第12話 二人

女はバッグを開けて何かを一生懸命探していた。

俺は去ろうと思っていたが生憎帰る道に女が居るのだ。仕方なく俺は声を掛けた。


「どうしたの?」


女はギョッとした顔でこちらを向いた。声を掛けられた上に、さっきまで会っていた俺だったからだろう。女が何かを言う。聞こえず俺が尋ね直すと、


「スマホがない」


と言った。一体何処にあるのかを尋ねたところ、どうやら店のトイレにおいてきてしまったらしい。女は俺についてきて欲しいと言った。


「なぜ?場所は分かっているのに。君一人で行けばいいじゃないか」


すると女はこちらを睨み、


「あんた、乙女心なんにも分かってないのね」


と言われ無理やり連れて行かれることになった。歩きながら俺は尋ねる。


「なんだか君は今日の合コンをあまり楽しんでなかったように見えるな」

「あなたこそ。全然楽しそうに見えなかったけど」

「しょうがないよ。俺はただ補欠要員で連れてこられただけだし」

「あら。奇遇ね。私も今日は補欠要員だったの。別に合コンなんて興味ないのに・・・でも少し興味が湧いたから行ってみたけど、やっぱり行かなければよかった。時間を無駄に使っちゃった」

「大体の学生なんてそうやって時間を潰すんだ」


女はフフっと笑い


「あなた少し変わってるわね」


と言い、俺は


「そうか?」


と不思議に思った。店の前に着き、女に少し待っててと言われ待つことにした。木枯らしが吹き、俺は体を身震いさせる。兄が事件にあったのも冬だった。家で夕食を作っていた俺を思い出す。ビーフシチューを作っていた。人参を細かく刻んで。俺は思考回路から追い出す。今更考えても無駄だ。次に浮かんできたのは女の顔だった。無愛想な喋り方だが悪い気はしなかった。突然俺の頭に一つの考えが浮かんだ。

ドアが開き、女が出てきた。


「トイレになくてさ焦ったけど誰かが店員に渡してくれたみたい。助かった」


女は安心した顔をする。


「なあ。今からどっか寄らない?ほら俺たちさ、一次会だけで物足りないじゃん?だからさもし良ければの話だけども」


俺の突然の提案に女は迷っている様子だった。俺は時間の無駄だと言われるのではないかと不安だったが、結局彼女は了承した。


「よし!じゃあ決まり!何処に行く?君、オススメの場所とかある?」

「うーん。いや特に。あなたが決めてよ」

「分かった」


店を探す。スマホで調べている時俺はふと思った。



俺はこの女に惹かれているのではー


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