第2話 case2 人肉レストラン1
「うひょー!雰囲気あるなぁ」
「わたしこわーい!」
「俺がついてるから大丈夫だって!でも俺が言ったとおり、この心霊スポットすげーだろ!?」
「ジンよくこんな場所知ってたねー。あたし初めて知ったよ」
暗く、古びた建物の中で、他の四人が口々にそんな事を口にする。
その建物の中には、複数のテーブルや椅子が置いてあった。
だいぶ昔のものなので、朽ちているものがほとんどだったが。
俺は得体の知れない恐怖に身を震わせて口を開いた。
「な、なぁ・・・。ここやばいって。もう十分肝試しはできたから、そろそろ帰ろうぜ」
すると、俺達のグループのリーダーであるジンが、イラついた口調で返した。
「ああ!? ミツアキ、おめーチキン過ぎんだろ! こんなん全然ヨユーヨユー」
「ミツアキ、ださーい。もうちょっと度胸つけないと、女の子にモテないよ?」
「本当よ。ジンを見習いなさいよね」
ミカとアイリもジンに同調して俺を非難する。
二人はジンに惚れていて、お互いジンの両腕にしがみついている。
二人とも、胸で主張している自慢のふくらみを、ジンの腕に押し当てていた。
ケンタはそんなジンをうらやましそうに見ていた。
多数決で負けた俺は、これ以上抵抗しても分が悪いため、しぶしぶ引き下がった。
俺達は男三人、女二人の五人グループでよくつるんでいる大学生だ。
俺達は大学生という、若さと自由を兼ね備えた最高の期間を、毎日満喫していた。
今夜はリーダー格のジンの一声で、今はほとんど通る車がない山道の中腹にある、廃れたレストランに肝試しに行くことになった。
俺はそういうのが苦手なんだけど、グループ内で一番立場が弱い俺は、ジンの言うことに反対できなかった。
そして俺の運転する車で、この心霊スポット・・・通称「人肉レストラン」に来ている訳だ。
・・・なんでもこのレストラン、昔人間の肉を調理して、客に振舞っていたらしいぜ。
シェフの腕が良かったからか、食べた客はその人肉料理を美味そうに食っていたみたいだ。
こんな山奥にあるのに、毎日たくさんの客が食いに来てたんだってよ。
そんで、人肉が使ってたことがバレて、人肉レストランのオーナーシェフが自殺、そのままこのレストランは廃れちまったらしい。
・・・っていう噂話をジンが言ってたんだが、それはでまかせだ。
本当は、ここのレストランの人気に嫉妬した他の店の店主が「ここのレストランは人肉料理を客にだしている」って噂を流して、それを聞いたオーナーシェフが、噂を流したその店主を殺してしまった。っていうのが真相らしい。
オーナーシェフが捕まったことで、そのままこのレストランは廃れてしまったんだ。
で、その話が脚色されてできたのが、ジンが言ってた噂話。
俺のばあちゃんが子供の頃の話だったから、俺はばあちゃんにその話を聞いて、真相を知ってた訳。
でも、こんな山奥の廃れた場所なんて、例え幽霊が出なくても気味が悪いだろ。
だから俺は早く帰りたいんだよ。
そんな俺の願いとは逆に、他の四人は楽しそうに探索を続けている。
ジンとミカとアイリは、めずらしいものがないかどんどん奥の方へ進んでいる。
もちろん、ミカとアイリはジンの腕にしがみついたままだ。
「動きづらいから、お前らいい加減に離れろや」
「「 えー 」」
そんな3人の声が聞こえてくる。
ケンタは店内の壁に飾っている時計を見ていた。
アンティークに興味があるのかもしれない。
そして、少ししてから、店内の奥のほうを見ていたジンの大声が聞こえた。
「ケンタ!ミツアキ!いいもん見つけたからこっち来いよ!」
その声に、「どうせ碌なものじゃないだろう」と思いながら、俺はジンの元へ行った。
そこには、壁際に不自然に積まれた机や椅子があった。
まるでバリケードのようだ。
「見てみろよこれ!」
そう言って、机と椅子の隙間をスマホのライトで照らすジン。
ライトの先には壁はなく、暗闇が広がっていた。
「この奥に道があんだよ!ここが塞がれてるってことは、絶対奥になんかあるぜ」
「本当だ。おもしろそーだから、このバリケードどかそうぜ!」
ジンの言葉に同調するケンタ。
「そうこなくっちゃな!流石ケンタだぜ!」
俺はこの時、本当に嫌な予感がしたから口を開いたんだ。
「こ、これやばいって絶対!バリケードをしてるってことは、奥に絶対やばいもんあるって!もう帰ろうぜ!」
俺のその言葉を聞いたジンは、いきなり俺の胸倉を掴んできた。
間近に見たその表情は、マジでキレてる時のものだ。
「ミツアキ!てめーマジでいい加減にしろよ!ちったぁ空気読めってんだボケ!」
「はー、しらけるわー。ミツアキ、まじであり得ないでしょ」
「本当、ジンの言う通り空気読めないわ、コイツ」
「ミツアキ、ここで帰ったら肝試しに来た意味ねーだろ?皆で行けば大丈夫だって!」
キレたジンをなだめるように、女二人はジンと一緒になって俺を詰ってくる。
ケンタは俺に優しいが、この先へ進むというジンの決定には従うようだ。
「ご、ごめん・・・。俺も行くよ」
ハブられることを恐れた俺は、すぐに謝って、自分からバリケードをどかす作業を始めた。
恭順な行動を示せば、ジンの機嫌が直ることを知っていたからだ。
「最初からそうしろってんだ。・・・うっし、とっととどかすぞ!」
そして俺達、男三人は、バリケードを取り除いたんだ。・・・地獄への道を塞いでいたものを。
バリケードをどかしてわかったんだが、それは地下への階段の入り口だった。
そして、俺達五人はジンを先頭にして、その階段を降りていった・・・。
・・・俺は間違っていた。
何をかって?
それは、この人肉レストランの話のことだ。
俺がばあちゃんから聞いて真実だと思っていた話のほうが嘘で、ジンが語った噂話の方が、真実だったことだ。
俺がなんでそれを知ることができたのかというと・・・この地下への階段を降りた先で、忘れられない体験をしたからだ。
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