんな日常が大きく変わろうとしていた。


「シルバー、学校に行ってくるから大人しく待ってろよ。」


 シルバーに声をかけてから学校に向かう。

 俺の両親は2年前に交通事故で亡くなっていて、1人っ子だった俺の家族は愛犬のシルバーだけだ。

 友達らしい友達も居ないので、黙々と授業を終わらせて、すぐに帰宅しようと急ぎ足で校門を出て行く。

 そこで真っ黒な猫を見かけたのだった。

 動物が大好きな俺は、その真っ黒な猫をじっと見ていると、左足を怪我していることに気が付く。


「足を怪我しているのか……。」


 俺が話しかけると、ニャーっと元気のない声で鳴いた。


「包帯を巻いてあげたいけど、今はもってないしな……。」


 俺は真っ黒な猫を抱いて、家で手当てすることにした。

 家に着いた俺は、シルバーに声を掛けてから猫の手当てを始める。

 包帯を巻き終えた後、俺は猫の名前を考えた。


「うーん、お前は全身が黒いからブラックって名前にするか。それでいいか?」


 俺が猫に話掛けるとニャーっと元気に鳴いてくれた。

 それから元気になって俺の周りをクルクル回るブラックと、その近くで座ってるシルバーに食事をあげる。

 食事が終わると、ブラックがニャーっと外に出たそうな感じに鳴いてきたので、俺はブラックとシルバーを連れて近くを散歩する事にした。

 そして、近所にある公園に到着。


「シルバー、ブラック。公園の外には行くなよ!」


 っと俺は声を掛けて公園のベンチに腰を下ろした。

 シルバー、ブラックを一緒に遊ばせていたら、すぐに仲が良くなったみたいで、俺は微笑みながらその光景を見守った。

 ブラックは楽しくなってきたのか、今までより早く走り回り、俺がダメと言った公園の外に飛び出したのだった。


「ブラック!」


 俺は叱り付けるように怒鳴ったが、ブラックは道路の真ん中で蹲っていた。

 足のケガが完治していないせいで、途中で動けなくなったようだ。

 普段は車が来ない所なので、俺とシルバーは歩きながら、ブラックの場所に向かって行った。

 だが、今日に限って大型トラックが走って来たのだ。

 俺は慌ててブラックの元へ向かった。

 シルバーは俺より先にブラックの元にたどり着き、ブラックをくわえて俺の方に投げてくる。

 ブラックが俺の手元まで、届いたのを見届けたシルバーは、諦めたようにトラックを見つめ、一歩も動こうとしなかった。

 その様子を見た俺は、自分の命よりシルバーの命を優先させたのだった。


「シルバー、お前は絶対助ける!!」


 俺は叫びながら飛び込み、シルバーを弾き飛ばしたのだ。

 シルバーの驚愕した顔を最後に、三浦洋介の意識は途絶えた。



========================



 俺はエレンと言う名で異世界に転生した。

 最近まで三浦洋介の記憶はなかったが、8歳の誕生日を迎えた日に、なぜか夢の中で前世の事を思い出した。


 この世界には魔物が居て、人間は契約魔法で魔物を仲間にする事が出来るらしい。

 人間には魔力があり、高ければ高いほどランクの高い魔物と契約できるみたいだ。

 そして契約出来る魔物の数は、1人で3体までと決まっている。

 もし3体以上契約すると体に負荷が掛かり、契約した魔物が暴走するらしい。

 契約した魔物は死ぬまで契約を破棄する事は出来なく、もし死んでしまった場合は新しく3体目を仲間に出来るようになるようだ。



 俺は8歳になる今日から、魔物と契約する事を許されている。


「エレン、お前も今日からテイマーだ。森で好きな魔物を1匹契約して来ていいぞ。

「森の奥にいるE、Dランクの魔物は契約が成功するかわからないから、森に入る手前に居るFランクの魔物にしなさいね。」


 父のゴンズと母のカレンにそう言われて、俺は森に向かって歩くと、近所に住む同い年の女の子と遭遇した。


「あ、エレン君も今から魔物と契約しに行くの?」


「そうだよ。マナも行くのか?」


「うん。そうなんだけど、1人だと怖いからエレン君も一緒に行こっ?」


 そう言ってマナは俺と一緒に森に向かって行った。

 マナは大人になれば絶対美人になると思う程、顔立ちが整っていて同年代では1番人気の美少女だ。


「そう言えばマナは何の魔物と契約するんだ?」


「Fランクのスライムよ。お母さんが初めての契約魔法だから1番簡単なのにしなさい。って言ってきたのよ。」


「ふーん。マナの母さんも心配症だなぁ……。まっ、俺の両親も似たようなもんか。」


 そんな話をしている内に、森から魔物が飛び出してきた。

 プルプルした半透明な見た目。


「マナ。スライムが出たぞ!」


 俺はマナにそう言うと、マナはすぐに行動を移した。

 マナは契約する呪文を唱えて、スライムとの契約を始めた。


『この地に生まれし高貴なる者よ。神の導きと思わせる、この素晴らしき出会いに感謝を。私と運命を共に歩んでくれませんか。』


『サモンズコントラクト』


 マナは契約呪文を唱えたら、スライムの周りに陣が出来上がった。

 スライムの周りから陣が消え、スライムはマナに近づき体をすり寄らせてる。

 どうやら契約は成功したみたいだ。


「やったなマナ。」


「ありがと、エレン君。はぁ〜、緊張したぁ……。」


 マナは安堵してその場に座り込んだ。

 契約したスライムを指でツンツンしたり、撫でたりしてスライムの感触を楽しんでるようだ。


「俺も契約してくるから、マナはここでスライムと遊んでいていいぞ?」


 そう言ってマナを置いて、俺は森の中に入って行った。

 父さんと母さんに言われた通り、森に入ってすぐの所で魔物を探していたが、全然魔物が居ない。


(うーん。父さん達には悪いけどもう少し奥に行ってみるか)


 俺は父さん達の言いつけを守らずに、森の奥に入って行く。

 辺りは薄暗く魔物の鳴き声は聞こえるが、一向に姿が見えない。

 そう思って更に奥に進んだ所、木をなぎ倒し突っ込んでくる魔物が見えた。


「ブフォー!」


 俺は必死に横に飛び込んで突進を回避。

 しかし回避が間に合わず、足が魔物の体に当たってクルクル回りながら俺は近くの木に激突した。


「ガハッ……!」


 全身に強い痛みが走った。

 俺はよろけながら立ち上がり突進してきた魔物を見る。

 全身が茶色い毛に包まれた猪のような見た目だ。


「なっ!

 なんでこんな所にストロングボアが!?」


 俺が見たのは森の最深部付近生息しているはずのDランクの魔物だった。

 頭の中が真っ白になる。

 俺は必死にこの窮地を打開する策を考えた。

 だがDランクから逃げられるとも思えず、ダメ元でストロングボアに契約魔法を唱える事にした。


『この地に生まれし高貴なる者よ。神の導きと思わせる、この素晴らしき出会いに感謝を。俺と運命を共に歩んでくれ。』


『サモンズコントラクト』


 ストロングボアの周りに陣が現れ、陣が光る前にパキンっと音を立てて陣は消えた。

 契約は失敗したみたいで、俺は即座に別の手段を考える。

 ストロングボアは契約魔法の失敗によって興奮状態になっており、悠長に考える暇は無さそうだった。


「ブフォー!」


 ストロングボアが声を荒げてこちらに突進してくる。


(どうやって逃げれば……!!)


 俺は必死にストロングボアの突進を回避しながら、村に向かって走る。


《○○○○、僕と契約して》


 頭の中に擬音混じりの声が聞こえた。

 周囲を見たけど、どこにも声の主は見当たらない。

 次第にストロングボアの攻撃は激しくなってきて、俺の体力も限界に近づいてきた。


(よく分からないけど、契約しないと俺はストロングボアに殺される。くそっ!もうやるしかないかっ!)


 俺は見えない魔物と契約をする事にした。


『この地に生まれし高貴なる者よ。神の導きと思わせる、この素晴らしき出会いに感謝を。俺と運命を共に歩んでくれ。』


『サモンズコントラクト』


 契約の陣が俺とストロングボアの中間に出来上がり、何もなかった所から1メートルくらいあるトカゲのような魔物が現れた。


(いったい何が起こったんだ……?)


 いきなり陣から現れたトカゲは、ストロングボアと相対し威嚇をする。

 ストロングボアも警戒したのか、小さく呻き声を上げていた。


「ブフォ……。」


「キュイキュイ……。」


 2匹の睨み合いはそう長くは続かず、同時に間合いを詰めて走り出した。

 俺は現状に付いていけずに傍観していたが、ストロングボアの方が優勢な展開になり始めてきた。


(このままじゃトカゲの方が負けてしまいそうだ。何か手助け出来ないか……。)


 俺はトカゲの方を見てみる。

 するとアイコンのような物が浮かび上がってきた。


(なんだこれ……スキル1、ファイヤークロー?)


 何故かこれを押せと、俺の体が勝手にアイコンをタッチしていた。


「ピュイッ!」


 トカゲが爪に炎を纏い、ストロングボアを切り裂いた。


「ぶふぉっっ!」


 ストロングボアは右足を大きく切り裂かれ、大きい声を上げた。

 ストロングボアはダメージを与えられ、トカゲを強敵と感じたのか、右足を引きずりながら逃走していく。

 俺は安堵の息を吐いてトカゲの方を見た。

 トカゲも俺を見て尻尾を振りながらこちらに向かってきた。

 その光景を見て俺はシルバーを思い出す。


(あぁ、シルバーもこんな感じに尻尾を振りながら俺に懐いていたなぁ。)


「なぁ、さっき声を掛けてきたのはお前か?」


 俺はトカゲに話掛けたが、トカゲの方は首を傾げただけだった。


「まぁいいや、お前のお陰で助かった。ステータスが見えるって事は、お前は俺の契約で仲間になったって事でいいのかな?

 えっと、ランクE……?お前Fランクじゃなかったのかよ。」


 俺はトカゲのステータスをよく見てみた。


-----------------------------------------------------

種族:リトルドラゴン希少種

LV:1/20

ランク:E

スキル:1、ファイヤークロー

    2、?????


普通のリトルドラゴンより頭脳や力が強い。Eランクだが、攻撃力、防御力はⅮランクの魔物並みと言われている。


------------------------------------------------------


「ドラゴン!?俺の初めての契約がドラゴン……。この世界でドラゴンと契約出来るのは、A、Sランクのテーマーだけだって父さんが言ってたぞ……。

 それにLV……はレベルの事かな?レベルがあるなんて聞いたことないぞ。」


 俺は疑問を感じながらも、先に名前を付けてあげる事にした。


「リトルドラゴンだから、リトドラ……。いや、ドラドラの方が呼び易いな。

 お前は今日からドラドラだ。それでいいか?」


「キュイキュイ!」


 ドラドラは嬉しそうに尻尾を振って来たので、俺は名前をドラドラに決めた。


「遅くなってきたし、そろそろ村に戻るぞ。みんな心配してるだろうし。」


 キュイっと返事をしてくれたドラドラを、両親に渡された5センチくらいの魔石の中に収納しようと呪文を唱える。


『ドラドラ、シール。』


 呪文を唱えるとドラドラは魔石の中に吸い込まれていく。

 俺は手の中にあるドラドラと書かれた魔石を見つめて、初めて契約した魔物に感情が高ぶった。

 因みに契約した魔物が死ぬと、魔石から名前が消えるらしい。

 俺が森を抜けると村の人が沢山居て、マナがこっちに向かって駆け出してきた。


「エレン君っ!」


 マナは俺に抱き着いてきた。

 その目には涙が潤っていた。


「エレン君が全然戻ってこないから、何かあったのかなって心配で心配で……。」


「あぁ。それで村の人に話をして、俺を助けに来てくれたってことか。ごめんなマナ。実は近場に魔物が居なくて、少し森の奥まで入っていったんだよ。」


 俺は先ほどあったことを全員に話すと、ゴンズとカレンに叱られた。


「あれほど森の奥に入っちゃダメって言ったのに!

 他にケガしてる場所はある?痛くない?」


「ごめん母さん。ケガもかすり傷程度だから大丈夫だよ。」


 俺は心配してくれていたカレンに謝って、ドラドラを召喚する事にした。


『ドラドラ、リリース。』


「こいつが俺の契約した魔物なんだ。種族はドラゴンで、名前はドラドラ。」


 ドラドラはキュイっと可愛く鳴き、皆に紹介されていった。

 村の人々は興味深々にドラドラを見ている。

 中にはドラゴンの契約者ってことで、テイマーを目指した方が良いとか、村の宣伝にしようとか騒いでる者も居た。

 村長だけは渋い顔をしてドラドラと俺を見比べていた。


(あ、レベルの事は打ち明けたほうがいいのかな?)


 そう思ったけど魔物の事を良く知らないので、この事は胸の奥にしまい込むのだった。

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