第4話 侍女と騎士が思う事 (レーナ視点)
私とクリスタは、聖女召喚の儀で召喚された方の侍女になることが決まった。今回の聖女召喚は異例の二人だった。今はその方には騎士様が1人ついているが、今日から私とクリスタあと二人の騎士様が追加配属が決まった。今ついている騎士様がこちらまで迎えに来てくれるらしい。
「護衛騎士様ってあのダウナー様よね」
クリスタが急に話しかけてきたが、私と同じ事を思っていると思う。
「剣の腕はいいのにあのぼさぼさ髪のせいで見えなくて腕が落ちているって噂になっているわよね」
「うんうん、だから本当に護衛できるのか心配なのよ…」
「でも一応騎士様なんだし大丈夫じゃない?」
侍女長に声を掛けられた、今話していたダウナー様がお見えになったも見たいだ。待たせないようにと早足で向かう途中。
「「「きゃぁぁぁ」」」
と同期の侍女の歓喜の悲鳴が聞こえてきた。なにかあったのだろうか私が今向かっている方向をみんな見ているようだった。大勢の人の間を通ると、なんと!さっき話していたダウナー様がイケメンになって目の前にいるのだ。みんなこのダウナー様を見て声を上げていたのねと勝手に納得した。クリスタと顔を見合わせてとりあえずダウナー様をここから離すために
「ダウナー様、お待たせしました。レーナとクリスタでございます。ここは騒がしいので早く移動しましょう」
「分かりました、ではみなさん失礼します。」
とダウナー様は綺麗なお辞儀をし、この場から離れた。
それにしても私が知っているダウナー様は髪がぼさぼさで顔が見えないくらいの長さの方だったんですが…一体何かあったのでしょうか?横目でクリスタを見るとどうやらクリスタも驚いているようで少し口が開いています。そんなことはさておき、ダウナー様から今日からお付きする方について聞かなければ…
「ダウナー様、私たちが今日から仕える方はどんな方でしょうか?」
と尋ねるとほかの騎士様とクリスタも気になっていたのか、それに賛同するように
「「私たちも聞きたいです!」」
と声をそろえて訪ねていた。そこまで気になるのですか?などと私も思うが、あまり詳しく説明をされてないので気になるのは当然だ。
「これから私たちがつく方はアオイ・ツキノ様だ、とても優しい方で私にも優しく接して下さった。」
ダウナー様から優しい方だと分かり私含め、四人でほっとしました。もし優しい人ではなかったら私は侍女長に配属を変えてほしいと今すぐ言いに行っていたでしょう…優しい人で一安心です。今日から私と一緒に配属になった騎士様が不思議そうに来た道の方向に振り向いた。
「グレン様、一つよろしいでしょうか?」
「どうした、クラウス」
「何故、こんなにツキノ様のお部屋がお城から遠いのでしょうか…」
確かに、クラウスさんの言う通りだ私たちはだいぶ廊下を歩いている気がする。
「王様は、聖女様だけ保護するつもりだったが聖女様がツキノ様を心配したので一応城で保護をしているがとても質素なお部屋だ。王様は聖女様以外はきっとどうでもいいという事だろう。」
ダウナー様がそうやって少し悲しそうな顔をしながら手を強く握りしめていた。
仮に聖女様が気にかけていなければ、ツキノ様は知らない世界で捨てられたも同然なことをされかけたという事だろう。そんなことを想像するだけでぞわっとする。クリスタが恐る恐る…
「ツキノ様はそんな状況でも何か不満などおっしゃらなかったのですか?」
「不満どころか弱音さえおっしゃらなかった。」
ダウナー様から聞こえた言葉は、衝撃だった。弱音さえ吐かないなんて…
私は、この時ツキノ様の身の安全等は絶対守りたいと心に決めた。そんないい人柄のツキノ様が不幸になるのはおかしいと思ったからだ、これからどうするかを考えこんでいたらツキノ様のお部屋に着いたようです。
「ここがツキノ様のお部屋だ、私が声を掛けるまで外で待っていてください。」
そう言われて、目の前のお部屋を見る。それはそれは何とも言えないほどの外見だった、なぜなら中に人が本当にいるかどうか怪しいようなものなのだから、外見だけでそれほどなのに室内どれだけ質素なのか不安で仕方がない。他の三人も外見だけで驚いているみたいだった。そんな私たちの反応を気にすることなくダウナー様は扉をノックする所だった
「ツキノ様、今少しよろしいでしょうか?」
ダウナー様が扉越しに声を掛けた、それからすぐ返事は返ってきた。
「はい、大丈夫ですよ。どうぞ」
口調だけで分かる丁寧さと優しさ、そんな人が何故こんな部屋で過ごさなければならないのか私もダウナー様と同じように悲しくなった。
「入ってきていいぞ」
その言葉で私の意識は戻った、これからツキノ様と顔合わせなのだ。少し緊張しながらもお部屋に入る、するとツキノ様はあまり丈夫とは言えなそうなベットの端に座っていた。そんなことよりまず、自分のことを話さなければ…
「この度、ツキノ様のお世話をさせていただきます。侍女のクリスタとレーナです。」
ツキノ様本人は少し驚いていたそして少し申し訳なさそうな顔をした。その理由は、騎士様の紹介が終わった後にツキノ様がつぶやいた言葉にあった。
「申し訳ないです。私のところになってしまって…」
ツキノ様は王様がツキノ様に対して良いと思っていないのを察しているからだろうか、侍女の私たちや騎士様の人たちの事を気遣ってくれているという事がたった一言で分かった。私は、そんなことないと思った。こんなに心優しく人を気遣えるツキノ様に仕えることができるのだからと心の中で強く思ったつもりが声に出ていたみたいだった。けれどそれはみんなも一緒で声をそろえて言っていた。
「「「「そんなことないありません!」」」」
少し沈黙があったが、エーベル様が発言をした。
「ここに来る途中までにグレンにツキノ様のお話を聞きました。お話を聞いただけでもそんな人だとは思いませんでした。ツキノ様と話した今、私はツキノ様を守る護衛につけて心からよかったと思っております。」
エーベル様の言う通りなので、私は強く頷いた。ここで私は、何があってもツキノ様の味方をする、守ると心の中で強く思ったのだった。
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