第3話 心配事

グレンさんが本を置いてくれた机に座る、座ったタイミングでレーナさんが頼んだものを用意してくれた。その紙と書くものを自分の前にまで持ってきて、選んでもらった本を開く。最初に開いた本はエルメルトについてという本題だった、この時やっとこの国の名前が分かった。重要な部分を紙に映していく、主には歴史とか?文化とか?常識として頭に入れなければならないものはとにかく書いた。一通り書いたかなと思い、ふと机を見るとクレアさんにお願いした魔法関連の本がいくつか置いてあった。書くのに集中してて気が付かなかったが、選んで持ってきてくれたようだった後でお礼言わなきゃ。


「ツキノ様、紅茶をお持ちしました。」

「レーナさんありがとうございます、でもこぼしたら本が濡れちゃうので…」

「あ、それは気にしなくて大丈夫ですよ。ここの本には汚れないように魔法が1冊1冊かかってますから」

「そうなんですね!それなら、紅茶頂きます。」


レーナさんが淹れてくれた紅茶に口を付ける、飲む瞬間香りがよくて驚いた。私じゃこんな上手く淹れれない流石侍女さんって感じだな。一口に運ぶと、口の中に上品な味が広がる。とても落ち着く温かいうちに飲みきり、今度は魔法の本に移る。本を開いただけでうわっと思ってしまった、さっきの本たちとは比べ物にならないほど文字がぎっしり書いてある。やりたくないなとか思うけど生きるためには知識をつけなきゃね。まぁ、私が使える使えないは別としてね…タイミング的に思っていたことを言ってみた。


「ちなみにグレンさんやレーナさんは魔法は使えるのですか?」

「私は、使えます。騎士になるには魔法と剣術で決まりますので」

「私も、グレン様ほどではないですが…一応使えます」

「エルメルトでは、魔法が使えるのが当たり前なんですか?」

「当たり前ではないですが多くの人には魔力があると思います」

「それじゃあ、私は分かりませんね…」


私には、魔法も剣術も体術も出来ない。エルメルトで生きていけるかは危うい、だから今こうやって頭に知識を入れようとしているが、正直本当に活用できるは分からない。きっと私は王様の支えがなくなったらもう無理だろう。そう、ぐるぐると悪い方法に考えてしまい少し気分を落とす。それに気付いたグレンさんが近づいてくる、顔に出てしまったかなと少し慌てる。


「今度、私の知り合いに魔導士がいるのですが、ツキノ様がよければその知り合いに魔力があるか見てもらいませんか?魔法は、魔力さえあれば魔法は使えます、練習は必要ですが…」


グレンさんはそう、提案してくれた。確かに調べる価値はある、けれどそれをしたらグレンさんたちは王様に何か言われないだろうか…私はたぶんそこで魔力があってもなくても何とも思わないと思う。だから返事に躊躇ためらう理由はない、けれどどうしてもさっきのことが引っかかってしまう…


「それをしても、グレンさんたちは…王様に何も言われないでしょうか…」


ずっとそこで悩んでしまうことを口に出した。グレンさんは目を見開いている…

けれど、構わず私は話を続ける。


「それで少しでも何か言われてしまう可能性があるのなら、私はそこまでして自分が魔法が使えるのか知りたいと思いません。」


何故か、分からないがレーナさんとグレンさんが顔を見合わせる。

するとグレンさんは、嬉しそうに微笑みながらこっちに視線を戻した。


「ツキノ様は私たちを心配してくれているのですね、そのことなら大丈夫です。」


「私たちの心配をしてくださるなんて、あ~なんでこんなに優しいんでしょうか」となんかぼそっとレーナさんから聞こえた気がするが聞こえなかったふりをした。


「そうですよ!ツキノ様はそんなこと気にしなくても大丈夫ですよ。私たちは何も言われないですから」


そうやって、レーナさんは私に言ってくれたがやっぱり心配だった。

そんなくもり顔がバレていたのか。


「ツキノ様は安心して調べてもらいましょう!」


と念を強く押されてつい、頷いてしまった。だいぶ、長く話してしまって本を写す手が止まってしまっていた。早く終わらせなきゃと少し焦り気味で写す手を動かし始めた。そのあと、一心不乱と言わんばかりに書き進めた結果思ったよりも早く書き終わることができた。使った本を片付けようと椅子から立ち上がるが、持ってきたのは私ではないことに気づいてしまったと思った。この図書館の本の位置全く知らないんだったと後悔した。どうしようかと頭を悩ませていると


「あ、あの写し終わりましたか…?」


とクレアさんが話しかけてくれた。


「はい、おかげさまで終わりました。選んでくださった本どれもわかりやすかったです。魔法関連の本も机に置いてくださってありがとうございました。」

「いえいえ、お役に立てたのならよかったです…」


と言って私が使った本を積み上げて持っていこうとしていた。使い終わった後もクレアさんに任せるのはどうかと思い、私は声を掛けた。


「クレアさん、私も持っていきます。返すのもお願いするのは申し訳ないので…」


と言いクレアさんが持っている本の半分を自分で持った。


「あ、ありがとうございます。助かります。」


そう、2人で本を抱えて図書館の中をあちこちとまわり本を元の場所へと戻した。片付けも終わったことだし書いた紙を持って戻ろうと、一旦机に戻った後入り口まで戻る。するとウィルさんとクレアさんがいたのでお礼をしようと声を掛けた。


「ウィルさんとクレアさん今日は色々とありがとうございました。またお世話になると思いますがよろしくお願いします。」

「いえいえ、またいつでもいらしてください。な、クレア」


こくっとクレアさんが頷いた。めちゃくちゃ可愛い~と心の中で悶えながら

最後の挨拶をして図書館を後にした…

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