第3話 case2 人肉レストラン2 ※ゴア・カニバリズム表現あり
※この話にはゴア・カニバリズム表現があります。苦手な方は読まないでください。
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気づいたら、俺は椅子に座っていた。
目の前には、六人掛けくらいの大きさの丸いテーブルがある。
テーブルの真ん中には火がついたロウソクが何本も立っていて、それが唯一の光だ。
そして、テーブルの上には清潔そうな白いテーブルクロスが敷かれていて、ナイフやフォークなどが目の前に置かれている。
まるで、テレビで見たような高級フレンチのディナーを出す店のそれだった。
慌てて見渡すと、他の四人もそれぞれ椅子に座っていた。
一様に困惑した表情だ。
「お、おい・・・。どうなってんだ!」
「あたし達、さっきまで階段降りてたよね!?」
皆突然のことに驚いている。勿論俺もだ。
何がなんだかわからないが、異常なことに巻き込まれていることだけは確かだ。
俺達は、突然の恐怖のせいか、席を立つことができなかった。
ゴロゴロゴロゴロ・・・。
そこへ音が聞こえてくる。
車輪の音だ。台車を押す音に似ていた。
「・・・・・・!」
俺達は声も出せずに固まる。
音はどんどん大きくなっていく。
俺達に近づいているようだ。その音が突然、止まった。
そして、俺の向かいの席に座っているジンの後ろに、ワゴンカートを押した、人の姿が浮かび上がった。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
そこには、白い服と白い帽子・・・シェフの恰好をしたひどく肥満の中年男が笑顔で立っていた。
だが、その二重顎をした笑顔は、とても青白かった。
「「きゃああ!!!」」 「「「うわああ!!!」」」
突然の謎のシェフの登場に俺達は悲鳴を上げた。
ジンは椅子ごろ転げ落ちていた。
俺がいる場所から転んだジンの姿は見えないが、おそらく尻もちをついてシェフを見上げていると思う。
恐怖の表情で。
そして、闇の中から現れたのはシェフだけではなかったんだ。
髪型が七三分けの、いかにもウェイターって恰好の若い男が現れた。
こいつもシェフと同じく、青白い表情だ。
ウェイターはジンの椅子を立てなおすと、ジンの身体をひょいっと持ち上げて椅子に座らせた。
ヒッ、と小さな悲鳴を上げたジンは、まるで借りてきた猫のように背を丸めていた。
ジンを椅子に座らせたウェイターは、シェフの後ろに移動する。
そして、シェフは笑顔のまま再び口を開いた。
「本日は、当店にお越しいただき、誠にありがとうございます。本日は四種のコース料理をご用意いたしましたので、ゆっくりとご堪能ください」
そうシェフが言った後、後ろのウェイターがワゴンカートの上にあった皿を持ち上げ、それを丸テーブルの俺達の席の前に順番に置いていく。
白い皿の上には、ソースらしきものがかかった、小さな四角いものが三つ乗せられていた。
「オードブルでございます」
貼り付けた笑顔でそう口にするシェフ。
俺達が食べる様子を見届けるつもりなのか、ジンの後ろでニコニコとこちらを見守っている。
こんな得体の知れないもの、食べたくなんかない。
だけど・・・
俺、いや俺達は、たぶん、本能的にこいつに逆らったらヤバイって気づいてたんだ。
だから俺達は、シェフに従ってテーブルの上のフォークを手に取った。
そして、おそるおそる、フォークに刺した”オードブル”を口にしたんだ。
俺は、目をぎゅっとつぶって、口に入れたそれを噛んだ。
すると・・・
噛んだ瞬間、今までに食べた事がないほど美味い肉汁が出てきた。
柔らかい肉は、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。
掛かっていたソースも食べたことがない味だが、生まれてきて一番美味いと言っていいほどのものだ。
美味い肉汁と美味いソースが合わさった、最高の料理だった。
「美味い。この料理、すごく美味ぇよ」
思わず、恐怖を忘れて、そんなことを口にする俺。
「本当、こんなおいしい料理食べた事ないわ」
「すっごくおいしい!」
「もっと食いたいぜ!」
皆口々に美味いと言っていた。
先ほどまで椅子で背を丸めていたジンでさえ、その料理のあまりの美味さに声を出していた。
ケンタなんて、顔を上げて目を瞑って咀嚼していた。味を堪能しているようだ。
異様だよな。
心霊スポットにきて、いつの間にかテーブル席に座っていて、怪しいシェフが運んできた怪しい料理を食ってるんだぜ。
普通だったらそんな状況で、こんな怪しい料理を食って感動するなんてありえないはずだよな。
でも、たぶん俺達はあまりの異常な状況に、本能的に目を背けてたんだろう。
嫌なことから目を反らして、楽しいことに目を向けようって状態だ。
そんな状態の時に、とびっきり美味い料理を食ったら、どうなるのか?
それが今の俺達の状態な訳だ。
そして、そんな状態だったから、気を許しちゃったんだろうな。
全員が料理を完食した後に、ミカがこんなことをシェフに聞いちゃったんだよ。
「これはなんのお肉なんですか?」
ってな。
このレストランが噂話で、「なんの」レストランと呼ばれていたのかを忘れて。
「こちらは、人間の、頬、二の腕、ふくらはぎの肉を使った料理でございます」
ミカの質問に、シェフがそう答えた。
・・・
「「「「「・・・・・・」」」」」
俺達は凍り付いたよ。
そりゃそうだよな。
俺達がうまいうまいって食ってたのが、俺達と同じ人間の肉だったんだから。
そして、それを聞いた数秒後に、ミカとアイリの二人が目の前の皿に嘔吐した。
びちゃびちゃと、さっきまで食ってた”オードブル”が胃液と一緒に吐き出されてたよ。
男三人は、まだ固まったままだ。
すると、ジンの後ろにいたシェフが、いつの間にかミカとアイリの席の間に立っていた。
でも、笑顔だったシェフの表情は・・・・怒りのそれに変わっていた。
そして
「 ワタシのリョウリをムダにするな!!! 」
そういって、ミカとアイリの頭をぶん殴った。
ぶん殴られた二人は・・・
ミカは頭蓋骨が割れたんだろう、血と脳髄をまき散らして椅子から倒れた。
テーブルの上にそれらが散らばって、綺麗だった白いテーブルクロスが赤とピンクに汚れた。
アイリは真上から殴られたからだろう・・・胴体に頭がめり込んでいた。
血肉が飛び散って、彼女の隣の席にいる俺の顔にもかかった。
見た目は首なしの様な状態だが、彼女のツインテールが、めり込んだ頭から肩にかかっていた。
そんな姿になったのに、相変わらず椅子に座り続けている状態の”アイリだったもの”は、妙に滑稽に見えた。
呆然と、残った俺達男三人はそれを見ていた。
だが、数秒後に状況を認識した俺達は、震えながら必死に両手で口を押さえた。
口から漏れ出そうなモノを押さえるためだ。
俺達は涙を流しながら、逆流してきたものを胃の中に戻した。
「それでは、次の料理をお持ちします」
そしてシェフは、何事もなかったかのように、再び笑顔になってジンの後ろの位置へと戻った。
シェフの白い服は、ミカとアイリのもので赤く変色していたが。
そして、ワゴンカートの側で待機していたウェイターが、すぐに次の料理を俺達の前に置いた。
「スープでございます」
・・・もう見る前からそれが何かが分かった。
人間の血で作られたスープだ。
血の臭いがぷんぷんしている。
それを見ると、臓物らしきものの欠片がスープに浮いている。
スープに最初に手をつけたのはケンタだった。
しかし、ケンタはむせて血のスープを吐き出してしまった。
ミカとアイリの時と同様、怒りの表情で声を荒げたシェフによって殴り殺され、床に倒れた。
そのケンタの状態は、さっきのミカのそれと同じだった。
彼の脳髄が飛び散った結果・・・俺のスープの具が増えた。
そしてジンは、スープの臭いで、もうだめだったようだ。
スープに向かって勢いよく嘔吐していた。
さっき我慢したのが台無しだ。
そして、怒りのシェフのフルスイングを食らって、頭だけが吹っ飛んでいた。
吹っ飛んだ頭は、周りの闇の中に消えた。
頭を失った胴体は椅子に座り続けており、奇しくも俺の隣の席のアイリのようだった。
ジンがアイリと違うのは、彼が、首から赤い液体を噴き出す噴水に変わった点だ。
テーブルの向かいに座っている俺の頭にまで降りかかってくるそれによって、俺のスープは少し嵩が増えた。
とうとう俺だけになってしまった。
「このスープはうまい、このスープはうまい、コノスープハ・・・」
俺は必死に自分に言い聞かせていた。自己暗示をかけるためだ。
そして、俺は二人の男の血肉によって増えてしまったスープを、一気に飲み干した。
その味は・・・今までで飲んだスープの中で、一番美味く感じた。
・・・
次に出てきたメインディッシュである「人間の腹の肉のステーキ」も俺は食べ切った。
そのステーキも、俺が今まで食べてきた肉の中で、一番美味かった。
最初に食べたオードブルよりも、美味かった。
そして
「デザートを仕上げますので、少々お待ちください」
そう言って、シェフは闇に消えた。
・・・
ゴロゴロゴロゴロ・・・
どのくらいの時間が経ったのかはわからないが、シェフは再び戻ってきた。
「大変お待たせいたしました。本日の最後のコースメニュー、デザートでございます」
そしてシェフ自ら、ワゴンから”デザート”の皿を持ってきて、俺の前に置いた。
その皿の上には・・・
「先ほど取れました、”新鮮な人間”の脳でございます」
その皿の上には、”新鮮な人間”・・・ジンの生首が、頭頂部の頭蓋骨が取り除かれ、脳が露出された状態で置かれていた。
それを・・・俺は・・・
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