第29話 叶えたかった事
私は、今レティ様の部屋にいる。その理由は、リベル様の髪を切ってほしいという事だった。私が美容師だってことはいつの間にか広まっていたらしい。正直、私は嬉しかった。最近は魔法ばかりで自分の好きな美容師らしいことが出来なかったから。それにしても、王族の髪を私が切ってもいいのだろうか?失敗したら取り返しのつかないことになる。それがただ単に不安だった。きっと私の腕を知っているから頼んだのだろう。そう思うとなんだか嬉しくなった。
「どんな感じにしたいとか、要望はございますか?」
「いえ、特にないです。」
特にないって人多いな。あんまり髪にこだわりがないのかな?騎士様とかだと邪魔じゃなきゃいいって感じだったもんなぁ。
「レティ様は、何かありますか?」
「私も特にはないわね。アオイのおまかせは評判がいいと聞いてるし任せるわ」
レティ様にもおまかせと言われたから私好みにしちゃお。実は前から思ってたんだよね…髪長いなって。
「早めに終わらせますね~」
そこからは、頭の中で完成像を想像しながら手早く切った。数十分経ったぐらいに自分が満足するほどに切れた。
「終わりました。」
そう言って顔を覗くと美少年!隠れてたから見えなかったけどイケメン…なんかこの世界隠れイケメン多くない??と思いながらも鏡を見せる。
「凄い…ありがとうございます。」
「リベルかっこいいわ!アオイありがとう。」
感謝の言葉を言われるのはまだ慣れないから嬉しいような恥ずかしい気持ちになる。改めて思った、私は髪を切るのが好きなんだなって。
「アオイ、街でお店を開かない?」
唐突な事で私は固まった。今なんて?お店?私が?
「ア…アオ…アオイ!大丈夫かしら?」
「は、はい!大丈夫です。ここに来る前の夢が自分のお店を持つことだったんです。向こうにいる間は叶えられなかったけど…」
私は、自分の美容院を経営したかった。でも、それを叶う前にここに飛ばされた。きっともう叶う事はないだろうと覚悟しながら過ごしてきた。それを今レティ様、王妃様に提案されるとは思わなかった。本当はやりたいと思うでもまだ、この国の経営についてなどは調べていない。
「やりたいです、でも私はまだこの国に詳しくない。もう少し勉強をしてからでもいいですか?」
「本当に、貴方真面目ね。分かったわ。」
髪を切ってすぐ帰るはずがお礼と言ってお茶をごちそうしてくれた。最近魔法ばかりでお茶かいするのが減っていたから嬉しかった。おしゃべりしながらゆっくりするといつの間にか夕方になっていた。
「そろそろ、失礼しますね。今日はありがとうございました。」
「とても助かったわ。ありがとう。あなたのお店楽しみにしてるわ」
部屋に戻る帰り道、私はまだ実感が湧かなかった。自分のお店を持つという誘いが本当か私はあの時働いていた美容院でも雑用しかやらされなかったから。
「ツキノ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ?」
「あまり重く考えなくても大丈夫ですよ。王妃様がツキノ様にお店をやってほしいだけですから」
せっかくこんな機会を貰ったのだ。私は頑張る以外ないだろう。そのためには、勉強がまだ必要だ。そのために私は部屋に戻る前にある場所へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます