第10話 緊張
大学生活から1ヶ月が過ぎ俺は今の生活に満足していた。
アルバイトのある日は家でオンライン講義を受けている。アルバイトは勿論2年前から働いている河野の店だ。かといってアルバイトは日曜日しか休みがないので大学に入ったタイミングで土曜日を抜かして土曜日と日曜日は大学で講義を受けた。
経済学部に行くだなんて思ってもいなかった為、講義の内容についていくのは大変だが辛いと思ったことはなかった。友達はいない。すでに数人程度でのグループができているが、俺はいつも一人である。はっきり言って楽だった。
講義が終わり席を立って皆が部屋から出ていくのを眺めていると
「矢神君だよね」
突然自分の名前を呼ばれ相手の顔を見る。
いつも同じ講義を受けていることは知っていたが名前は一切知らなかった。
俺は尋ねる
「えっとーごめん。俺、君の名前知らないんだけど」
「僕の名前は岡田っていうんだ。少しお願いごとがあるんだけど」
岡田は俺を上目づかいで見る。
「何?内容にもよるけど。あと、矢神君じゃなくて矢神で良いよ」
「あ、そう。矢神、合コンに参加してくれないか」
俺は驚いて岡田の顔を見る。
「は!?何で俺が合コンに行かなくちゃならないんだよ!」
「いやーそれがさ今日合コンにくる予定の奴がさドタキャンしちゃって。代わりの人を見つけようと思ってたらちょうど君が居たわけさ」
俺は合コンなどしたこと無い。俺には一生無縁な出来事だと思っていた。
「ムリムリ。他の奴誘ってよ」
俺が手で岡田を払う仕草をすると
「お願いだ!どうしてもそんなに時間はかからない!一次会でもう帰っていいから」
岡田は俺に向かって両手を合わせて懇願してくる。
少し可愛そうになってきた。何より一次会で帰れるのならすぐに済ませられる。
「分かった。じゃあ参加する。ただ俺は一次会で帰るぞ」
岡田の顔はパッと明るくなり
「ありがとう矢神!それじゃあ、場所と日時を伝えておくよ」
そう言って俺と岡田はLINEを交換した。
「それじゃあ、また」
岡田は手を振りながら去っていった。
悪いやつでは無いのかなと思った。
合コンでは一体どんな服装をすれば良いのか。
俺は補欠だからあまり喋らなくても岡田がリードしてくれると思う。
初めての体験に緊張してきた。岡田のLINEを待つことにしよう。
この時俺はまだ知らなかった。
事件の歯車が大きく動き出すことをー
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